シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

吉祥女子中学校

2014年06月掲載

吉祥女子中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.考えて正解にたどり着ける力を見極めたい

インタビュー2/3

地理学習は資料をヒントに想像力をはたらかせよう

岡田先生 問題は、地理・歴史・公民の各分野からそれぞれ1題ずつ、計3題の大問構成です。各大問はあるテーマに沿って作られていますが、設問はそのテーマに限定せず、幅広い分野から出題しています。

地理分野は、日本各地の自然や産業、世界地理の基本理解、地図やグラフなどの読み取りを中心に出題しています。資料の活用が地理学習の基本ですから、地名や地理用語だけを丸暗記するのではなく、様々な資料をヒントに想像力をはたらかせて思考してほしいと思います。歴史分野は歴史の流れや因果関係を、公民分野は現代社会で起こっている諸問題の背後にある因果関係を読み取る力をそれぞれ重視しています。

子どもは往々にして「知っていること」と「資料から読み取れるもの」を混ぜてしまいがちですが、貴校の問題は資料から客観的に読み取る力を試しているのがわかります。

吉祥女子中学校 先生

吉祥女子中学校 先生

選択問題の文章に着眼点など学校のメッセージを込めて出題

岡田先生 入試問題は、1行記述問題に限らず選択問題などでも「考えて正解にたどり着く」力を見極めたいと思っています。これは大学受験にも通じる力です。求めるレベルは違いますが、中学受験においても学習の姿勢、考え方は共通であるととらえています。

選択問題といっても、正確な理解や詳細な知識を問う正誤判定問題や、出来事が起こった順番に並べかえる問題などパターンは多様です。地理分野ではセンター試験でもよくある組み合わせの6択問題を出題しています。

文章選択問題は推敲の手間が大変かかります。作問は単純記述の方が簡単ですが、単に用語を聞くのではおもしろくありません。選択肢の文章は、どんなことに着目してほしいかというこちらのメッセージを込めて出題しています。

歴史の文章選択肢は因果関係や歴史の流れを重視していることがわかります。地理も「なぜそうなるのか」を重視していらっしゃるし、公民は今の世の中で起きていることを考えさせる選択肢になっていますね。

用語は“知っているだけ”では書けない

岡田先生 用語を書かせる問題は、得てしてこちらの予想とまったく異なる結果になることがあります。この用語は知っているだろう、参考書にも載っているから書けるだろうと思って出すと、案外書けなかったりします。今年の第3回入試で「第三セクター」や「生産年齢(人口)」を書かせる問題を出しましたが、驚くほどできませんでした。過疎化が進む地域の対応策として、また、これから生産年齢人口がどんどん減少していくことから、知っておいてほしい用語だったのですが、それはこちらが読み違えたと反省しています。

「第三セクター」は塾では取り上げますが、教科書には触れられていないので用語として定着していないのではないかと思います。ニュースなどで聞いたことはあるけれど、きちんとした意味とつながっていなかったのではないでしょうか。おそらく、正解を見たとき「これが第三セクターか」と思った受験生も多かったのではないかと思います。

吉祥女子中学校 校舎

吉祥女子中学校 校舎

スーパーマーケットで地理の勉強ができる

岡田先生 地理を教える立場としては、日々のニュースや新聞を見聞きして世の中の動きに敏感でいてほしいですね。高校生にも言っているのですが、スーパーマーケットに行って商品の原産国名の表示を見てみましょう。エビはタイやベトナム、インドネシアなど東南アジア産が、タコはモーリタニア産が、サーモンはチリ産やノルウェー産が多いということがわかるでしょう。オレンジやグレープフルーツが地中海性気候の国から輸入されていることも、実際に見ることで腑に落ちると思います。地理の学習は日々の生活の中での発見が意外に大きいのです。

本校は、創立者が地理学者ということもあって「知的探究心」を大切にする風土があります。「なぜだろう?」という疑問を持つには、いろいろなことに興味を持つことです。机上の学習だけでなく、スーパーマーケットのような私たちの実生活が見えるところへ足を運んでみてほしいと思います。

インタビュー2/3

吉祥女子中学校
吉祥女子中学校1938年(昭和13)年に、地理学者の守屋荒美雄が創立。2007年(平成19)年より高校募集を停止し、完全中高一貫校となる。
「教育とは捧げる心、思いやる心、微笑む心」という設立者の言葉を心におき、「社会に貢献する自立した女性の育成」を目指している。なでしこの花を型どった校章には、「清く、美しく、強く、正しく」育つようにと願いが込められている。
教科指導では、知的好奇心に訴えかける学習指導を展開。国語の調べ学習、社会科のディスカッション、保健体育科での「性とは生である」の理念に基づく研究発表など、自分を表現する機会がたくさんある。理科の実験レポートでは、レポート作成の基礎から完成まで丁寧に指導。理系・医学部への高い進学実績へと結びついている。英語は中学1年~高校1年で『ニュー・トレジャー』Stage1~3、数学は『体系数学』などハイレベルなテキストを使用。高校3年では、受験対策学習に力を入れ、高い進学実績を上げている。高校2年生・3年生では、文系・理系・芸術系のクラス編成になる。2012年より、国公立大学志望者の増加に合わせて、高校2年生までは文系を国公立・私立に分けず、高校3年生で分けるようにした。
アメリカ、オーストラリア、カナダ、中国、韓国に姉妹校があり、語学体験で訪問するほか、1年間の留学制度もある。中学の音楽ではバイオリンが必修となっており、課外授業ではピアノや日本舞踊などが学べる。クラブは、弓道やサッカー、ソフトボール、テニス、陸上などが活躍。ボイスレスパフォーマンスは声のない演劇を行う珍しいクラブ。
図書館の蔵書数は6万8000冊で、CDやDVDなども充実。八王子には、運動会や部、クラブの練習や合宿で利用するキャンパスもある。