シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

栄東中学校

2017年03月掲載

栄東中学校【社会】

2017年 栄東中学校入試問題より

近年、「第6次産業」や「第6次産業化」という取り組みが注目されています。これは、「第1次産業」(農林水産業)に携(たずさ)わる人たちが、「第2次産業」(製品加工)から「第3次産業」(流通・販売)までおこなうというもので、第1次産業全体の活性化をはかる目的があります。

(問)もし、あなたが第1次産業に仕事として携わるとしたら、「第6次産業化」に向けてどのような取り組みをしたいですか。生産物などを1つ例にあげ、取り組みたい内容を具体的に説明しなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この栄東中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

【例】糖度の高いいちごを栽培し、自家製ジャムを製造し、インターネットを利用して全国に販売する。

解説

この問題に取り組むときには、大きく3つのステップを踏みます。まず、農業・林業・水産業のうち、どの第1次産業に携わっていると仮定するのかを決めます。次に、その第1次産業では何を生産しているのかを考えます。そのうえで、その生産物を活用して、「製品加工」に代表される第2次産業と、「流通・販売」をはじめとする第3次産業をおこなうために、どのような取り組みをしたいかを説明します。

おおまかな思考の流れはこのようになりますが、第1次産業や生産物について細かく想定するほど、さまざまな6次産業化の取り組みを考えることができます。たとえば、どんな自然環境で農業をしているのか、どのくらいの規模の森林で働いているのか、魚介類は海でとっているのか、養殖しているのか…など、細かな設定を考えてみましょう。どのような6次産業化の取り組みが思い浮かぶでしょうか。

日能研がこの問題を選んだ理由

日本の農林水産業では、高齢化や後継者不足といった問題が指摘されてきました。また、それによる農山漁村の活力の低下も、長年の課題となっています。こうした問題を解決する手段のひとつとして、近年、農林水産業の6次産業化が推進されています。栄東中学校のこの問題では、こうした世の中の動きを取り上げています。

問題文には、「第6次産業」や「第6次産業化」という用語の意味が、あらかじめ説明されています。受験生はそれを読んだうえで、生産物などを自ら設定し、それを活用した6次産業化の取り組みを考えることになります。このような出題形式からは、世の中の動きを遠巻きに眺めるのではなく、自分だったらどうするかという当事者意識を持って考えることで、主体的に社会とつながっていく姿勢を大切にしてほしいという学校のメッセージが感じられます。

また、問題文の中で「第1次産業の活性化をはかる」という、6次産業化の目的に触れていることも印象的です。これによって受験生は、6次産業化だけを切り取って見ることなく、第1次産業の活性化を念頭に置いて、6次産業化という手段を考えることができます。このように目的をふまえて、その実現に向けた手段を考える力は、中学校に入ってからも必要だといえるでしょう。

以上の理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。