シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

吉祥女子中学校

2015年10月掲載

吉祥女子中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.1行記述は端的で、正確な表現が求められる

インタビュー1/3

「隣接県が1つだけ」から、どんな地形を連想するか

岡田先生 本校の入試では、用語を答える問題も出していますが、ある程度の知識が身についていることを前提に、または設問文に示された資料をヒントに、思考して解答を導く力を試す問題を出題しています。
長崎県が唯一、隣接する都道府県が1つだけというクイズ的な知識を求めているわけではありません。「隣接県が1つだけ」ということから、どんなことを連想できるかということが大事です。島原半島などの半島や、対馬や壱岐、五島列島などの島が多いこと、リアス海岸が発達していることを想像してもらいたいのです。
この問題は地図を提示していませんが、これとは別の地理分野の問題で日本地図を示しています。県境は記していませんが長崎県の位置はわかります。これを見て考えるのは一向に構わないので、他の問題の資料も賢く利用して類推してもらえればと思います。

社会科/岡田英之先生

社会科/岡田英之先生

「島がある」だけでは説得力が足りない

日本の海岸線が国土のわりには長いことを受験生は覚えています。けれど、都道府県別のデータを見ることは少ないと思います。クイズ的に、長崎県は海岸線の長さが第2位だと知っていても、理由まで考えることは少ないのかもしれません。

岡田先生 正解率は6割程度でした。部分点をもらえた受験生が3割程度いたので、約9割は得点することができていました。部分点というのは、理由を「2つ」書くところを1つしか書けなかったり、解答が不十分だったためです。
例えば「県の形がデコボコしているから」では、陸地の県境が起伏に富んで入り組んでいることも当てはまるので、海岸線が長い理由としては不十分です。また、「島」に着目したのはよいのですが、「島があるから」という解答が目立ちました。他の都道府県にも島があるので、「島が多いから」というところまで書かないと、海岸線が長い理由としては弱いです。

「島がある」と書いた受験生は、おそらく「島が多い」ということはわかっていたと思います。設問の意図をきちんと読み取って、もったいない解答にならないようにしたいですね。
前回(2014年6月)掲載させていただいた屋久島の降水量が多い理由を答える問題を塾で解かせたところ、設問に「地図から読み取れることをふまえて説明しなさい」とあるのに、読み取ったことを活用できていない解答がずいぶんありました。受験生には、設問の意図をとらえることと、きちんと伝わる文章を書くことがセットになって正解にたどり着くのだということを意識して問題に取り組んでほしいと思います。

興味・関心をもつことで、特徴を正確にとらえられるようになる

「島が多い」と書くべきところを「島がある」としてしまうような解答は、塾で教えていても切実な問題です。例えば日本海側の気候の特徴を「冬に降水量が多い」と書いてほしいのですが、「冬に雪が降る」という答えを正解にするかどうか悩みます。受験を控えている小6は不正解にしますが、小4の段階では雪が降ることに目を向けたことを評価してあげたいのですが…。

岡田先生 不正解にするには惜しいですよね。1行記述は端的な表現が求められますが、ポイントが抜け落ちないように、読み手に正確に伝わる文章を書くように心がけましょう。35分で40問を手際よく解いていかなければならない中での記述ですが、設問の条件を満たしているかを確認した上で、「慌てずに取り組む」ことも大事です。
受験生に限らず本校の生徒も、記述の「正確さ」は課題の1つです。空欄を埋める問題は前後の文脈と合わせなければならないところを、文章としてつながっていなかったり、連体止めになっていたりします。社会科や国語科では添削をして正確な記述を指導しています。
正確な表現を身につけるには、まず興味・関心を持つこと。興味を持って地図をよく見ることで地形を正確にとらえられるようになり、それが正確な記述にもつながると思います。

吉祥女子中学校 校舎

吉祥女子中学校 校舎

インタビュー1/3

吉祥女子中学校
吉祥女子中学校1938年(昭和13)年に、地理学者の守屋荒美雄が創立。2007年(平成19)年より高校募集を停止し、完全中高一貫校となる。
「教育とは捧げる心、思いやる心、微笑む心」という設立者の言葉を心におき、「社会に貢献する自立した女性の育成」を目指している。なでしこの花を型どった校章には、「清く、美しく、強く、正しく」育つようにと願いが込められている。
教科指導では、知的好奇心に訴えかける学習指導を展開。国語の調べ学習、社会科のディスカッション、保健体育科での「性とは生である」の理念に基づく研究発表など、自分を表現する機会がたくさんある。理科の実験レポートでは、レポート作成の基礎から完成まで丁寧に指導。理系・医学部への高い進学実績へと結びついている。英語は中学1年~高校1年で『ニュー・トレジャー』Stage1~3、数学は『体系数学』などハイレベルなテキストを使用。高校3年では、受験対策学習に力を入れ、高い進学実績を上げている。高校2年生・3年生では、文系・理系・芸術系のクラス編成になる。2012年より、国公立大学志望者の増加に合わせて、高校2年生までは文系を国公立・私立に分けず、高校3年生で分けるようにした。
アメリカ、オーストラリア、カナダ、中国、韓国に姉妹校があり、語学体験で訪問するほか、1年間の留学制度もある。中学の音楽ではバイオリンが必修となっており、課外授業ではピアノや日本舞踊などが学べる。クラブは、弓道やサッカー、ソフトボール、テニス、陸上などが活躍。ボイスレスパフォーマンスは声のない演劇を行う珍しいクラブ。
図書館の蔵書数は6万8000冊で、CDやDVDなども充実。八王子には、運動会や部、クラブの練習や合宿で利用するキャンパスもある。