中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

神奈川大学附属中学校

2015年08月掲載

神奈川大学附属中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.たくさん手を動かそう。夢中になれば、いつのまにか心の壁を超えられる!

インタビュー2/3

数学を嫌いにならないためにも小学生の学習が大事

数学好きの生徒さんは多いという印象ですか。

重永先生 そうですね。中高の学習の中でハードルになり得る教科の一つが数学だと思いますが、授業にも宿題にも熱心に取り組む生徒が多いです。私は中1を教えていないのですが、入学して2ヶ月あまりですから一次方程式あたりでしょうか。まだ、それほど数学の難しさに直面していないと思いますが、これから難しくなるに連れ、「苦手」だと思ってしまう生徒がいつの時代もいます。苦手意識はあっても、嫌いになってほしくないので、小学生の時からしっかりと学習を積み重ねてきた子に入ってきてほしいと思っています。また、初見の問題にも意欲的に取り組める子に入ってきてほしいと思っています。

数学科/重永浩二先生

数学科/重永浩二先生

手を動かすことで、算数や数学に対する抵抗感が消えた

数学嫌いにならないための勉強法があれば教えてください。

重永先生 私は幼い頃から算数が好きでした。計算よりも、図形などを作ることが好きで、折り紙を切って遊んでいました。紙飛行機をつくるにしても、どう作ればかっこよくて、安定するかなと考えながら作っていました。なんとなく作った飛行機はすぐ落ちてしまいます。長く飛ぶ紙飛行機は、左右対称でかっこいいのです。それが算数とどう関係があるかというよりも、自分でものを作るなど、手を動かした経験は、今の自分に生きていると思います。

中学生の頃に紙で正多面体を作ったことがあります。きれいにできないと悔しくて、懸命に取り組みました。親に聞いても「きれいにできるまで没頭していた」と言っていました。こだわりを持って作ることができたのは、小学校の頃から自分の手で創り上げてきた経験があったからだと思います。それが結果として算数や数学に対する抵抗感をなくしてくれたのではないかと、勝手に解釈しています。

問題を解くにしても、間違えた後が大事

それは試行錯誤する力ということでしょうか。

重永先生 そうですね。学校で解く問題ひとつ取っても、合っていれば嬉しいですし、間違っていれば残念に思いますが、それだけでなく、間違ってしまった時にどう対処するかが大事なのです。

先生から指摘されて「そうか」と思っても、理解していないと思います。やはりもう一度自分で解いてみて、先生から指摘されたところをすんなりクリアし、ゴールまでたどりつくという、試行錯誤の時間があってこそ力になると思います。それは算数や数学に限らず、他の学問も同じで、たくさん試行錯誤することが大事だと思います。

毎週の確認テストで基礎基本の定着を図る

実際、授業はどのような思いをもって臨んでいますか。

重永先生 意欲のある生徒にはどんどん難しい問題を与えてもいいと思います。ただ、中1、中2の目標は基礎基本の定着なので、ついていけなくなる生徒を極力少なくしていくことを目指しています。具体的には、1週間ごとに確認テストを行っています。授業の内容を理解できていれば満点を取れるテストなので、そこで点を取れない生徒が補習の対象になります。

確認テストは手作りですか。

重永先生 そうです。毎週、教科担当の者が授業の進度に合わせて、ここまでは到達してほしいという思いを込めて作っています。テストは金曜日の1時間目に行い、当日、または翌日までに採点して、内容の理解に乏しい生徒は土曜日の放課後に呼んで「自由勉強会」というかたちで補習をしています。

市川先生 ある程度絞られた人数で行うことが望ましいと思っています。直前の勉強ではなく一週間の授業を理解したか、そこに気をつけながら、毎週行うことで個の力を引き上げています。

神奈川大学附属中学校 先生

神奈川大学附属中学校 先生

授業は教員と生徒の相互作用でつくられている

授業で工夫されていることがあれば教えてください。

重永先生 今は高校生を担当しているのですが、できるだけ教科書に載っていない、身近なことを例にあげたり、授業の内容と関係なくても、背景に数学が絡む題材を見つけて話をしたりしています。例えば、球の勉強をする時に、GPSの話をしました。地球の周りにある人工衛星から発する信号により地球上にいる人間の位置を計ることができます。もし地球が、海や山がない平面の球だったら、何台のGPSがあれば測定可能なのか。最低4台なのですが、その理由などを話題にしています。生徒の興味を引くという狙いもありますが、発言しようとする力、自分の考えを言葉にする力、説明する力などを引き出す狙いもあります。

高校生でも発言しますか。

重永先生 人それぞれですが、よく発言する子はいます。そういう明るさや活気にとても助けられています。生徒の個性や力を引き出すことも大事ですが、授業は教員と生徒の相互作用でつくられていますから、一方的になってはいけないという意識で取り組んでいます。

神奈川大学附属中学校

神奈川大学附属中学校

数学のおもしろさ、奥深さを感じてほしい

重永先生 「自分の好きな数を思い浮かべて、その数だけ指を移動させなさい」ということもしました。それを2回繰り返した後、小指の方向に2つ移動させると、必ず人差し指に戻ってくるので、一瞬「わっ!」と沸くのです。みんなが同じ指を持っているので、「なぜ?」と、生徒同士で話して意見が出た時に、こちらもそれを拾って興味を育むのです。

数学のおもしろさ、奥深さに触れると、いろいろな現象が同じものとして見えてきます。それが数学を学ぶ上でとても大事なのです。物事をシンプルにとらえ、モデル化し、その中にある規則性や法則を見出して、それが正しいかどうかを検証するという流れが科学だと思いますし、それを文字や数を使いながらシンプルに行える世界が算数・数学だと思います。単に教科書に載っていることだけを学ぶのではおもしろくありません。自分でそういうものに気づき、創り上げて、生きる力につなげていける子を育てていきたいと思っています。

情報の授業でも試行錯誤

重永先生 本校はIT教育にも力を入れています。中1から基本的なことを指導し、必要に応じて活用するとともに、中3と高2の情報の授業では、Webサイトを創ったり、レゴを使いプログラミングしてロボットを動かしたりしています。今の子どもたちは情報機器の扱いに慣れているので、思いも寄らないものを創り上げます。うまくいかないことも多いと思いますが、一つのものを創り上げるには、その度に原因を突き止めて、改善しなければなりません。いわゆる試行錯誤を、情報の授業の中でも大いに学んでいます。

市川先生 本校はICTと国際理解教育も大切にして、十分に学べる機器は揃っています。ただ、そのツールを駆使できる前に、ものづくりのバックグラウンドとなる部分、知識や考え方、柔軟な発想や表現力、協調性などを引き出すように努めています。

神奈川大学附属中学校 図書館

神奈川大学附属中学校 図書館

インタビュー2/3

神奈川大学附属中学校
神奈川大学附属中学校「質実剛健」「積極進取」「中正堅実」を建学の精神に掲げ、真面目で、サバイバル能力があり、何事も進んで行う人間性豊かで有能な人物の育成に努める。「足を大地に手を大空に」という学校のモットーは平成10年に生徒会の提案で決められた。多様な教科をバランスよく学ぶ「生涯学習」の立場、すべて男女共修の「ジェンダーフリー」の立場をとりながら、国際化と情報化への対応や個性本位の進路指導を教育理念の柱とする。
「教科学習」「進路指導」「生活指導」「校外学習」等のすべては、2年ごとにきざむ3段階でゆとりを持って積み上げられており、保健体育科・音楽科・美術科・技術家庭科の充実度は大きな特色の一つとなっている。体育も家庭科も男女混合で行われており、体格差、得意不得意の差があるからこそ助け合いの大切さを学べるという考えのもと、社会性が養われている。部活動も盛んであり、広大な敷地と、その中にある多様な施設を使って、10の運動部と8つの学芸部が活動している。顧問の他にコーチ制度も設けられ、専門的な技術指導が受けられる体制も整っている。
神奈川大学への推薦入試制度はⅠ期とⅡ期の二度あり、Ⅱ期では、ある程度の私大入試が終わってからの出願になる。一人ひとりの可能性を見逃さないきめ細やかな指導による6年間で、大学合格実績や現役での合格率も、年々向上している。学校にある「くすのき」はシンボル的存在であり、合格祈願のために「くすのき」の前で手を合わせる受験生も多い。