中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

横浜共立学園中学校

2017年01月掲載

横浜共立学園中学校【国語】

2016年 横浜共立学園中学校入試問題より

次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。(設問の都合上、本文の一部を変えてあります)

(略)

きみの宝ものって何? 子どもなら誰だって宝ものをもっていると思う。ぼくはこんな歳になってもまだちゃんと宝ものをもっている。いや、ぼくが今これを書いているこの部屋は宝ものだらけだといってもいい。そのうちの多くは、ほかの人にとってはつまらないガラクタみたいなものかもしれないんだが。

(略)

それらのモノたちがぼくにとってこんなにも大切でかけがえのないものに思われるのはなぜか。どうやら、それらのモノ自体に価値があるというよりも、そこにまとわりついている思い出や、そのモノの中に閉じこめられ、何かのついでにそこからにじみ出るすてきな時間こそがその理由らしい。

きみたちはあるものの「価値」をどうやってはかる? 世間では、お金のモノサシ、つまり値段で価値を考えるのがふつうだ。じゃあその値段はどう決まるかといえば、経済学では、それは「需要と供給の関係」だという。つまりある商品を求める側と、それを提供する側との関係で決まる、と。ある商品がたくさん求められているのに、それがつくられ、お店に並べられる量が少なすぎて求めに応じられないときには、その値段は上がるだろう。逆に、大量にあるモノに対して、それを求める人が少なければ、その値段は下がるだろう。下げなければ売れないから。売れなければそれをつくったり店に並べたりしたことがみんなムダになり、それまでにかかったお金も時間もまるごと損してしまう、というわけだ。

(略)

どうやら、ぼくたちの発想を大きく転換することが求められているようだ。もっていないものを追い求めることから、もっているものを楽しむことへ。ないものねだりから、あるもの探しへ。遠い場所から身のまわりへ。希少なものばかりに群がる自分から、一見どこにでもざらにあるものに熱い眼ざしを向ける自分へ。お金ではかられる価値のすぐ横にお金でははかれない価値をおいてみる。自分のものにする喜びのそばに、ほかの人たちと分け合ううれしさを、おいてみる。

(略)

(辻信一『「ゆっくり」でいいんだよ』〈筑摩書房〉による)

(問)「きみの宝ものって~宝ものをもっている」とありますが、

  • ①筆者の言う「宝もの」とはどのようなものですか。文中の言葉を使って四十字以内で説明しなさい。
  • ②あなたの「宝もの」を一つあげ、本文をふまえて説明しなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この横浜共立学園中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、出題意図についてのインタビューを見てみましょう。

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例
  • ①金銭的な価値よりも、その中に貴重な思い出が閉じこめられているようなもの。
  • ②(例)いつもペンケースに入れている五円玉。小学三年生のときに、友だちとけんかをして泣いていたら、おばあちゃんが私の手に五円玉をそっと乗せて、「良いご縁にめぐまれるお守りよ」と言って、なぐさめてくれたから。
解説
  • ①筆者の考えている「宝もの」がどのようなものであるのかという点について、二つ目の段落に書かれています。ここには、「(宝ものだと考える)モノ自体に価値があるというよりも、そこにまとわりついている思い出や、そのモノの中に閉じこめられ、何かのついでにそこからにじみ出るすてきな時間こそがその理由らしい」と書かれています。つまり、「もの」そのものではなく、自分自身の経験と重なり合う部分に「宝もの」となる理由が生まれると筆者は考えているのです。この部分を手がかりにして答えをまとめていきましょう。
  • ②①でとらえたように、「お金のモノサシ」ではない、自分自身の経験に基づく「宝もの」が何であるのかを思いうかべて、答えをまとめていきましょう。経験は人によってさまざまですから、答えとして出てくるものもさまざまでしょう。自分だけでなく、他の人がどのようなものを「宝もの」としているのか、話し合ってみてもよいでしょう。自分の価値観が広がるかもしれません。
日能研がこの問題を選んだ理由

この問題では、筆者の考える「宝もの」をとらえたうえで、自分自身の「宝もの」を説明することが求められています。一般的に、「宝もの」と聞けば、もしかしたら「金・銀・財宝」等をイメージすることが多いかもしれません。しかし、この文章の筆者は、自分のもっている「宝もの」の多くは「ほかの人にとってはつまらないガラクタみたいなものかもしれない」と述べています。その理由として筆者がふれているのが、自分自身の中にある、経験にもとづく価値観です。また筆者は「ぼくたちの発想を大きく転換することが求められているようだ」とも述べています。他者の決めた既存の価値基準から、自分で決めた価値基準を大切にすることを訴えかけているのかもしれません。受験生の中には、この部分を読んで「はっと」した子どももいたのではないでしょうか。そんな価値観の変容をうながすような素材文を先生方が選ばれた意図や、受験生に自身の「宝もの」について記述させる問題を出題された意図をぜひ伺ってみたいと考えました。以上のことから、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ばせていただきました。