出題校にインタビュー!
神奈川学園中学校
2014年09月掲載
神奈川学園中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.神奈川学園には「これだけは生徒にしっかり伝えたい」という意図がある。
インタビュー2/3
中1から自分なりにノートをまとめる指導を実施
書かせる問題を増やして、生徒さんの力に変化は見えますか。
小川先生 私たちは入学してきた生徒に対して、どういう課題があるかを見極め、6年間、どう指導していくかを考えるので、つい足りないところに目が行ってしまいがちなのですが、書くことを重視しているというメッセージは伝わっていると思います。
社会科では「まとめノート」「オリジナルノート」という呼称で、教科書や資料集などを活用しながら、自分の作品としてノートを作りあげるという指導を、中1からやっています。生徒は意欲的に取り組んでいて、社会科のスタイルとして定着してきていると思います。
板書をただ写すのではなく、自分なりにまとめたら、1年間の学びが凝縮されたノートになりそうですね。
小川先生 子どもたちに任せておくと、言葉だけしか書かない、関係を意識しないなどということが起こり得るので、熱心な先生は毎週、生徒とやりとりをして、「授業中にしゃべっていることをメモしなさい」「ここの資料のこういうところを見なさい」など、その子その子に必要なアドバイスを書いた付箋を「まとめノート」にペタペタ貼って指導しています。
神奈川学園中学校/木村先生・小川先生
社会科の学びを定着させるために始めた取り組み
個々の気づきにより、ノートの中身が変わりますね。
小川先生 「オリジナルノート」には、そのような意図が込められていると思います。
生徒は家に帰ってからまとめるのですか。
小川先生 そうです。「社会科の復習をどのようにすればいいか、わからない」という声から始まりました。ただ、授業の内容を見直すのではなくて、いろいろな情報を一つのノートの中に集約させて、表現していくということを、毎週、あるいは単元が終わるごとにまとめることが社会科の復習になるという考え方で取り組んでいます。
木村先生 社会科では「こちらが説明したことまでノートにとってね」と言っています。
授業以外のところで、やり方をつかむ生徒もいる
木村先生 中3と高1年で宿泊研修行事を実施します。その時に、現地のガイドの話を聞いて、メモを取ることが重要になります。あるいは本校は自治活動が盛んで、委員になると担任から「委員会ノート」を渡されます。そこに人が話したことを的確に読み取り、記録します。このような機会も生かして聞き書きする力を磨いていけば、相互作用で力を伸ばすことができます。そうすると高校になって授業の進度が速くなっても対応できますし、聞く力そのものも高まっていくのではないかという、希望があります。
たとえば社会のノートを取ることが苦手な子が委員会に入って、上級生のいろいろな意見を自分なりにノートをとるようになりました。フィールドワークでメモを取る方法を学んだことで、「少しやり方がわかった」という子がいます。どこかできっかけをつかんで、それが様々な活動に生かされていくということが見られます。
神奈川学園中学校 校舎
板書を移すマシンにしたくない。判断力を磨いてほしい
個人差は大きいですか。
小川先生 そうですね。本校では生徒に授業アンケートを取り、分析して、教科会議を行います。そこで中学生から多く出るのが「もっと黒板に書いてほしい」という意見。それはよくわかるのですが、それだけだと板書を移すマシンになってしまい、大事な内容かどうか判断する力というのが育たないですよね。こちらが育てたい力があるので、生徒の気持ちを聞きつつもやり通しました。
その取り組みはいつから始めたのですか。
小川先生 私が本校に赴任した時にはやっていました。一人の教員が始めたことが、全体の取り組みに広がったのですが、17、18年にはなると思います。
言葉の使い方などは、先生方の間で相談しているのですか。
木村先生 相談はしていませんが、高1までの4年間で、どういう時期にどういう説明の言葉を使うかは、発達段階を基準に、個々に考えているのではないでしょうか。
小川先生 一つの言葉や概念を、奥行きをもって理解してもらうという意識は、中3の公民あたりから意識していて、このことをこういうふうにとらえている人もいるし、こういうふうにとらえている人もいるという話を口頭で生徒に伝えて、考えさせるようにしています。
中1で世界を扱うことで社会科への興味がふくらむ
小川先生 1つ特徴的なのは、中1で世界を扱っていることです。子どもたちは、世界のことはあまり知らないので、興味を持って聞いてくれます。特に歴史を学ぶことで、「社会科っておもしろい」「ただの暗記科目ではないんだ」と思ってくれます。そして物語的にノートに書き込む子がいたり、当時の人の気持ちを考えてノートに書く子がいたり。内容に興味を持ち、それを自分なりに表現しようとする体験を中1ですることで、中2以降の学びがスムーズになり、発達段階に応じて、社会の学び方を総合的に高めていくということができているような気がします。
社会科/小川輝光先生
学びの接続を大事に、毎週話し合い、内容を調整する
地理と公民など、分野が横断している場合は、先生同士で話し合いながら進めていくのですか。
木村先生 学年の接続や重なりなどは意識しています。基本は置きつつも、その時々の生徒の興味・関心などに合わせて、授業の内容や教材なども毎年のように改編しています。
たとえば今年の中3は、中2での学びがポツダム宣言の受諾までで、太平洋戦争がどのような戦争だったのかを深く掘り下げられなかったという反省がありました。カリキュラム上では中3から地理の地形を学ぶことになっていますが、戦争というものを、もう一度テーマ学習としてとらえ直したほうがいい。(中2の時に)原爆のことも十分深められなかったので、原爆のこと、朝鮮半島とのかかわり、植民地支配とはどのようなものだったのか。そのようなことにテーマ的に取り組み、意見を書かせたり、映像を見せたりと、複合的な方法でおさらいをして歴史は一旦終わりにし、地理に入っていく。そういう接続性を大事にしています。そして今年度(中3)は公民分野が後半に来るので、そこで高1の現代社会と世界を見る視点に役立つ、なにか種まきはできないかと考えています。
教員の世代交代で、新たな発見がある
先生方は持ち上がりなのですか。
木村先生 社会科は学年の中に核となる教員がだいたいいますので、生徒の特徴や、授業のつながりを継続的に見ていくことがしやすい環境です。それを生かして、本校で大事にしている「戦争と平和」の学習も、今どういうことをやっているかを整理し始めていて、徐々に系統的に、全員に学ばせる内容としてまとめる予定です。
小川先生 我々教員も入れ替わりが進んでいて、本校の社会科を作ってきた先生が退職され、多くが30代以下の若手です。個々に「前の学年がこういうことをやってきたみたいだ」ということを耳に挟んでも、次につながらないので、本校が大事にしてきたことを、改めて意識し、教科会議で共有できるところは共有していこうとしています。
相当お忙しいはずですが、楽しそうですね。
木村先生(笑)そうなんです。知っていたつもりでも、他の先生が蓄積してきたことや、教材などを見て、こういうやり方があるんだと、改めて考えさせられることがあります。
小川先生 生徒にも判断してもらうことも大事にしています。今のニュースをどう教材化するか。それを柔軟に、組織として考えていけるところが私学の特徴です。この学校が大事にしていることを共有できれば、議論も深まるので、そういう土台づくりを、教員はもちろん、生徒の声も反映させるなど、みんなでやり遂げる環境になっているので、やりがいを感じられるのだと思います。
神奈川学園中学校
インタビュー2/3