出題校にインタビュー!
横浜共立学園中学校
2017年01月掲載
横浜共立学園中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.中学では基礎をしっかり楽しく身につけ、高校では思考を深める
インタビュー2/3
国語力はすべての教科を支えている
国語科が6年間の教育の中で大事にしていることを教えてください。
深川先生 国語力はすべての教科の根底にあると自負しています。英語にしても、英語で思考する人もいるかもしれませんが、基本的には日本語で思考しますので、国語力が必要になると思います。
鎌田先生 英語の先生も「国語がきちんとできないと、英語もきちんと表現できない」ということは言ってくださるようです。私たちも同じようなことを言いますが、中学生は文法を習っている段階なので、実感するのは高校生になってからのようです。
深川先生 同じような意味で、漢字に力を入れています。社会の論述などにしても漢字を知らなければ書けないので、中1から高3まで、漢字テストを毎週行っています。私は今、高2を担当していますが、読み書きともにかなりできます。
国語科/深川幸子先生
6年間にわたり毎週漢字テストを実施
深川先生 語源に注目したもの、用例に注目したものなど、毎年テキストを変えて1冊の本を1年間かけて習得することを目標に学習しています。私が中1でよく使うのは書き方練習帳のようなものです。きれいに丁寧に文字を書く訓練になります。中2では用例などが書いてあるテキストを使うなど、学年に応じていろいろな角度からテキストを選んで漢字の奥深さを知ってもらいたいと思っています。高校になると、評論用語など読解における重要な言葉を勉強します。6年間にわたり漢字を多角的に学習することで、表記の力だけでなく、言葉そのものを蓄積できますから、大学入試対策にもなりますし、語源を知ることは漢文の学習においても基礎力や読解力につながります。
中学入試でも漢字に対する考え方は反映されていますか。
深川先生 そうですね。漢字は毎年必ず出題していますし、言葉の基礎力を問うという点では、慣用句などの言葉の意味も出題しています。
古典は独自教材で暗唱から入る
独自教材はありますか。
深川先生 中2の書写は独自教材を使っています。校歌と創立精神を書かせるもので、夏休みの宿題として出すのですが、生徒は喜んで取り組みます。『古典入門』は35年前から続いているものです。
鎌田先生 これは暗唱教材です。中1から中2にかけて覚えてもらいます。
深川先生 授業の最初に暗唱し、口述テストもします。中間、期末の定期テストの範囲にも入れてます。
鎌田先生 文法や意味などがわからなくても、とりあえず覚えることでリズムを刻みつけるというか。古文の授業に入った時に、「これはこういう意味なのよ」と言うと「ああ、なるほど」と入っていきやすいので、昔の先生方が考えて作ってくださったものを引き継いでいます。
深川先生 教科書に掲載されなくなったものなど、親しむ機会がなくなった作品は外して、多少の改訂を行いながら使っています。
深川先生 同窓会では、方丈記の冒頭などを今でも皆で暗誦できます。覚えることで、日本語の奥深さ、素晴らしさ、おもしろさなど、さまざまな魅力に理屈でなく触れることができるので、一生の宝になると思います。
鎌田先生 中学生は苦もなく覚えてしまいます。
横浜共立学園中学校/教材
最適な言葉を選ぶ力をつけてあげたい
授業で大事にしていることを教えてください。
深川先生 言葉は、実態に即したものを使うことが大事だと思っています。作文などを書く時に、たくさんの言葉の中から自分の思いに近いものを選び、表現することにより、言葉を選ぶ力は磨かれていきます。それは生徒の生き方にも影響を与えると思います。
鎌田先生 今時の子は「キモ」「ウザ」「カワイイ」などの言葉で済ませようとしますが、私たちは迎合しません。「こういう時にはこういう言い方があるよ」と、授業の時だけでなく、学校生活の中で折あるごとに言うようにしています。毎日言わないと身につかないからです。「便利だから、なんでもいいということはないのよ」ということを、伝え続けていくしかないと思っています。
授業では生徒に考えさせたい
深川先生 また、生徒自身に考えさせたいので、学年や教材にもよりますがディスカッションをさせる、いわゆるアクティブラーニングのようなこともしています。国語は語学の側面もありますが、言葉を使った思考力の訓練という側面も大きいので、考えさせる場面も数多く作っています。生徒に疑問点を出させて、それに対する答えをみんなで考え、出していったり、グループで話し合い調べさせて発表させたりといったことも行っています。ことさらアクティブラーニングを意識しなくても、これまで私たちがやってきたことなのですが、最近はその方法論がいろいろと本になって出版されていますので、アンテナを張って、自分の授業の中に取り入れることもしております。
生徒主体の活動の機会を増やせば、授業がどう展開するかわかりませんから、試行錯誤です。生徒から出てきたことを受け止めるには、教師が教材をしっかり読み込んでいなければ対応できません。アクティブラーニングのような授業は教師の力量が問われると思います。ただ、こちらから疑問を投げかけるのと、生徒の中から出てきた疑問を追いかけるのとでは目の輝きが違いますから、なるべくそういう機会を作っていきたいと思っています。
横浜共立学園中学校/校舎内
『こゝろ』では全編をつかんで考えさせる
例えばどのようなテーマで行っていますか。
深川先生 私は今、高2の授業で夏目漱石の『こゝろ』をやっているのですが、今年は『こゝろ』のあらすじを各グループに何章か担当させて、リレー方式で『こゝろ』全編のあらすじを仕上げるということをしました。『こゝろ』は難しい教材です。教科書にはKの死までしか掲載されておらず、全体像をとらえられないため、分担しながらも、みんなで全体像をつかんで問いを追いかけていくという形で進めています。授業の最後には、最初に出した問いをグループワークで答えさせようと思っているので楽しみです。若い人たちの感性はみずみずしくて、私たちの気づかないところに目を開かせてもらうことがよくあります。ただ、生徒の考えが行きつくところはある程度限られていますので、私はこう読むという教師の読みを最後に言っても良いと思っています。生徒の考えを尊重しつつも、教師はその先の考えを提示することで、初めて生徒は「そうか」と納得し、改めてその教材の持つ世界の広がりに目が開かれるからです。
インタビュー2/3