出題校にインタビュー!
昭和女子大学附属昭和中学校
2016年04月掲載
昭和女子大学附属昭和中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.事実を受け止め、受け容れる、素直な心と柔軟な思考をもっていてほしい。
インタビュー1/3
分野にとらわれない総合問題として出題
丸山先生 社会と理科の入試は、合わせて60分で行っています。理科は大問が5つあり、大問1~4は生物、地学、物理、化学の4分野から、バランスよく出題していますが、大問5は分野にとらわれない「総合問題」として出題しています。
小西先生 大問5の問題だけは教科の枠を越えた出題が可能です。時事問題を入れたり、「ところで、これはどうなの?」と話題を変えて質問したり。理科が先頭を切ってこのような問題づくりに取り組んでいて、非常に柔軟性が高いので、社会科でも最近、同じような出題をするようになりました。
丸山先生 今回、取り上げてもらった問題は、両方とも大問5の問題です。問1は、魚の心臓を見たことがない人もいるだろう、魚といえば切り身しか見たことがない子もいるだろうと思いましたが、考えれば解けるのではないかと思って出題しました。小学校6年生では人体の仕組み、動物の仕組みを学びます。解剖をやっている小学校がどのくらいあるかといえば、かなり少ないと思いますが、魚の内臓がどこにあるかは知っていてほしいので、あえて魚の心臓の位置を問う問題を出題しました。
理科・科長/丸山岳彦先生
誤答は分散していた
丸山先生 一匹の魚をまるまる焼いていれば、わからなくもないと思います。また、人間は呼吸器官である肺と心臓が非常に近い位置にありますので、エラと肺も近い位置にあるのではないか。そういうところに気づくことができれば解ける問題だと思います。もう一つの方法は取捨選択ですね。ウのあたりには浮き袋があります。あとはほとんどが筋肉です。アは頭ですので、エと間違える子が多いかなと思っていましたが、誤答は分散していました。それはちょっと意外でした。
選択肢づくりに悩みませんでしたか。
丸山先生 そうですね。私はイとエで迷って、7対3か、6対4くらいの割合ではないかと思っていましたが、意外とア、またはウと答えた子がいました。おそらくウと答えた子は、「体の中心に大事なものがある」という発想だったのではないでしょうか。
昭和女子大学附属昭和中学校 校舎
正答率は意外と低かった
正答率はどのくらいでしたか。
丸山先生 問1は42.4%でした。5割は超えると思っていたので、意外と低かったですね。驚きました。
小西先生 この問題に触れたことにより、さっそくアジやサバを買い調べてみようという、ご家庭が増えると嬉しいですね。
丸山先生 アジがわかりやすいです。煮干しでも見ることができます。大きめのものであれば、指で開いて見ることができるので、ぜひやってみてほしいですね。授業では、あらかじめ、心臓の写真を見せます。そうすると、子どもたちが、自分で見つけることができます。
昭和女子大学附属昭和中学校
海の学寮では魚をさばく
丸山先生 本校には、山と海に学寮があり、毎年、学年毎に4泊5日の日程で出かけます。そこでは必ず焼き魚が1回以上出ます。アジの干物なので、内臓はありませんが、切り身の魚を食べるよりはいい体験になると思っています。
中2の海の学寮では、以前、その地域で地引網体験をしていたので、獲れた魚をその場でさばくということもしていました。今は、地引網自体をしなくなってしまったので、漁港から魚を購入し、魚をさばいて食べるという体験をしています。教員の中に、魚を三枚に下ろすのが上手な者がいて、さばき方を教えます。解剖ではありませんが、生の魚に触れるという経験は、今の子にとって、貴重な体験になると思います。「そういう体験学習もしている学校ですよ」というメッセージを込めて、出題しました。
解剖は記憶に残る
入学後も解剖をする機会はありますか。
丸山先生 中2で心臓の解剖をします。2〜4人のグループに1つ、鶏のハツを使って解剖します。
小西先生 昔、牛の目の解剖をしていなかったですか?
丸山先生 それは高2で豚眼に変更してやっています。解剖が苦手な生徒もいますが、実際に解剖すると記憶に残ります。心臓も、切開して左心室、右心室を見て、そこにつまようじの尖ってないほうを差していくんですね。うまくいくと、これが左心室から大動脈だ、右心室から肺動脈だ。意外と太い血管がつながっているということもわかるので、心臓の解剖は、これからも続けていきたいと思っています。魚などの生き物も、直接触る機会を持たせたいと思っています。
昭和女子大学附属昭和中学校
結果を受け容れられる、素直な心も大切
丸山先生 問2は、自分が思っていなかった結果が出た時に、それを素直に受け止めて、考えることができるかどうかを問う問題です。
実験をした時に、教科書どおりでなければいけないという思い込みがあったり、自分に自信がないと、自分の答えよりも、勉強ができる子の答えを優先させてしまったり。一般的に、そういう傾向が見られると思ったので、姿勢を問いたいと思い、出題しました。
普段の学習の中でも、そういう傾向が見られますか。
丸山先生 そうですね。生徒たちを見ていても、自信がないので、「周囲に合わせてしまおう」「教科書どおりでいってしまおう」と考える傾向は見受けられます。本来、新発見、大発見は、常識にとらわれないところから始まるので、自分が出した結果を素直に受け止めて、そこから考えることを大事にしなければいけません。
素直に受け取る姿勢を大事にしてほしい
丸山先生 正答率は69.7%でした。私は7割に届かないのではないかと思っていたので、よかったです。
ただ、3割の受験生は、他の選択肢を選んだということですよね。
丸山先生 そうですね。入学してから正していかなければいけません。
誤答は、どれが多かったですか。
丸山先生 つい、やってしまいがちな選択肢をつくったので、迷うかなと思ったのですが、実際はあまり迷っておらず、分散していました。
本校には、学校の教育目標の一つに「篤き至誠」があります。「誠実でありなさい」「誠に徹しなさい」という意味です。失敗したら失敗したでいいのです。理科でいえば、失敗の原因から考えを広げていくことができれば、立派なリポートになります。失敗という言葉が嫌なのは当たり前ですが、無理に、周囲のうまくいった人たちと結果を合わせることはないのです。生徒には「盗作、ねつ造はいけない」と指導をしているので、受験生にも、素直に受け留める姿勢を大事にしてほしいと思います。
昭和女子大学附属昭和中学校
インタビュー1/3