出題校にインタビュー!
品川女子学院中等部
2015年05月掲載
品川女子学院中等部の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.起きている現象に対して、なぜそうなっているのかを納得するまで追究しよう!
インタビュー1/3
身近な題材で発見してほしかった
この問題の出題意図からお話いただけますか。
田中先生 あみだくじという身近な題材を、違う角度から切り込んだ問題です。問題の条件を読み取り、試行錯誤を繰り返しながら、条件に合う答えにたどり着いてくれればいいと思って出題しました。数学的には奥が深くて難しい領域ですが、そこまでは要求していません。問題を解きながら、①の問題は5本ですんだのに、②は10本必要という事実を発見し、驚いたりおもしろいと感じてくれたりすればいいという気持ちで作問しました。
②では、横棒を4本引くと1が一番右(目的の場所)に来ます。ただ、2、3、4、5も、その横棒を使えるため、2が目的の場所にたどりつくために必要な横棒は3本、3は2本、4は1本ですむため、4本+3本+2本+1本で、合計10本になります。そのことにもし気づく受験生がいれば、それはそれでいいのですが、この問題に費やせる時間はわずかです。しかもその前にたくさんの小問を解いていますので、受験生にそこまでの余裕はなかったのではないかと推測しています。

数学科/田中秀幸先生
学力に関係なく手をつけられるところがこの問題の魅力
どのように思いついたのですか。
田中先生 もちろんいろいろな問題を解ける基礎力は重要だと思っていますが、それは大問2と大問3に任せて、大問4、5、6の問題は、その場で与えられた条件を自分で把握して、問題を解決していく力を見られる問題にしたい。そこでどんな問題がいいかとずっと考えていてひらめきました。私がおもしろいと思ったのは、この問題はどのような学力であっても手をつけることができるところです。
その時はすでにこの形だったのですか。
田中先生 ①だけでした。①だけだと配点とのつり合いが取れないのではという意見があり②を加えた出題となりました。その結果、より面白くなったと思っています。
選抜の意味のある問題になった
田中先生 正答率はよかったです。①の問題は、合格者の約8割ができていました。不合格者は6割弱でした。②の問題は、合格者の5割弱ができていました。不合格者は3割弱でした。どちらの問題も合格者と不合格者の間に2割の差がつく、選抜の意味のある問題になりました。
この問題のすごいところは、縦棒しか引いていないところ。考え方をデモンストレーションするような、新しい試みの問題だと思います。
田中先生 そういう評価をいただけるなら出題した甲斐がありました。
まったく手をつけていない解答もありましたか。
斉藤先生 線を引いていない受験生は、ほぼいませんでした。あみだくじのしくみがわかっていなかったり、1本線を引くことにより動きがわからなくなってしまったり……。

品川女子学院中等部 校舎
計算で簡単に出るような問題ではない
斉藤先生 ①②両方できている子は、②が対称なきれいな形になっている子が多かったです。②は真ん中で交わるんですよね。でも3のすでにできている交点は通ることができないので、少し横を通ります。それが何通りもできるのです。
難しいですよね。どこに線を引くかにより違ってくるので。
斉藤先生 そうですね。
②の解答はどのくらいあるのですか。
田中先生 62通りあります。ただ、簡単に出るしろものではありません。ですから採点も、一つひとつの解答をたどって確かめました。
斉藤先生 採点していくうちに、子どもたちの解答は大体3、4パターンに分類されていくのがわかりました。
○か×かの採点ですか。
斉藤先生 (目的の場所に)たどりつけなければ、加点しないかたちで採点しました。本数が多いものは減点しています。斜め線は、隣り合う線をつないでいるので、許容したと思います。
算数の力とは知識を活用するアイデア
この問題は、算数のどのような力を問える問題なのでしょうか。
田中先生 難しいですね。「算数の力とは一体なにか」というところから話さなければなりません。ですから、的を射たこたえになるかどうかわかりませんが、私が思うに、まずは現状をきちんと把握し、その上で、問題になっていることを解決するために、もっている知識を総動員する。ただ、その知識を役に立つものにするためにはアイデアが必要です。それが算数の力だと思っています。この問題ではそこまで問うことはできません。発見して、不思議だな、おもしろいなと思ってもらえることが一番の狙いです。
もう一つ思ってほしかったのは、答えが一通りではないことです。②はいくつもあります。問題を解きながら、それを実感してもらえればいいと思いました。探究心を持ち続けてほしいのです。起きている現象に対して、なぜそうなっているのだろうと思ってほしい。単なる知識ではなくて、自分で納得できるように追究していってほしいと思っています。

品川女子学院中等部 制服
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