中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

神奈川大学附属中学校

2015年08月掲載

神奈川大学附属中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.難しい問題を解くことよりも、小学校で習ったことをしっかり身につけよう。

インタビュー1/3

思考力を重視した問題づくりが目標

この問題の出題意図から教えてください。

重永先生 入試問題を作成する時に私たちが大切にしていることは、小学校で習ったことが身についているかを測れる問題をつくるということです。中学校に入ると算数から数学に変わります。その時に小学校で習ったことを使えないと困るので、思考力を重視した問題づくりを目指しています。そのため難問奇問といわれる問題、そのように見える問題は出しません。

この問題は、小学校で習う倍数、約数の考え方などを応用してつくりました。説明文を読み、状況を理解し、論理立てて解答を導き出す力を問える問題になったと思います。

数学科/重永浩二先生

数学科/重永浩二先生

結論を満たす条件を考える問題になった

どんなところから思いついたのですか。

重永先生 この問題は3つの小問の(2)として出題しました、(1)と(3)は条件を与えましたが、そういう問題だけではバリエーションが限られてしまうので、(2)は結論を出して、その結論を満たす条件を考えさせる問題にしたいと思いました。私は問題文だけの問題にはしたくない主義。問題文の中の子の気持ちになって遊んでもらいたいと思い、絵を描きました。イメージはボウリングで投げたボールが戻ってくる機械です。
大問の正答率は合格者で66.5%、全体で57.5%でした。

2、3、5の倍数というところと、1から50というところがピタリとはまった問題だと思います。

重永先生 50個は、論理的に考えられなかったとしても数え上げられる個数だと思います。数え上げられるというのも子どもたちの力。問題に臨む気持ちや力を測るにはちょうどいい数だったと思います。

毎年、入試問題を分析し検討して精度を高めている

毎年のように入試問題に工夫が見られますが、数学科が取り組んできたことをお話いただけますか。

重永先生 本校を志望する受験生が増えている中で、勉強してきた力を問える問題にしなければいけないと考えています。毎年、これでいいと思える問題を出題していますが、採点してみると、合格者と不合格者の得点差が開かない問題が出てきてしまいます。そこで、入試が終わると、教科会の中でA日程、B日程、C日程の大問、小問の正答率、合格者、不合格者の得点率などを調べて、分析をしています。

合格者、不合格者の間で差がつかなかった問題、全体的に正答率が低い問題は出さなくていいという考え方のもと、5、6年間、検討しながら問題の精度を高めていった結果、神奈川大学附属中学校の数学科が求めている力を問える、メッセージ性のある入試問題になってきたのではないかと思います。

神奈川大学創立者 米田吉盛先生

神奈川大学創立者 米田吉盛先生

この問題は選抜の材料になった

重永先生 2015年入試の問題の中で、もっとも合格者と不合格者の間で得点差が開いた問題は大問5(グラフの問題)でした。グラフの問題は毎年出していて、今年に限らず、得点差がつく問題となっています。小学校ではグラフに馴染む機会が少ないのかもしれませんが、グラフが示していることをしっかり読み取る力をつけてほしいです。それさえできれば、あとは比などを使う単純な計算です。

この問題は、選抜の材料になり得ましたか。

重永先生 はい。(1)は多くの受験生ができていましたが、(2)は得点差が出ました。3人の並び方はできているのですが、Aさんが何個のボールを捕ることができたかというところで、合格者と不合格者の差がつきました。計算は合っていましたが、重なっている1個分を抜き忘れてしまった。どこかで計算ミスをしてしまった。そういう受験生が多かったです。

バランスや解きやすさも考慮

最後の問題ということも影響したのでしょうか。

重永先生 50分で最後の問題まで取り組めること、バランスよく出題することも、問題をつくる上で重視していることです。試験監督をした先生からは「最後まで取り組んでいた」と聞いています。時間がない、緊張している、そんなことから計算でミスをした子もいたかもしれませんが、すべてのことから、力を測れる問題になったと考えています。

実は、この問題が含まれる大問6は一度ボツになったのですが、大問1から大問5のバランスを整えるうちに、やはり戻したほうがいいという声が多くあがり、復活しました。問題を構成した時に、全体的に解きやすく、力を測れる問題になるよう整えた結果、大問6が復活し、学力差を判断する材料になり得る問題となって嬉しく思っています。

65〜70%取れば合格できる問題を出題

市川先生 今まで65%得点できれば合格できると言ってきましたが、難度が上がって得点率が低くなってしまったため、再び今年の入試から全教科で合格者の得点率が65〜70%になるよう、意識して問題づくりを行っています。

重永先生 そうですね。平均点が下がると本当の力を測ることができない可能性がありますから。

この問題を記述問題にする選択肢もあったと思いますが。

重永先生 本校では途中経過を見る問題は出していません。その代わりに大問を細かく分けて、途中まで考えられたことも評価しています。

3回入試を行っていますが、相違点はありますか。

重永先生 以前はC日程が国語、算数の2教科入試で、各60分間と試験時間も10分長かったため、A、Bと比べるとやや問題数が多かったのですが、今はA、B、C、すべての日程が同じレベル、ボリュームで行っています。

広報部次長/市川英夫先生

広報部次長/市川英夫先生

算数への取り組み方を測るには整数の問題が適している

重永先生 大問1は計算問題ですが、大問2以降は考え方が重なる問題は出していません。この問題では整数を取り上げました。小学生は、整数について学校でしっかり学んでいるわけではありませんが、普段から使っています。算数に対してどのような取り組みをしてきたかを測るには、整数の問題が適していると思っています。

この問題で、受験生が頭を悩ませたとしたら、条件が多いことだけだと思います。

重永先生 作り手の私たちも、そこを一番悩みました。これ以上省くと情報が間違って伝わる可能性があります。そうならないように言葉を省いたり加えたりしながら、このようになりました。読むだけで時間がかかったかもしれません。図の掲載には、少しでもイメージしやすくしてあげたいという思いも込めています。

インタビュー1/3

神奈川大学附属中学校
神奈川大学附属中学校「質実剛健」「積極進取」「中正堅実」を建学の精神に掲げ、真面目で、サバイバル能力があり、何事も進んで行う人間性豊かで有能な人物の育成に努める。「足を大地に手を大空に」という学校のモットーは平成10年に生徒会の提案で決められた。多様な教科をバランスよく学ぶ「生涯学習」の立場、すべて男女共修の「ジェンダーフリー」の立場をとりながら、国際化と情報化への対応や個性本位の進路指導を教育理念の柱とする。
「教科学習」「進路指導」「生活指導」「校外学習」等のすべては、2年ごとにきざむ3段階でゆとりを持って積み上げられており、保健体育科・音楽科・美術科・技術家庭科の充実度は大きな特色の一つとなっている。体育も家庭科も男女混合で行われており、体格差、得意不得意の差があるからこそ助け合いの大切さを学べるという考えのもと、社会性が養われている。部活動も盛んであり、広大な敷地と、その中にある多様な施設を使って、10の運動部と8つの学芸部が活動している。顧問の他にコーチ制度も設けられ、専門的な技術指導が受けられる体制も整っている。
神奈川大学への推薦入試制度はⅠ期とⅡ期の二度あり、Ⅱ期では、ある程度の私大入試が終わってからの出願になる。一人ひとりの可能性を見逃さないきめ細やかな指導による6年間で、大学合格実績や現役での合格率も、年々向上している。学校にある「くすのき」はシンボル的存在であり、合格祈願のために「くすのき」の前で手を合わせる受験生も多い。