シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

浅野中学校

2016年10月掲載

浅野中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.遊び心をもって問題に取り組む生徒は、世界が広がっている。

インタビュー3/3

数学好きが集まり、数学研究会を発足

できる生徒さんは、相当高いレベルなのでしょうね。

原田先生 数学オリンピックに出るような子もいます。時々入賞しますが、そういう生徒は自分でどんどん勉強しています。数学好きが集まって、数学研究会もできました。

松岡先生 数学研究会は、現高3が高1のときに「やりたい」と言って、以前担任だった数学の教員に顧問をお願いし発足しました。中1から各学年数名が加入しています。クイズのようなものや、数学を使った陣取りゲームのようなものを題材に研究をしています。昨年度の文化祭では、三山崩しという対戦型のゲームをやっていました。高校生がリードしていますが、最近、力のある中学生が入って上級生を脅かすようなこともあるようです。

そういう生徒さんは、どのような分野に進学するのですか。

原田先生 医学部や情報関係など、いろいろです。

松岡先生 大学の数学科は純粋な数学。まったく違う世界なので、そちらに進む子はあまりいません。

原田先生 数学オリンピックよりも、化学オリンピックに出る子のほうが多いです。

浅野中学校 数学研究会

浅野中学校 数学研究会

ICT環境の整備も進めている最中

ICTやアクティブ・ラーニングなどの取り組みは進んでいますか。

原田先生 数学科ではなかなか進んでいないです。従来どおりの授業が中心です。

木村先生 全教室にプロジェクターを完備しているので、はじめに自分でグラフや見取り図を考えさせてから、パソコンのグラフソフトを使って変化するグラフや3Dの図を見せることもあります。
また、高校の情報の授業は、(ICTやアクティブ・ラーニングと)相性のいい科目だと思います。実際に起きている問題をグループワークで考え、整理して、プレゼンテーションをするということはよくやっています。

原田先生 木村は、数学も教えますが情報が専門なんです。

木村先生 グーグルのサービスを使い、自宅のパソコンでも課題ができたり、連絡することができる状態になっています。これまでは、グループワークをするにも学内でしかできなかったり、1つのファイルを1人しか扱えなかったりしましたが、今は複数の生徒で、同時にそのファイルを編集できたり、自宅にいながらやりとりができたりするので、「共有する」ということが学内に浸透し始めています。情報の授業だけでなく、たとえば研修旅行の行程なども、複数の生徒で共有しながらつくり上げています。

数学を解く上で必要な力をしっかりつけていく、その姿勢は変わらない

大学入試改革についてはどのようにお考えですか。

原田先生 まだ不透明な部分が多いですよね。

木村先生 頭の片隅にはありますけどね。

森先生 英語では、4技能の聞く、話すに、従来よりも時間を割いていますし、社会科ではアウトプットすることに力を入れています。社会も数学と同じで、典型的な一問一答はできるのですが、試行錯誤できるかどうかで差がついています。ですからレポートを書かせるなど、社会科でもアウトプットする機会を増やしています。大学入試改革以上に、社会に出たら求められるものを見据えてやっていく必要があると思っています。

松岡先生 大学入試改革という言葉が先行しがちですよね。

木村先生 しっかり考えて、答案をつくり上げることが、大学入試改革への対応策として近いところではないかと思います。

原田先生 つまり、もともと我々がやっていることなのです。ただ、時代とともに授業の形態が変わることはあると思います。たとえばグループ学習を行い、グループで考えたことをまとめて発表する、というようなことは増えたとしても、内容がわかっていなければできないので、まずはそこをしっかりやるということですね。

浅野中学校 グラウンド

浅野中学校 グラウンド

体育館を新設。グラウンドも人工芝に

最後に、受験生へのメッセージをお願いします。

松岡先生 本校が大事にしているのは、生徒に対して骨を折るということです。設備的には体育館を作りました。グラウンドも人工芝になり、清々しい環境の中で学校生活を送ることができるので、それを楽しみに受験勉強に励んでほしいと思います。

原田先生 いくつか手作りの模型を持ってきました。模型を作ると、イメージが涌きやすいので、こういうものを作っている教員がいます。

森先生 小学生の時に、(断面図がわからなくて)豆腐を包丁で切ってみたことがあります。

原田先生 豆腐は切り方によっては五角形や六角形が出ることがある。やってみるとおもしろいですよ。

木村先生 浅野の過去問を見てもらうと、毎年、空間図形の問題を出題しています。小学生で空間把握が苦手なら、豆腐、消しゴムなど、切りやすい素材をその場で切ってみるといいと思います。

原田先生 そこまで余裕がないかもしれませんが、そういう遊びも入れながら、勉強してほしいですね。中学受験の算数は、基本的になんでもあり。図形で√を使えない、文字式を使えない、などの制約はありますが、日常的なものを題材にできるので、おもしろい問題を通して考える習慣を身につけてほしいと思います。

松岡先生 算数のパズルの本などを読むのもいい。典型的な問題を学習しながらも、遊び心をもって問題に取り組んでもらえると世界が広がると思います。

浅野中学校 手作り立体図形

浅野中学校 手作り立体図形

インタビュー3/3

浅野中学校
浅野中学校1920(大正9)年、事業家・浅野總一郎によって創立。当初はアメリカのゲイリー・システムという勤労主義を導入し、学内に設けられた工場による科学技術教育と実用的な語学教育を特色とした。戦後間もなく中高一貫体制を確立し、1997(平成9)年に高校からの募集を停止。難関大学合格者が多い進学校として知られているだけでなく、「人間教育のしっかりした男子校」としても高い評価を受けている。「九転十起・愛と和」を校訓とし、自主独立の精神、義務と責任の自覚、高い品位と豊かな情操を具えた、心身ともに健康で、創造的な能力をもつ逞しい人間の育成に努めることを教育方針とする。校章は、浅野の頭文字で「一番・優秀」の象徴である「A」と「勝利の冠」である「月桂樹」から形作られており「若者の前途を祝福する」意味が込められている。
横浜港を見下ろす高台にある約6万平方メートルの広大な敷地の約半分を「銅像山」と呼ばれる自然林が占めている。Wi-Fi環境が整い、中学入学後に購入するChromebookで授業や行事、部活動を展開している。2014(平成26)年には新図書館(清話書林)、新体育館(打越アリーナ)が完成、2016(平成28)年にはグラウンドを全面人工芝とし、施設面が充実している。
中高6年間一貫カリキュラムを通して、大学受験に対応する学力を養成することが目標。授業を基本とした指導が徹底している。中学の英語では週6時間の授業に加えて、毎週ネイティブスピーカーによるオーラルコミュニケーションの授業もある。数学では独自の教材やプリントが使われていて、中身の濃い授業が展開されている。高校2年から文系・理系のクラスに、高校3年では志望校別のクラスに分けてそれぞれの目標に向けた授業を行う。進路選択は本人の希望によるが、理系を選択する生徒の方が多くなる傾向がある。全体的にハイレベルな授業が展開されているが、高度な授業展開の一方で、面倒見のよいことも大きな特徴。授業をしっかり理解させるために、宿題・小テスト・補習・追試・夏期講習などを行い、授業担当者が細かく目を配っている。一歩ずつゆっくりと、しかし、確実に成長させるオーソドックスな指導方針が浅野イズム。
「大切なものをみつけよう」ーこれは学校から受験生へのメッセージ。生徒にとって学校は、一日の内の多くの時間を過ごす場所。勉学に励むことはもちろん、部活動や学校行事にも積極的に参加して、その中で楽しいこと、嬉しいこと、悔しいことや失敗をすることも含めて多くのことを経験してもらいたいと考えている。学校でのそのような経験が、学ぶことの意味、みんなで協力することの大切さと素晴らしさ、生涯、続いていくような友人関係、そして、決して諦めない強い心を育んでいくことになる。浅野中学校、高等学校という場を思う存分活用して、人生において大切なものをたくさん見つけ、成長してほしいとの願いが込められている。
部活動と学習を両立させる伝統があり、運動部の引退は高校3年5~6月の総合体育大会、野球部は甲子園予選までやり通す。中学では98%の生徒が部活動に参加している。ボクシング、化学、生物、囲碁、将棋、ディベート、演劇が全国レベル。柔道、ハンドボールやサッカーも活躍している。また、5月の体育祭と9月の文化祭を「打越祭」として生徒実行委員が主体となって運営する。これをはじめ、学校行事も盛んで生徒一人ひとりが充実した学園生活を送っている。
「銅像山」は、傾斜がかなりきつく、クロスカントリーコースとして運動部の走り込みに使われるだけでなく、中学生たちの絶好の遊び場所となっている。また、各学年のフロアに職員室を配置してオープンにすることで、生徒と学年担当の先生が日常的に対話を行っている。こうしたメンタルケアにも力を入れている。