中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

吉祥女子中学校

2015年10月掲載

吉祥女子中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.歴史は出来事の前後関係をつかもう

インタビュー2/3

提示資料や本文に問題を解くヒントがある

岡田先生 公民分野でも1行記述の問題を出しました。1912年の2年後の「あるできごと(第一次世界大戦)」をきっかけにヨーロッパの女性が社会進出するようになった理由を答える問題です。設問文では、女性が働き手となっていることまで踏み込んだ上で質問しています。このように1行記述の問題は、いきなり論述させるようなことはしません。提示資料や本文の内容などを参考に、思考力や分析力、記述力を試す問題にしています。1行記述の力を、中学入学後にさらに鍛えていきます。
女性が男性の職場に進出するようになったのは、第一次世界大戦で男性が戦場にかり出されて労働力不足になったためですが、単に「人手不足になったから」とか、「女性が工場で働くようになったから」という答えが多く見られました。「戦争で男性がいなくなった」ために「女性の労働力が必要になった」という因果関係が書けていませんでした。

ここは「1912年」に下線部が引かれていますが、リード文に戻らずに設問文だけで解こうとすると、単なる女性の権利拡大や社会進出と取り違えて、戦争との因果関係が抜け落ちた解答になってしまいます。必要な知識を覚えているだけでは解けない、知識を組み合わせて考える力が試されます。また、1912年後の2年後=1914年の第一次世界大戦というヒントを見つける力も求められる問題ですね。

岡田先生 リード文の中に問題を解くヒントがあったりします。入試は限られた時間で問題を解かなければならないので、斜め読みになってしまうかもしれませんが、リード文の内容が問題にかかわる場合もあります。リード文の内容は問題を解くヒントになると思って読んでほしいと思います。

吉祥女子中学校

吉祥女子中学校

特に初見の問題の注釈は要注意

岡田先生 私は地理分野を教えていますが、センター試験の対策として強調しているのは、「注釈を注意して読むように」ということです。初見の資料は特に要注意です。例えば「中国には台湾、ホンコン、マカオを含まない」といった注釈が設問文に付いていることがあるのですが、実はここに問題を解くヒントが隠されていたりするのです。
設問文をきちんと読むことと注釈を押さえることは、中学受験においても当てはまると思います。注釈を見落としてしまうと解けなかったりすることもあるので、普段から気をつけるようにしましょう。

歴史分野は出来事の年号よりも因果関係をつかもう

歴史分野のリード文は、毎年テーマ性があって読み応えがありますね。第1回の入試問題は「塩」がテーマですが、これを読むと塩と日本人のかかわりがよくわかります。別の角度から歴史の流れをつかみながら、学んだことが試される問題になっていると思います。

岡田先生 リード文が一番長いのが歴史分野です。日本史の教員の思い入れの強さが表れていると思います。
並べ替え問題はかなり練られていて、年号を覚えているかどうかではなく、出来事の前後関係(因果関係)をつかむことを重視しています。例えば、平安時代の菅原道真と藤原道長・頼通はどちらが先かというよりも、藤原氏がどのようにして政権を握ったか、菅原道真をはじめとする貴族を徹底的に排除していった結果、藤原道長、頼通による摂関政治の栄華が実現したことを押さえてもらいたい、というのが作問者のねらいです。
また、1970年代の出来事として正しくないものを選ぶ文章選択問題では、沖縄の返還(1972年)、第四次中東戦争と石油危機(1973年)、日中共同声明(1972年)から、正しくない選択肢がわかります。公害は1956年の水俣病など50〜60年代に発生しており、公害対策は60年代には始まっていました。ここでは他の3つが70年代の出来事であることを知っておくよりも、日本が1968年にGNPで世界第2位となり、60年代には今の中国のような公害問題を抱えていたことを想像できることがポイントです。そうすれば、公害対策基本法の制定が70年代では遅いと気づけると思います。

吉祥女子中学校

吉祥女子中学校

教科書の太字用語は漢字で書けるように

歴史分野の問題は漢字指定が多いですね。

岡田先生 以前は漢字指定はしていませんでしたが、ひらがなの解答と漢字の解答が同等という不条理が生じないように、公平に評価しようと漢字指定にしています。取り上げるのは、教科書に太字で書かれている重要な用語ばかりです。説明会でも、「漢字で書ける用語は漢字で書きましょう」ということはしっかりお伝えしています。
今年の問題で漢字指定していいのかどうか議論したのが、公民分野で出題した「平塚雷鳥」でした。国語科での扱いは「平塚らいてう」ですが、社会科の資料集では漢字表記ですし、最終的には漢字指定としました。

インタビュー2/3

吉祥女子中学校
吉祥女子中学校1938年(昭和13)年に、地理学者の守屋荒美雄が創立。2007年(平成19)年より高校募集を停止し、完全中高一貫校となる。
「教育とは捧げる心、思いやる心、微笑む心」という設立者の言葉を心におき、「社会に貢献する自立した女性の育成」を目指している。なでしこの花を型どった校章には、「清く、美しく、強く、正しく」育つようにと願いが込められている。
教科指導では、知的好奇心に訴えかける学習指導を展開。国語の調べ学習、社会科のディスカッション、保健体育科での「性とは生である」の理念に基づく研究発表など、自分を表現する機会がたくさんある。理科の実験レポートでは、レポート作成の基礎から完成まで丁寧に指導。理系・医学部への高い進学実績へと結びついている。英語は中学1年~高校1年で『ニュー・トレジャー』Stage1~3、数学は『体系数学』などハイレベルなテキストを使用。高校3年では、受験対策学習に力を入れ、高い進学実績を上げている。高校2年生・3年生では、文系・理系・芸術系のクラス編成になる。2012年より、国公立大学志望者の増加に合わせて、高校2年生までは文系を国公立・私立に分けず、高校3年生で分けるようにした。
アメリカ、オーストラリア、カナダ、中国、韓国に姉妹校があり、語学体験で訪問するほか、1年間の留学制度もある。中学の音楽ではバイオリンが必修となっており、課外授業ではピアノや日本舞踊などが学べる。クラブは、弓道やサッカー、ソフトボール、テニス、陸上などが活躍。ボイスレスパフォーマンスは声のない演劇を行う珍しいクラブ。
図書館の蔵書数は6万8000冊で、CDやDVDなども充実。八王子には、運動会や部、クラブの練習や合宿で利用するキャンパスもある。