シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

浅野中学校

2016年10月掲載

浅野中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.なぜ、この解き方で答えを導き出すことができるのかを考えてみよう

インタビュー2/3

大事にしているのは、自分の考えを論理的に表現する力

数学科が6年間の学習において大事にされていることはなんですか。

原田先生 本校の入試は、半分が典型的な問題です。まずは典型的な問題を解決する力をつけることから始めてほしいのですが、それだけでは入学後の学習が苦しくなります。
入試問題でも1、2題、解き方を説明させる問題を出しているのは、自分が考えていることをまとめて、論理的に書くことを大事にしているというメッセージ。授業でも、6年かけてそういう力をつけていくことを大事にしています。
具体的には、途中式を書かせることから始めています。文章題の場合には、文章題の解答の書き方に定型があるので、そういうものも教え込みます。定期試験の中で解き方を書かせるということもしています。結果的に、理路整然とした答案が書けるようになった子が、難関大学に合格しています。

数学科/原田浩史先生

数学科/原田浩史先生

なぜその解き方で解決できるのか。それを理解して解こう

森先生 日常の宿題プリントも余白が多いですよね。

原田先生 そうですね。高校生になってから始めても遅いですから、中学生のうちからこつこつと式の書き方、答案の書き方を訓練し、高校生になった時には身についているという状態をめざしています。

木村先生 ですから、小学生にも(算数の問題を解く時は)道筋を立てて考え、それを式に表したりして解いてほしいですね。

原田先生 ●●算の公式に当てはめて解くという、機械的な作業で問題を解くのではなく、なぜその解き方で解決できるのかを、自分で理解して解いてほしいと思っています。

入試広報部長/森智史先生

入試広報部長/森智史先生

考えずに答えを求める子が増えている

ここ数年の間で、受験生に変化は見られますか。

松岡先生 計算処理能力や解決能力は、以前よりも優れていると思いますが、答えを先に求めがちです。途中を考えずに答えを求めるところがあるので、そこは入学後に改めていきたいと考えています。

原田先生 自分の頭で考えるということをせず、「解き方を教えてほしい」という生徒がいます。最近、そういう生徒が増えているように思います。数学ができる子でも聞いてきます。勉強の仕方は、成長に応じて変えていくものなのに、それができないのが残念です。もちろん典型的な問題の解き方を覚えることは大事ですし、入試でも、それを勉強してきているかということを中心に見ていますが、考えることをせずに、訓練することにより点数を取っている子は中3くらいで行き詰まります。

松岡先生 数Ⅰに入るくらいですかね。

原田先生 そうですね。高校の教材に入ると辛くなりますね。時間はかかっても、自分の頭で考えて、きちんと取り組んでいる子は、高等学校の内容に入ってからも伸びていきます。

自分で考える習慣をつけることが大事

どのように学習すればいいのでしょうか。

原田先生 系統立てて取り組むことが大事です。

松岡先生 そして考えることですね。入学後に問題集と解答を渡すのですが、ある程度考えてから答えを見るのではなく、すぐ見てしまう子が多いという印象です。そこでもう一踏ん張りできるよう、中学生の間は特に、じっくり問題に取り組むということを大事にして、自分で考える習慣をつけてほしいです。

先生方は小学生の時、どんな学習をしてきましたか。

木村先生 私は算数が大好きだったので、パズルを解く感覚で、楽しんで解いていました。

森先生 算数の嫌いな子が●●算に走る気がします。試行錯誤をせずに、自分の引き出しを探し始めるのです。そして解法の暗記で終わるようなところがあります。

木村先生 算数に限らず、すべての教科でそうだと思いますが、考えていることをまとめて、表現する、発表するということは、これから必要になってくると思います。算数、数学でいうと式やグラフということになると思います。

浅野中学校 図書室

浅野中学校 図書室

中学では補習や追試でわからない生徒をフォロー

授業は、それぞれの先生に任せるスタイルですか。

松岡先生 テキストは共通ですが、指導方法は個々に任せられています。

原田先生 大きな方向性は一緒です。また、この学年のこの時期にこの単元をやるということも決めていますので、年によって大きく変わることもありません。

木村先生 毎年、持ち回りで授業を見て研究し、方針の確認などもしています。

授業はどのあたりのレベルに合わせて行っていますか。

松岡先生 それは担当するクラスや先生によって少し違います。中学では落ちこぼれることがないよう、真ん中より少し上のレベルで授業を行っていますが、高校の上位のクラスは引っ張っていかなければいけません。ですからレベルも上がります。

原田先生 授業の進度は速いと思います。数学が得意な子ばかりではないので、どの学年でも補習や追試を行い、しっかりフォローしています。

インタビュー2/3

浅野中学校
浅野中学校1920(大正9)年、事業家・浅野總一郎によって創立。当初はアメリカのゲイリー・システムという勤労主義を導入し、学内に設けられた工場による科学技術教育と実用的な語学教育を特色とした。戦後間もなく中高一貫体制を確立し、1997(平成9)年に高校からの募集を停止。難関大学合格者が多い進学校として知られているだけでなく、「人間教育のしっかりした男子校」としても高い評価を受けている。「九転十起・愛と和」を校訓とし、自主独立の精神、義務と責任の自覚、高い品位と豊かな情操を具えた、心身ともに健康で、創造的な能力をもつ逞しい人間の育成に努めることを教育方針とする。校章は、浅野の頭文字で「一番・優秀」の象徴である「A」と「勝利の冠」である「月桂樹」から形作られており「若者の前途を祝福する」意味が込められている。
横浜港を見下ろす高台にある約6万平方メートルの広大な敷地の約半分を「銅像山」と呼ばれる自然林が占めている。Wi-Fi環境が整い、中学入学後に購入するChromebookで授業や行事、部活動を展開している。2014(平成26)年には新図書館(清話書林)、新体育館(打越アリーナ)が完成、2016(平成28)年にはグラウンドを全面人工芝とし、施設面が充実している。
中高6年間一貫カリキュラムを通して、大学受験に対応する学力を養成することが目標。授業を基本とした指導が徹底している。中学の英語では週6時間の授業に加えて、毎週ネイティブスピーカーによるオーラルコミュニケーションの授業もある。数学では独自の教材やプリントが使われていて、中身の濃い授業が展開されている。高校2年から文系・理系のクラスに、高校3年では志望校別のクラスに分けてそれぞれの目標に向けた授業を行う。進路選択は本人の希望によるが、理系を選択する生徒の方が多くなる傾向がある。全体的にハイレベルな授業が展開されているが、高度な授業展開の一方で、面倒見のよいことも大きな特徴。授業をしっかり理解させるために、宿題・小テスト・補習・追試・夏期講習などを行い、授業担当者が細かく目を配っている。一歩ずつゆっくりと、しかし、確実に成長させるオーソドックスな指導方針が浅野イズム。
「大切なものをみつけよう」ーこれは学校から受験生へのメッセージ。生徒にとって学校は、一日の内の多くの時間を過ごす場所。勉学に励むことはもちろん、部活動や学校行事にも積極的に参加して、その中で楽しいこと、嬉しいこと、悔しいことや失敗をすることも含めて多くのことを経験してもらいたいと考えている。学校でのそのような経験が、学ぶことの意味、みんなで協力することの大切さと素晴らしさ、生涯、続いていくような友人関係、そして、決して諦めない強い心を育んでいくことになる。浅野中学校、高等学校という場を思う存分活用して、人生において大切なものをたくさん見つけ、成長してほしいとの願いが込められている。
部活動と学習を両立させる伝統があり、運動部の引退は高校3年5~6月の総合体育大会、野球部は甲子園予選までやり通す。中学では98%の生徒が部活動に参加している。ボクシング、化学、生物、囲碁、将棋、ディベート、演劇が全国レベル。柔道、ハンドボールやサッカーも活躍している。また、5月の体育祭と9月の文化祭を「打越祭」として生徒実行委員が主体となって運営する。これをはじめ、学校行事も盛んで生徒一人ひとりが充実した学園生活を送っている。
「銅像山」は、傾斜がかなりきつく、クロスカントリーコースとして運動部の走り込みに使われるだけでなく、中学生たちの絶好の遊び場所となっている。また、各学年のフロアに職員室を配置してオープンにすることで、生徒と学年担当の先生が日常的に対話を行っている。こうしたメンタルケアにも力を入れている。