シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

浅野中学校

2016年10月掲載

浅野中学校【算数】

2016年 浅野中学校入試問題より

(問)1回で6分よりも長く計れる砂時計があります。
砂が全部落ちている状態から砂時計の上下をひっくり返します。6分たったらまたひっくり返し、さらに5分、4分、3分、2分たったら、それぞれひっくり返します。
最後にひっくり返してから砂が全部落ちるまでに何分かかりますか。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この浅野中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

4分

解説

この砂時計で、「6分+x分」の時間が計れるとします。落ちる砂の量と計る時間は比例するので、6分で落ちる砂の量を「6」とすると、砂時計の中には「6+x」の砂が入っていることになります。

この「6+x」の砂が入っている砂時計を、6分、5分、4分、3分、2分たつごとにひっくり返していったときの、砂の移動の様子を図で表すことを考えます。
(ここでは砂時計は、下のように、簡略化して図示することにします。)

簡略化

砂時計をひっくり返す様子を図に表してもよいのですが、次の図のように、砂時計の上下の向きを固定して、「砂が上下に移動する」と考えると、砂の量の変化の様子がとらえやすくなります。

6分~最後

図より、最後の「2分たったらひっくり返す」を終えたとき、砂時計の上側には「4」の砂がたまっていることがわかります。よって、この「4」の砂が全部落ちるまでに4分かかるので、求める答えは4分とわかります。

日能研がこの問題を選んだ理由

この問題は、特に受験算数の知識を必要としないので、中学受験生はもちろんのこと、低学年の子どもたちにも取り組める条件設定となっています。問題文は短か目で、問われていることもシンプルなので、一見取り組みやすそうな問題に見えます。ところが、問題文には、「6分よりも長く計れる」とだけ書かれています。計れる時間が決まっていないので、「あれ?本当に解けるのかな?」という疑問がわいてくるところも、この問題の面白さの1つといえるでしょう。考え進めていくと、計れる時間が決まっていなくても答えが1通りに決まることがわかり、「うまいことできているなあ」と感心する瞬間が訪れます。

この問題は、よい意味で入試問題っぽさがない、不思議な感じがする問題です。重圧感が漂う入学試験の中で、緊張で凝り固まった気持ちやアタマをほぐしてくれるオアシスのような問題に思えた受験生もいることでしょう。

「ちょっとここらで、純粋に“算数を楽しむ”ということを思い出して、柔軟に考えてごらん。」そんな浅野中学校の先生の声が聞こえてきそうな問題です。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。