シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

吉祥女子中学校

2015年10月掲載

吉祥女子中学校【社会】

2015年 吉祥女子中学校入試問題より

(問)日本は周りを海に囲まれていることから、海岸線の総延長距離が約3万5千kmと長く、気候や産業の面で海の影響を強く受けてきました。次の表は都道府県別の海岸線距離の上位5位までと、それぞれの都道府県の面積とその順位を示したものです。この表を見ると、都道府県別の面積では37位と決して広くはない長崎県が、海岸線距離では北海道に次いで2位になっています。その理由として考えられることを二つ挙げて、1行で説明しなさい。

(『理科年表 平成26年』より作成)

順位 都道府県 海岸線距離(m) 面積(km²)とその順位
1位 北海道 4,401,737 83,457.06 (1位)
2位 長崎県 4,196,104 4,105.75 (37位)
3位 鹿児島県 2,643,000 9,188.99 (10位)
4位 沖縄県 2,026,852 2,276.64 (44位)
5位 愛媛県 1,633,141 5,678.50 (26位)
  全国計 35,126,093 377,959.91

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この吉祥女子中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

島が多く、海岸線が入り組んでいるため。

解説

表の1位は北海道で、海岸線の距離は4401737m、面積は83457.06km²です。そして、2位の長崎県は海岸線の距離は4196104m、面積は4105.75km²です。北海道は、面積では長崎県の20倍ほどもあるのに、海岸線の長さはわずか1.05倍。長崎県の海岸線が面積の割にいかに長いかがわかります。

この問題では、決して広くはない長崎県の海岸線がなぜこれほど長いのかという理由を文章で説明することが求められています。長崎県には対馬や五島列島をはじめとしてたくさんの島々がある上に、リアス海岸が発達しているという特色を、海岸線の長さと結びつけることができれば解答にたどりつけますね。「考えられることを二つ挙げて、1行で説明しなさい。」という形式からは、条件をふまえて過不足なく書く力が求めらているということもわかります。

日能研がこの問題を選んだ理由

日本の海岸線の総延長は約35000kmです。地球一周が約40000kmということを考えながら、地球儀上の日本列島をイメージしてみてください。日本は国土面積の割にひじょうに海岸線が長いということを実感していただけるのではないでしょうか。

多くの中学受験生は、日本の自然について学ぶとき「海岸線の総延長が国土面積の割に長いこと」はもちろん、それが「海に囲まれた島国であることや、海岸線が入り組んでいること」に起因しているという事実にもふれるはずです。しかし、都道府県別の海岸線の長さはどうでしょう。もしかしたら、問題にしめされているようなランキングを目にするのははじめてだという受験生も多かったかもしれません。

この問題は、日本全体の自然の特色として学んだことを、その一部分である「長崎県」にあてはめて考えることができるかどうかがポイントでしょう。学んだ時の形のままの出題でなくても、部分と全体の関係をふまえて、持っている知識を新しい状況にあてはめて解く問題だといえます。一見シンプルですが、子どもたちの思考力・表現力を試すことができるという意味で、この問題を選びました。