シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

渋谷教育学園渋谷中学校

2017年08月掲載

渋谷教育学園渋谷中学校【理科】

2017年 渋谷教育学園渋谷中学校入試問題より

ウミガメは、産卵の時点では、まだオス・メスが決まっていません。
ウミガメのオス・メスは、産卵巣の中の温度によって決まります。

グラフ

(問1)上の図は、産卵巣の中の温度と、その産卵巣から出てきた子ガメのうちメスだった子ガメの割合を示したものです。
図を基に考えると、ウミガメの性は何℃より高いと、メスになると考えられますか。その温度を答えなさい。

(問2)沖縄の砂浜は、サンゴの死体が砕(くだ)けてできたサンゴ砂でできています。そのため、孵化した子ガメの性は、沖縄の砂浜ではオスの方が多く、本州の砂浜ではメスの方が多くなっています。サンゴ砂でできた沖縄の砂浜ではオスの子ガメが多く生まれるのはなぜですか。その理由を答えなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この渋谷教育学園渋谷中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(問1)29.3℃

(問2)サンゴ砂は白いので日光を反射しやすく、砂浜の温度が高くなりにくいから。

解説

(問1)問題の図に目を向けると、産卵巣の中の温度が29.3℃より高くなると、メスが生まれる確率が明らかに高くなることが読み取れます。したがって、産卵巣の中の温度が29.3℃より高くなると、ウミガメはメスになると考えられます。

(問2)問1で読み取ったことをもとにすると、オスが産まれることが多い沖縄の砂浜は温度が低く、メスが産まれることが多い本州の砂浜は温度が高いと考えられます。
ふつう、砂浜は日光によって直接あたためられますが、沖縄の砂浜はサンゴ砂でできていることから砂の色が白く、太陽の光を反射しやすいので、熱を吸収しにくく、砂浜の温度が上がりにくいと考えられます。

日能研がこの問題を選んだ理由

問題に示された図から、ウミガメの性別がどのような条件できまるのかを読み取り、沖縄の砂浜でオスが産まれることが多い理由を、砂浜の状況と結びつけて推測する問題です。

問題に示された図や文章から読み取った情報と、色の違いによるあたたまり方の違いに関する知識を結び付けて、沖縄の砂浜でオスが産まれることが多いという現象が起こる原因を推測していきます。

この問題を通して、子どもたちは未知の課題に向きあうとき、読み取った情報と既知のことがらを結び付けることで課題を解決することを体験します。今後の日常生活の中で子どもたちが出あう未知のことがらについても、読み取った情報と既知のことがらを結び付けることで新たなつながりを見出すことができるでしょう。また、子どもたちが環境保全や生態系に興味や関心を持つきっかけにもなるでしょう。

このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 14 海を豊かさを守ろう

示された情報をもとにして、ウミガメの生態を分析・推測していく問題です。自然界の中には解明されていない不思議がまだまだたくさんあります。目標14「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する」ためには、その“不思議”に対して、自分が持っている知識だけに頼るのではなく、自ら疑問を持ち未知に向かって調べ、分析するチカラを育てていくことが不可欠なのです。

私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから

日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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