シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

品川女子学院中等部

2015年05月掲載

品川女子学院中等部の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.28プロジェクトが行動指針。教科が目指すところも、社会で役立つ力だ。

インタビュー3/3

学校生活でも試行錯誤をさせていく

斉藤先生 この問題を最初に見た時、どの分野に入るのだろうと思いました。まれではありますが、あみだくじの問題が出ているということは聞いたことがあったので、誰でも取り組めて、筋道立てて考えていける問題だと思いました。

本当に1本、1本、確かめながら、ゴールまでたどりつかなければなりません。その力は、数学のハードルが高めの問題で必要とされる能力なので、最後まであきらめずに、きちんとミスなく論理を構成できる力を見る問題としては、いい問題だと思いました。

数学に限らず、学校の方針も一致しています。入学式で必ず校長が言うのは、「うちの学校は子どもたちにたくさん失敗をさせます。人間関係も失敗をさけるのではなくて、ぶつかりあいながら関係を築いていく」ということ。試行錯誤をさせていく学校なので、算数の入試問題ではありますが、そういうところを反映している問題だと思います。

進路進学指導部長/斉藤浩司先生

進路進学指導部長/斉藤浩司先生

ひらめかせるために、前に習ったことを補う

田中先生 大学入試が迫っていない時期に数学が嫌いになってしまうというのは十分あり得ます。前に習ったことを、基礎的な知識として忘れてしまっているがために、新しい問題に手をつけられないことが多いのです。そこで問題を解く時に、前に習ったことを補うよう、意識しています。知識がなければアイデアは出てこないと思っていますので、苦手な生徒には知識を補い、ひらめかせてあげるということを意識して授業を行っています。

数Ⅰの2次関数が出来に差が出る分岐点

小中のつながりの部分で苦労されていることはありますか。

斉藤先生 中学校の内容は幾何もそこまで難しくはありません。代数もトレーニングを積めばなんとかなります。出来、不出来が分かれ始めるのは対象物が動き始めるところ。具体的には数Iの2次関数あたりです。本校では中3で教えているので、習熟度別授業を入れて、確認テストみたいなものを毎時間やったり、講習をしたりして、各学年で苦手を作らないよう対応しています。

わからない生徒は、質問に来てくれるとそこで拾い上げられます。1対1だと、わからないところまで戻れますからね。

品川女子学院中等部

品川女子学院中等部

文化祭を通して社会のしくみを体験させる

品川女子学院といえば、文化祭での「起業体験プログラム」が有名ですよね。

斉藤先生 そうですね。「28プロジェクト」で社会のしくみを体験させることを目指しています。文化祭も、大変よい機会の一つになっています。「起業体験プログラム」といって、高等部の生徒は模擬店を行うために、クラスで株式会社を立ち上げ、社長を決めて、事業計画の提出、会社の登記に始まり、プレゼンテーション、文化祭当日の販売を経て、最後は株主総会をして会社解散するところまでを体験します。株主総会の前には、決算報告書を作成し、報告します。説明会で「高等部ではこんなことをやります」と言うと、参加者の保護者が「すごいですね」と言ってくれます。

28プロジェクトの価値観が根ざした教育ができている

なぜ、28歳なのですか。

斉藤先生 28歳は、女子にとって人生のターニングポイントだからです。大学、あるいは大学院を卒業し、働き始めてまわりが見えてくる年代です。「卒業から10年後あたりに活躍できるように」というのを共通の価値観とし、社会への扉をいろいろなところで開いていきます。いろいろな教科、あるいは場面でフレキシブルに特別講座を行っています。中3が総合学習として取り組んでいる「企業とのコラボレーション」もその一つです。教科学習も含めて、すべてで「28プロジェクト」の価値観に根ざした教育ができている、それが品川女子学院です。

数学科でも、その価値観をベースに授業を行っているということですね。

斉藤先生 そうですね。計算ができればいい、答えを出せればいい、覚えればいいというものではなくて、数学という教科が担っている考える力、組み立てる力が身につくように工夫しています。こうすれば身につくという方法はなかなか見つかりませんが、数学科の教員、全員で考えて、授業を行っています。

田中先生 ですからセンター試験が変わるのはむしろありがたいのです。

斉藤先生 本校の生徒は、社会で役立つ力が備わるように育てられていると思うので、「逆に有利かもね」という話をしています。

品川女子学院中等部

品川女子学院中等部

卒業生が、取り組みが間違いではないことを教えてくれる

斉藤先生 卒業生が遊びに来て、大学の様子を話してくれるのですが、「まわりにいる男子が子どもに見えてしょうがない」というようなことを言っています。「高校時代、自分は普通だと思っていたけれど、外へ出てみると十分能動的で、積極性があって、きちんと取り組めている。人が動くのを待っていられないから自分でやる」というような話を聞くと、本校オリジナルの取り組みは間違っていないと思えます。大学でも能動的に取り組んでいる子が多いので、積極性、主体性は育てられているのではないかと思っています。

インタビュー3/3

品川女子学院中等部
品川女子学院中等部1925(大正14)年に荏原女子技芸伝習所が開設。戦後、品川中学校・高等学校となる。1990(平成2)年には制服を新しくし、1991年に現校名に。2004年には高校募集を停止し、完全中高一貫体制に移行。受験にも十分対応できるシステムで学力の向上をはかる。創立100周年を迎える2025年には新校舎が完成する。
新校舎は学年ごとにフロアを分けており、廊下が広く、さまざまな活動ができる。
「世界をこころに、能動的に人生を創る日本女性の教養を高め、才能を伸ばし、夢を育てます」というミッションのもと、社会の問題を発見し、多様な人を巻き込みながら解決に向けて一歩踏み出す「起業マインド」を育てる。そして、「28歳になった時に社会で活躍できる女性を育てる」という「28プロジェクト」に取り組んでいる。総合学習での企業訪問や起業体験は、学習への動機付けともなっている。平日の補習・講習と年4回の担任面談で、きめ細かい進路指導をおこなっている。
コミュニケーション能力の育成や、国際社会で活躍するための基礎となる英語能力の育成に力を入れ、英検指導もおこなう。完全中高一貫体制で、独自のシラバスに沿って高2までに無理なく大学進学に対応できる学力を身につけ、高3で進路に応じた選択科目や演習によって実践的学力を養成する。中学では基礎力を鍛えるため、補習や講習もきめ細かい。高校生は20:00まで学校で自習が可能。
国際化教育プログラムも充実しており、海外留学生のうけ入れ、オーストラリア、イギリス、ニュージーランドの姉妹校への留学、中3の修学旅行(ニュージーランド)などで「生きた英語」「異文化」を学ぶ。宿泊行事、合唱祭、文化祭、体育祭、芸術鑑賞、校外学習など行事も多種多彩。茶道・華道・着付けの指導もある。クラブは38あり、バトン、ダンス、吹奏楽部などが部員が多い。利用者の多い図書館の蔵書は42,000冊。