出題校にインタビュー!
栄東中学校
2017年03月掲載
栄東中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3. アクティブ・ラーニングで主体性を育む
インタビュー3/3
その日の授業の流れでやってみることも
貴校のアクティブ・ラーニングについて教えて下さい。
佐久間先生 本校では様々な場面でアクティブ・ラーニングを取り入れています。
その日の授業の流れで「やってみようか」ということもよくあります。昨年、イギリスのEU離脱が話題になりましたが、教科書にはEU加盟のメリットしか載っていません。中1の授業で「デメリットはないのですか?」と聞かれたので、「じゃあ、みんなで考えよう」と早速グループで話し合ってもらいました。
教科横断型のアクティブ・ラーニングもあります。中3の授業では、「日米修好通商条約の交渉」という設定で、生徒はグループごとに幕府の大老や藩主、商人、農民などいろいろな立場に立ち、それぞれの思惑や主張を、ハリス役のネイティブ教員と英語でやり取りしました。
また「明治初期の日本が、西洋諸国に負けない強い国をつくる」という設定で、グループを“政党”に見立ててマニフェストを発表しました。方針を決めたら役割分担をして、「税金」「教育」「軍事」のマニフェストのメリット・デメリットを説明します。質疑応答を経て、どのグループが最も説得力があったか、納得できたかを投票で評価しました。
栄東中学校/校舎
話し合いの第一歩は、相手の意見を受けとめること
佐久間先生 アクティブ・ラーニングはいきなりできるようにはなりません。「どのように話し合いをするか」というところから始めます。自分と違う意見、いろいろな意見があっていいことを理解し、相手の話を聞く姿勢を身につけることに特に時間をかけます。
クラスにもよりますが、「発言者の方を3秒向く」などのルールを作って取り組んだり、話すときの視線の向け方を練習することもあります。
大瀧先生 はじめは発表するだけで精いっぱいですので、教員が積極的に関わって誘導します。「このフォーマットを使って」など、発表するまでのプロセスも細かく提示します。
佐久間先生 アクティブ・ラーニングを始めたばかりの中1に「何でも意見を言っていいよ」というと、「それが一番困ります」と言われます。それも1年くらいすると、何を言ってもいいことが楽しくなるようです。
私は中3の担任ですが、発表好きの生徒たちは持ち時間をオーバーしてしまうほど、熱心に発表してくれています。次の段階として「時間内に収める」ことを意識してくれるといいなと思います。
栄東中学校/校門
アクティブ・ラーニングで自分の長所を生かす
大瀧先生 発表することだけが目的ではありません。発表に至るには、パワーポイントを作ったり、資料を集める地道な作業も大切です。グループ内でリーダーシップを発揮する生徒もいれば、フォロワーシップで仲間を支える生徒もいる。自分の長所を生かせるのがグループワーク、アクティブ・ラーニングのいいところだと思います。すべての生徒が主体的に考え、行動できる環境づくりが教員の役割だと思っています。
栄東中学校/図書館
もめ事やアクシデントが生徒を成長させる
佐久間先生 中2の京都の校外学習の班行動はあえて男女混合にしています。研究内容や現地での移動プランはすべて生徒が立案しますが、意見が衝突したり、当日アクシデントがあったり、同性だけよりもぶつかることが多いようですが、それでいいと思っています。妥協したり、説得したり、折り合いをつけるなど、解決する過程で学ぶことも多いからです。
アクティブ・ラーニングの成果は授業以外でも見られます。私のクラスの生徒(中3)を見ると、掃除当番などの役割分担やクラス運営は、私が何も言わなくても自分たちで決めています。部活動もそうです。私が顧問をつとめている吹奏楽部では、練習予定は1カ月先くらいまで生徒が決めています。ふだんの生活の中でも自分で考え、行動するようになっていると思います。
社会科は多様な視点を獲得するための“道具”
6年間で生徒にどんな力を身につけさせたいですか。
大瀧先生 大学合格はゴールであり、スタートです。大学に進学したとき、社会人になったときのことも意識しています。
歴史であれば、正当性、妥当性を検討する史料批判のように、リテラシーやクリティカル・シンキングなど情報を鵜呑みにしないで疑問を持つ姿勢も大切にしたいと思っています。授業では「教科書にはこう書いてあるけれど、君はどう考える?」ということをできるだけ生徒に投げかけるようにしています。
佐久間先生 社会科の授業を通じて、多様なものの見方を身につけてもらいたい、多様性を受容できるようであってほしいと思っています。
授業では、もし自分がそこにいたら、当事者なら何を思うかを生徒に投げかけています。社会科の学びを傍観者の視点で終わらせてほしくないというのが、私たちの願いです。社会科は、自分がその「時代」や「場所」に飛び込むことで、いろいろな立場の人の気持ちや視点を手に入れられる教科ではないでしょうか。言いかえれば多様な視点を獲得する“道具”となるのが社会科ではないかと思います。
栄東中学校/図書館
インタビュー3/3