シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

吉祥女子中学校

2014年06月掲載

吉祥女子中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.持っている知識と資料の読み取りを組み合わせて考える問題

インタビュー1/3

もう一段階、思考できるかどうか

岡田先生 この問題を解くにあたっては季節風の知識が身についていることが前提条件ですが、ねらいとしては、地図から情報を読み取り、もう一段階思考するところにあります。ごく近い島同士でありながら、なぜ降水量が2倍近くも違うのか。持っている知識と与えられた資料から読み取った情報を組み合わせて思考できる力を問いました。

貴校の入試問題は、知識をそのまま聞く一問一答式のような問題ではなく、一歩進めて、提示された資料から読み取ったことと持っている知識を組み合わせる問題が多いと思います。特に地理分野に関しては、取り上げる地図やグラフなどに工夫が見られます。

岡田先生 センター試験の地理問題のおよそ8割は図表の読み取りですが、中学受験生にも身につけてほしい力は同じだと思っています。地図やグラフ、表の読み取りは地理学習の基本ですし、丸暗記した用語を単にアウトプットさせる問題は真の実力を計ることにはならないと考えています。

提示する資料は初見のものが多いと感じます。この問題も、屋久島と種子島の降水量を比較したことがある受験生はおそらく皆無だったのではないでしょうか。ただ、初見といってもまるで手が出ないわけではなく、雨が降る仕組みがわかっていれば取り組める問題だと思います。

社会/岡田 英之先生

社会/岡田 英之先生

地図から読み取ったことを活用できなかった

岡田先生 季節風と標高差の両方を取り上げた答案は半分くらいだったでしょうか。「台風がやってくるから」など、「台風」や「南東の季節風」というところからアプローチしようした形跡は見られましたが、「地図から読み取れることをふまえて」という記述の条件を満たせませんでした。

この地図には季節風の向きも、台風の進路も載っていませんから、「標高」という地形の特徴に着目してもらいたかったですね。屋久島が山がちで種子島が平坦であることは読み取れても、対照的な地形と季節風が降水量とどのように関係しているかを結びつけるのが難しかったようです。

この問題を解くカギとなる「山地と降水量の関係」は、気候の単元で必ず学ぶ内容です。そのわかりやすい例が「冬の季節風と越後山脈」です。この関係を屋久島にも当てはめて考えられるかというと、小6の段階ではなかなか難しい。子どもは「具体的な事柄から一般化する」ことが苦手ですから、この問題は受験生の地力がよくわかる問題ではなかったかと思います。

記述問題は自分の言葉で説明できること

岡田先生 印象としては、概ね自分の言葉で説明しようとしていましたし、的外れの答案もあまり見られませんでした。

地理の1行記述には資料の読み取りの要素を含むので、「自分の言葉で説明する」ことが求められます。屋久島の「宮之浦岳の標高1936m」という情報は地図から読み取れると思います。「標高」という言葉を使わなくても、屋久島は「山が高い」「山がち」「山が多い」というように表現できればよしとしました。

資料の読み取りは他と違うところに注目し、「なぜ違うのか?」と疑問を持つことです。疑問を掘り下げていくことで知識が数珠つなぎのようにつながっていくと思います。

吉祥女子中学校 校舎

吉祥女子中学校 校舎

1行記述は客観性を求める

岡田先生 本校の社会科の問題は、自分の言葉で説明する記述問題を出題しています。その際に本校が求めているのが「客観性」です。こちらが提示した資料から解答の根拠を読み取る力を試す問題を出題しています。1行記述の問題は、正誤か判断できる明確な根拠、確たる証拠があるものを取り上げるようにしています。例えば「環境問題の解決策」のように、いくつも答えが出るような問題や、個人の見解を答える問題は答えが1つではないので、できるだけ避けています。

また「1行記述」という形式については、35分という限られた入試時間の中で受験生が勉強してきたことを発揮するには、現段階ではベストではないかと考えます。

インタビュー1/3

吉祥女子中学校
吉祥女子中学校1938年(昭和13)年に、地理学者の守屋荒美雄が創立。2007年(平成19)年より高校募集を停止し、完全中高一貫校となる。
「教育とは捧げる心、思いやる心、微笑む心」という設立者の言葉を心におき、「社会に貢献する自立した女性の育成」を目指している。なでしこの花を型どった校章には、「清く、美しく、強く、正しく」育つようにと願いが込められている。
教科指導では、知的好奇心に訴えかける学習指導を展開。国語の調べ学習、社会科のディスカッション、保健体育科での「性とは生である」の理念に基づく研究発表など、自分を表現する機会がたくさんある。理科の実験レポートでは、レポート作成の基礎から完成まで丁寧に指導。理系・医学部への高い進学実績へと結びついている。英語は中学1年~高校1年で『ニュー・トレジャー』Stage1~3、数学は『体系数学』などハイレベルなテキストを使用。高校3年では、受験対策学習に力を入れ、高い進学実績を上げている。高校2年生・3年生では、文系・理系・芸術系のクラス編成になる。2012年より、国公立大学志望者の増加に合わせて、高校2年生までは文系を国公立・私立に分けず、高校3年生で分けるようにした。
アメリカ、オーストラリア、カナダ、中国、韓国に姉妹校があり、語学体験で訪問するほか、1年間の留学制度もある。中学の音楽ではバイオリンが必修となっており、課外授業ではピアノや日本舞踊などが学べる。クラブは、弓道やサッカー、ソフトボール、テニス、陸上などが活躍。ボイスレスパフォーマンスは声のない演劇を行う珍しいクラブ。
図書館の蔵書数は6万8000冊で、CDやDVDなども充実。八王子には、運動会や部、クラブの練習や合宿で利用するキャンパスもある。