シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

雙葉中学校

2017年02月掲載

雙葉中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.多様性のある教育により豊かな感性を育む。それが雙葉で学ぶ魅力。

インタビュー3/3

生きる力をつける6年間でありたい

生徒にはどのような力を身につけさせたいとお考えですか。

大塚先生 やはり科学の基礎をしっかり学び、論理的な思考力をつけさせたいと思っています。また自ら検証して、その実験結果から自分の考えを持つことができるようにとも思っています。これは文系、理系の進路選択にかかわらず、今、このような情報過多の時代において一層重要になることだと思います。
大隅教授がノーベル賞のレクチャー(ノーベル賞受賞者記念講演)で「科学を文化として育む社会になってほしい」と話されていたのですが、それがとても印象に残りました。考えてみますと、雙葉では「大学受験に必要だから」ということではなく、「生きていく力となってほしい」と願って日々教えています。理科に限らず、どの科目も大切に考えています。ご存じのように宗教は6年間あります。体育も、実技科目として受験生に課していた時代もありました。それほど体育を大事に考えておりますし、元気なお子さんが入ってくるのはそのせいかなと思っております。音楽、美術、書道の芸術科目も、人間性を豊かに成長させる上でとても大切な科目ですから、多岐に渡り教えております。今、必要とされている力は、理科的な力に限定されることなく、幅広い学力をつけることだと思います。

雙葉中学校/聖母子像

雙葉中学校/聖母子像

知識と知識が結びついた時の生徒の反応が楽しい

大塚先生 東北地方の地震の後、中3で地震について学習した時に次のような話をしました。百人一首の「契りきな かたみに袖をしぼりつつ 末の松山 波こさじとは」という歌が、2011年の東北地方の地震と関連があるという話です。私も話題になって知ったのですが、歌枕の「末の松山」は宮城県多賀城市にあり、1100年以上前に起きた貞観地震(869年)の際にも大きな津波が押し寄せたけれども「末の松山」を越えなかったその様子が驚きをもって都に伝えられたのです。雙葉では、中学3年間で百人一首をすべて覚えます。これも50年以上続いていることです。冬にテストを行い、みんな覚えているので、この歌の話をすると、「寄せては返す、普通の波だと思っていた」「津波のことだとは知らなかった」と驚いていました。生徒も2011年の地震を経験していますので、その記憶をたぐり寄せて話していました。
そういう姿に触れて、国語なり社会なりで蓄積されていた知識が新しい知識と結びつくと、思いが深まり広がっていくのだと感じました。雙葉の多様性のある教育は、生徒の中に豊かな感性を育んでいると確信しております。

この波が津波だったなんて、あまり知られていなかったんじゃないですか。

大塚先生 私も百人一首を覚えました。とても有名な歌ですけれども、そのことは知りませんでした。地質学のほうでは1000年前の地層が調査をされていて、「津波の堆積物が残された地層がある」ことが地震後に紹介されていました。

進路は生徒の希望を尊重

先ほど、理系の生徒さんの進路の傾向を伺いましたが、全体的にはいかがでしょうか。

大塚先生 多岐に渡る進路を選んでいます。やはり多様性があるのかなと思います。

エネルギッシュですよね。

大塚先生 文化祭の装飾は、段ボールを切って、全部自分たちでやります。音楽部など公演系のクラブも布と針金を買ってきてドレスや小道具を手作りしています。6月に球技大会があるのですが、4月からずっとその練習をしています。授業と授業の間の休み、わずか10分でも、5階から駆け下りて、練習して、また5階まで駆け上がっていきます。それを6年間やるわけです。高3は運動会でもさらに燃えてやりますから、体力、気力は充実。あとは知力という感じです。

雙葉中学校/物理室の掲示物

雙葉中学校/物理室の掲示物

小学校での生活を大切に過ごしてほしい

最後に受験生、保護者へのメッセージをお願いします。

大塚先生 ノーベル賞を受賞された大隅教授が、ノーベルレクチャーで「小学生のときに自然から刺激を与えられてサイエンスに興味がわいた。自然との触れあいを通して小学生のときにインスピレーションを育ててほしい」と聴衆に語りかけたそうなんです。本当にそうだと思いました。都会化が進み、人工的なものが増えましたけれど、まだまだ自然が残っていますし、空を見上げれば雲の様子なども見られます。つまり身のまわりの生活の中に理科は潜んでいるわけですから、当たり前の日常の中にある不思議を見つけてほしいと思います。忙しい時間を過ごしていると思いますが、与えられたものをこなすというのではなくて、自分から学習に取り組むということをぜひ大切にしてほしいと思います。言われたことはやるけれど、その先に考えが進められないというのではなく、自分で考えることを大切にしてほしいと思います。小学校での生活がなによりも大事だと思います。学校の授業や、実験、観察はもちろんですけれども、お友達とのかかわりも大切に過ごしてほしいと思います。

インタビュー3/3

雙葉中学校
雙葉中学校1872(明治5)年、フランスのパリに本院をもつ幼きイエス会のシスター(修道女)が来日して始めた教育慈善事業を前身とし、1909年に初代校長メール・セン・テレーズが現在地に雙葉高等女学校を創立。47(昭和22)年、雙葉中学、48年同高等学校となり現在に至る。田園調布、横浜、静岡、福岡の各雙葉学園は姉妹校にあたる。
四ッ谷駅からもほど近く、都心にもかかわらず学校の周囲は非常に落ち着いた雰囲気。2001年に地下1階地上7階建ての充実した設備を備えた新校舎と講堂が完成。最上階の図書館がすばらしい。聖堂は校内にあり、宗教の時間などに使われる。校外施設が日光の霧降高原にある。
「徳においては純真に、義務においては堅実に」を校訓に、カトリックの精神に基づいた全人教育を目指している。礼儀、言葉づかい、節度という面では定評があり、生徒は決して強制されているわけではなく、のびのびとふるまいながらも自然と品位を身につけていく。「お嬢さん学校」とよくいわれるが、行動力・実行力を備えていて芯の強さを秘めている。
中高時代に基礎学力をしっかりと身につけることを重視し、受験のみを目的としたカリキュラムはとっていない。高校では、生徒それぞれが希望に応じた科目が選択できるようになっていて、文系コース、理系コースといったコース分けは行なわない。中高一貫校の利点を生かした効率的なカリキュラムのもと、各教科で丁寧なきめ細かい指導が行われている。中学1年2年の英会話がクラス2分割の少人数で行われ、中学1年生の間は、英語の学習経験に応じたクラス分けをしている。高校2年3年の選択科目の多くが少人数授業となっている。創立当初から語学教育が盛んな伝統が受け継がれ、時間数が多く、密度が濃い授業が展開されている。中学3年では、週に1.5時間フランス語の授業があり、高校からは英語、又はフランス語のどちらかを選択して履修することができる。
意外に校則が少なく自由な雰囲気。ある在校生が「マシュマロと綿菓子が混ざったような学校」と表現したが、おだやかな雰囲気でみんな仲が良い。週3時間の保健体育で体力作りもおこたらず、球技大会、運動会など身体を使う行事も盛ん。奉仕活動は生徒の自発的な活動が中心で、学内の掃除も毎日放課後に先生と生徒がともに熱心に行う。クリスマスのころ、学年ごとに手作りのプレゼントを持参して施設の人たちと交流する行事もある。全員参加のクラブ活動は研究系や奉仕のクラブからバレーボールなど体育系まで盛んで、ダンス同好会、演劇なども人気が高い。手話の会、点訳の会、聖歌隊なども活発に活動。文化祭、夏期学校、修学旅行など行事も多彩。