中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

頌栄女子学院中学校

2015年12月掲載

頌栄女子学院中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.進路は生徒自身が決めるもの。文系・理系、どちらに進んでも役立つ力をつける

インタビュー2/3

中1の授業はスロースタート

入試問題が難しいので、授業も難しいように思われがちですが、やはりそうなのでしょうか。

河野先生 本校には帰国生が多いのでそうでもないと思います。帰国生の中には日本で数学の教育を受けていない子がいます。ご家庭で算数の学習をしてきた生徒はいいのですが、学習していない生徒は分数もあやふやですし、方程式を学んでも、式を立てられません。そういう子たちも含めた中で授業を始めるので、高度な方向にはいきづらいです。ただ、訓練されていない子たちの発言がおもしろく、「そう思うのか」「それいいな」と思うことがあります。化学反応が起こりそうな時は手応えを感じます。

進路指導部長/河野敏子先生

進路指導部長/河野敏子先生

高1あたりで遜色がなくなる

数学が得意な生徒さんもいらっしゃると思います。ギャップはどう埋めているのですか。

河野先生 わからない子をピックアップしてこまめにテストします。生徒一人ひとり状況が異なるので、個別指導もするなど丁寧に対処すると、こつこつ取り組める子は高1あたりで遜色がなくなります。

海外にどのような形でいたか、帰国してからどのくらい経っているかにもよりますが、3年かければ基礎的な力はつきます。地力を発揮して伸びていく子もいます。日本語での言い回しに慣れていないだけの子は、わりと早いです。中学校に入学する時に、計算ができて、割合の概念があり、速さの出し方などをわかっていればなんとかなります。

やはり日本の数学は優れているのですね。

河野先生 お父様の転勤で他の国に行った子から、「私、トップなんです」という報告がありました。本校では真ん中あたりの子でした。要求されることが違うのだろうと思います。日本の数学教育は、プログラムは整っていると思いますが、テストの点数を取るためにという部分が強いかもしれません。

人生に役立つ数学的な考え方やスキルを教えたい

生徒さんの特長を教えてください。

河野先生 バラエティに富んでいます。生徒には得意、不得意がありますから、4教科が揃ってできなくても、十分に入学できる学校です。

進路ではどのような傾向が見られますか。

河野先生 科学の道に進む子もいれば、経済の道へ進む子もいます。数学と関係がなさそうな分野に進む生徒もたくさんいますが、どのコースに進んでも必要な考え方やスキルを教えることが、私たちの役割だと思っています。

そして、世の中に貢献できる女性になってほしいと思います。人はそれぞれもっているものが違いますし、考え方も違いますが、かけがえのない一人であることは同じです。世の中の一人として、なんらかの形で貢献していける人に育ってほしいと思っています。

頌栄女子学院中学校

頌栄女子学院中学校

好みは理社にかかわるところで分かれる

4教科、すべてが100点満点で入試を行う意図を教えていただけますか。

河野先生 国数英は考える基盤になる教科ですが、その先を考えると、理社が鍵になります。入試の時間、配点に関しては、いろいろな考えをもつ教員がいることはたしかですが、この状態はしばらく維持すると思います。

国数英から理社という考え方はおもしろいですね。

河野先生 個人の意見ですが、子ども達を見ていると、経済が好きで、数学では見せたことがない、いきいきとした顔をする子がいます。理科に興味をもって取り組む子が多いです。理社にかかわるところで好みが分化するように感じるので、ベースになる国数英は力づくでも力をつけなければいけないと思っています。

複雑な問題でも工夫して答えにたどりつける力はほしい

それはどのような力でしょうか。

河野先生 数学が得意とか不得意とか、入試問題ができるとかできないとかではなくて、順を追って考えることができるなどの基本的な力です。必要な時に利用できるレベルにまではもっていきたいですね。経済で数式を使う時に躊躇しない、あるいはそんなに苦労しないで使える程度にはしてあげたいと思っています。

そう考えると計算機のような力は必要ありません。ただ、作業をしている途中でわからなくなってしまうようでは困りますので、少し複雑な問題でも工夫して答えにたどりつくことができる力はもっていてほしいです。それを40分で計ることが難しいのです。

頌栄女子学院中学校

頌栄女子学院中学校

女子も躊躇なく理系を選ぶ時代

全体的に理系に進む女子が増えていますよね。

河野先生 そうですね。躊躇しなくなっていますね。以前から医学部志望の生徒はいましたが、さらに躊躇なく選んでいるという印象はあります。

「女子だからできなくていいのよ」と言われて育ったのが昔の状況なら、そういうことを言われずに育ってきた子たちになってきたように思います。数学科でも、「女子だから数学をそんなに頑張らなくても…」という時代もありましたが、今はそんなこと言えません。

ただし、受け入れ先は少ないですから。理系に進む場合には覚悟を確認しています。個人の考えを尊重しながらも、これまでの成績を見て本当にやりきれるかどうかは判断しています。

数学ができる子が、必ずしも理系を選ばなくてもいい

進路は生徒さんに任せているのですね。

河野先生 数学の力で医学部が決まるわけではありません。文系的な発想をする子であっても、入試程度の数学だったらやれると思うので、こちらから「どちらに行きなさい」と指示することはないです。「この子の数学の力を伸ばしてあげたいな」と思う子が、理系を選んでくれれば嬉しいですが、文系を選んでも、数学ができれば世の中に出て重要な役割を果たすようになると思うので、その中で活かしてくれればいいと思っています。

頌栄女子学院中学校 制服

頌栄女子学院中学校 制服

インタビュー2/3

頌栄女子学院中学校
頌栄女子学院中学校岡見清致の信仰に基づく教育事業として、頌栄学校を1884(明治17)年に開校。1947(昭和22)年に中学・高校となり、64年に頌栄女子学院と改称。94(平成6)年から高校募集停止、中学・高校6年間を通した教育をおこなっている。併設校に英国学校法人のウィンチェスター頌栄カレッジ(大学)がある。
プロテスタント系キリスト教主義の学校で、聖書の教えを徳育の基礎におく。女性にふさわしい教養を身につけることが方針で、高雅な品位や豊かな国際感覚を備え、社会に奉仕貢献できる人間形成を志す。校名の「頌栄」は神の栄光をほめたたえるという意味。自慢の制服も同校の教育方針に沿い、国際感覚にマッチするものとした。言動、身だしなみについては日常きめ細かく指導している。帰国生との交流により、多様な価値観をも育んでいる。
区の保護樹林に指定される木々に囲まれた運動場など緑にあふれる校内には有名な建築家ライトの高弟の設計による記念堂をはじめ、礼拝堂と講堂をかねるグローリアホールなど施設も完備。ホワイトハウスと呼ばれる校舎や新体育館も近代的。南志賀高原と軽井沢に山荘をもつ。食堂は高校生から利用可。パン類の販売あり。
中学では英・数の多くがクラス分割などの少人数制授業。このなかでは高校で学ぶ内容も取り入れられている。英・数は時間数も標準より多い。聖書の授業も週1時間組み込まれている。中3の数学では習熟度別授業を導入。中3では卒業論文を制作、夏休み前から準備し、原稿用紙20~30枚にまとめる。高2からは文科と理科、さらに高3では理科コースが2つに分かれる。進路に応じた選択科目も多数用意されている。中学では主要教科を中心に昼休み・放課後に補習を実施、高校では長期休暇中にも受験講習を行っている。ICU、青学、早慶などに推薦枠があるのも大きな魅力だ。
2期制で、土曜日は休日としている。1日は礼拝で始まり、中学・高校とも週1回の合同礼拝もある。高校では礼法の授業がありしつけにも厳しい。タータンチェックのスカートの制服はあまりにも有名。校内にはイギリスの学校の雰囲気が漂い、生活スタイルも校舎内で革靴を履いたまま過ごす欧米流。クラブ活動ではハンドベルクワイヤーや弓道部が知られている。花の日礼拝、イースター、クリスマスなど礼拝形式の行事が多く、そのほかキャンプ、コ・ラーナーズ・デイ(研究発表会)、頌栄フィールド・デイ(運動会)、カナダとイギリスの語学研修など盛りだくさん。奉仕活動にも力を入れている。