シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

栄東中学校

2017年03月掲載

栄東中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2. 書くことに抵抗のない受験生が増えた

インタビュー2/3

受験生に伝わる表現を探して国語科教員に相談

佐久間先生 どのような聞き方をすれば受験生が取り組みやすいか、問題文は何度も検討を重ね、修正しました。
初めは、「第6次産業化としてどんな取り組みをしたいか」という聞き方をしていましたが、どの場面で関わるか、はっきり示すと考えやすいのではないかと思い、「あなたが第1次産業に仕事として携わるとしたら」という文章を追加しました。
また、「携わる」という表現は小学生には難しいのではないかという意見がありました。一般には「従事する」と言いますが、これでは難しいので、平易になりすぎず、こちらの意図が分かりやすく伝わる表現を探して、国語科の教員にも相談しました。これに限らず、文章表現で迷ったときは国語科の教員にアドバイスをもらっています。

社会科/佐久間絵理子先生

社会科/佐久間絵理子先生

身につけてきたことが発揮できる出題を心がける

A日程の歴史の論述問題(古代の律令において山陽道が最重要の地方・道とされていた理由)は、地理のこの問題と比べるとやや知識重視のように思いました。

佐久間先生 この問題の正答率は5割近くあり、よく書けていました。このように、がんばって学習してきた受験生が得点できる出題も心がけています。
この問題は「大宰府」がキーワードなのですが、この言葉を知っているか、ということよりも、この役所の役割を理解できているかを問う問題でした。
歴史の問題ではよく並べ替えを出していますが、これは出来事の前後関係を理解してもらいたいからです。論述問題も、出来事の流れをきちんと追えているかどうかを見たいと思っています。
入試問題は、なるべく小学校で学習する範囲からはずれすぎないように作問しています。地理や歴史のうち、世界のことに関わるところや、公民の経済分野についてはなるべく出題しないようにしています。これまで学習してきたことが発揮できる出題を心がけています。

思いを伝える形式にしてから書く受験生が増えた

佐久間先生 東大クラス入試の論述問題は、以前より出題をしていますが、数年前までは地理も歴史も無答の答案がよく見られました。最近は無答の答案はほとんどありません。

大瀧先生 「難しそうだからダメ」と全く書かない解答はずいぶん減ったと思います。今回の地理の問題のように、その場で考えて書く形式にしてから、書いてくれる受験生がぐっと増えた印象です。

佐久間先生 本校の国語の入試問題の形式が変わった影響も大きいと思います。本校の入試が「書く」ことを重視していて、入学するとアクティブ・ラーニングで自分の考えを表現すると理解してくれているのかもしれません。入学した生徒を見ると書くことへの抵抗感があまりないように感じます。

栄東中学校/掲示物

栄東中学校/掲示物

「書こう」とする意欲を大切にしたい

佐久間先生 小学6年生の段階では、文章力そのものよりも、「書こう」とする意欲を大切にしたいと思っています。要点を押さえて、「何を伝えたいのか」を考えながら表現してほしいと思います。

大瀧先生 論述のルールなど、伝わる文章の書き方は入学してからしっかり学んでいきます。中学受験では、見た目で敬遠することなく、前向きに取りくんでもらえればと思います。

作問者の思いがリード文にも

佐久間先生 入試問題のリード文によく会話形式を取り入れています。小学5年生、4年生のお子さんが過去問として取り組むことも少し意識して作成しています。「栄東の社会科の先生はこんなことが好きです」ということが伝わるといいなと思います。
本校では知っているかどうかだけの時事問題は出題しないようにしていますが、入試問題のリード文に、最近おこったニュースなどを取りあげることもあります。これは世の中の動きに関心を持ってもらいたいという、作問者からのメッセージでもあります。

大瀧先生 ニュースを見たときに、「この問題の原因は何か」「どうすれば解決できるか」など、自分だったらどうするか、という視点で、考えてみるといいでしょう。

栄東中学校/食堂

栄東中学校/食堂

インタビュー2/3

栄東中学校
栄東中学校平成4年に中学校が開校し、中高一貫教育が開始された。時代の変化に先駆けて、アクティブ・ラーニングを取り入れ、「①授業、②校外学習、③キャリア、④部活動」という4つを軸に分けて展開している。授業での工夫という枠を超えて、生徒の学びの場すべてをアクティブ・ラーニング実践の場ととらえ、学校そのものがアクティブ・ラーニングの場である。特定の教員が実践するのではなく、全教員がアクティブ・ラーニングの実践者であることが最大の特徴である。
大学入試結果は教育の成果であり、そこにいたるプロセスと大学卒業後、社会で生きる力の育成に関する学校としての方針をアクティブ・ラーニングという理論に基づいて計画して実践している。授業は常に見学可能であり、教員同士がいつでも授業を見せ合う環境となっている。中1の入学時点では人の前でプレゼンテーションすることが苦手な生徒でも、中3までの間に至極当然のこととなっていくということである。
建学の精神「人間是宝」の理念は、『人間はだれもがすばらしい資質を持った、宝の原石であると考え、その原石を磨き上げ、文字通り本当の「宝」として育てること』であり、そのために、校訓「今日学べ」(今日のことは今日やり、勉強も仕事も明日に残さない)を掲げている。
広大な敷地には、勉学に専念するための充実した施設があり、先生方も遅くまで生徒たちの学びにつき合うことも多いという。勉強だけではなく、多くのクラブ活動も盛んであり、それは学校での生活すべてがアクティブ・ラーニングであるということに通じている。