出題校にインタビュー!
昭和女子大学附属昭和中学校
2016年04月掲載
昭和女子大学附属昭和中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.個人で取り組む研究レポートが進路につながった先輩も多数。
インタビュー3/3
毎年、1つの研究に取り組む
小西先生 本校では、毎年「私の研究」と「昭和祭研究」(中学生のみ)という、2つの研究に取り組むため、そこでも研究、フィールドワーク、レポート作成、プレゼンテーションという、一連のスキルを磨くことができます。「私の研究」は個人研究、「昭和祭研究」はクラスごとのテーマにグループで取り組む、グループ研究です。
全学年が取り組むのですか。
丸山先生 中1〜高2で取り組みます。中2は、3月にボストン研修に行くので、そのための研究をしますが、その他の学年は自分でテーマを決めて研究する「私の研究」に取り組みます。
小西先生 週1時間、カリキュラムに組み込まれています。月によっては今週は「私の研究」、あとの3週は「昭和祭研究」をしたり、昭和祭が11月なので、それが終わると、すべてが「私の研究」になったりと、臨機応変にその時間を活用して研究しています。
「私の研究」につながるフィールドワークを夏休みの課題にし、そのまとめを提出します。
丸山先生 私が担当する生徒には実験をさせています。教科書に載っている実験ではないので、失敗もありますが、「失敗でもいい。こうしたらこうなって失敗した、というのは、あなただけがわかっていること。あなただけの発見なのだから意味があるんだよ」と言っています。
理科・科長/丸山岳彦先生
毎年、20枚以上のレポートに取り組む
5年間、研究に取り組むというのは、すごいですね。
丸山先生 全教科の教員が、「私は教科以外にこの分野の研究指導ができますよ」というテーマを提示し、生徒はそのリストを見て、「私はこの分野の研究がしたいからこの先生」というように申し込みます。つまり生徒が自由に先生を選び、好きなテーマで研究を行います。1名の教員が、受け持つ生徒数は決まっているので、申し込んでも「ごめんね。今、締め切った」ということもありますが、その場合は、別の教員を探して、申し込みます。
私は理科なので、動物、植物をテーマに出します。とっつきやすいので、すぐに枠が埋まります。ただ、自分のペットのことを調べて終わろうとする生徒がいるので、「それは研究にならない」と、指導しています。
小西先生 「私の研究」では、毎年1月に20枚以上のレポートを提出することになっています。その後、全員がクラスで10〜15分程度の発表を、優秀な研究は全校発表に推薦されます。
昭和女子大学附属昭和中学校 秋の風景
中3あたりからレポートの質が変わる
小西先生 中1のレポートはすごいですよ。注意を重ねて書かせても、Webサイトからそのまま丸写してきたり、数人にアンケートをとって、その結果だけで全体を示してしまったりすることも。
丸山先生 書き方は指導しますので、どこからの情報かは明記してありますが、中1は書き方を覚える段階ですね。2年生以上になると、しだいに書けるようにはなってきます。
どのあたりから、論文の質が上がりますか。
丸山先生 やはり中3あたりから変わってきます。高1、高2になると、かなりしっかりしてきます。大学のAO入試や推薦入試の面接で強みを発揮しているようです。理系の学部学科で、研究内容の話に及んでも、しっかりした論文が書けていると、自信をもって話せるようです。自分で考えて取り組んで、プレゼンも経験するのはいいところだと思います。
昭和女子大学附属昭和中学校 野外観察授業
縦割りで授業ができる
中1から高2まで、同じテーマで、継続的に取り組む生徒さんもいますか。
小西先生 1つのテーマを追い続ける生徒もいます。それが進路に結びついていく生徒もいますが、目移りして、毎年テーマを変えるケースも多いです。
丸山先生 「私の研究」のいいところは、学年がフリーなので、中1から高2までが一緒に集まって研究を行うところにあります。高校生に「ここを下級生に説明してくれる?」と頼むと、きちんと説明してくれます。1人3分の持ち時間で、夏にやってきたことを発表する、ミニ発表をやりますが、そういう時も「先輩、お願いね」と言うと、先輩がいい発表をしてくれるので下級生の見本となって助かっています。縦割りの関係ができるのは、とてもいいと思います。
私の研究をきっかけに社会で活躍する卒業生も
「私の研究」はいつ頃から行っているのですか。
小西先生 創立当初からだと思います。ニッポン放送のアナウンサーの箱崎緑さんは本校の卒業生で、在学中は三国志について調べていました。東大に進学、大学院での研究も三国志についてで、中学時代に興味をもったことが、そのまま大学院まで続いている一例です。クラブは放送部。まさに本校での活動がベースになって、人生を築いています。
世界的な賞を受賞している、フォトジャーナリストの林典子さんも、本校の卒業生です。何度か講演に来てもらっていますが、なぜ、この仕事についたかと聞くと、「中学生の時の『私の研究』で世界について調べたら、いろいろな差別があることに気づいて、カメラで伝えようと思った」と話してくれました。中2の時は、全校発表に選ばれています。彼女たちのように、「私の研究」が将来の仕事に結びついている卒業生がいることは嬉しく、たのもしいことです。今後も気づきのきっかけになる研究になるように支援していきたいと思っています。
昭和女子大学附属昭和中学校 「私の研究」
自然体験、生活体験豊かな子に入ってきてほしい
理科が好きな生徒さんは多いですか。
丸山先生 そうではないと思います。中1全体を前にして、私の科目は明かさずに、「理科は好きですか」と聞くと、8割方は、「嫌い」と言いますから。「嫌い」と言う生徒は多いですが、せめて「嫌い」を嫌いではない。「普通にもっていきたい」。できれば「好きと、手を挙げられるようにしたい」と、こちらも宣言します。1年やると、まあ、好きになってくれているのではないかと思います。
どんなお子さんに入ってきてほしいですか。
丸山先生 願わくは実験が好きであったり、実験経験をたくさんもっていたり、自然体験が豊かであったり、そんな受験生に入ってきてほしいと思っています。せめて、理科に関する時事問題。たとえば日食があったとか、新しい星の発見とか、惑星が8個に減ったとか、そういうことに興味をもってくれていればいいなと思っています。また、本校を受験してくださる受験生は都会っ子が多いと思いますが、土に触る、地層を生で見たなど、自然体験、生活体験豊かな子がたくさん入ってきてくれればいい。本校は山の寮、海の寮を持っていて、毎年そこで学寮生活をするので、入学してくれればそういう経験を増やせるという自負はあります。だから、どんなお子さんが入学してくださっても大丈夫です!
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