中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

栄東中学校

2016年03月掲載

栄東中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.授業をおもしろくしてくれるであろう子どもたちの、いいところを引き出せる問題を作りたい。

インタビュー1/3

複数の力を問う問題

この問題の作成意図からお話いただけますか。

大塚先生 2015年東大Ⅰ(特特)の入試から自由記述型の問題を導入。今年の問題を考える時期に、「自分の体験を記述させるような問題を作れたらいいよね」と話したことがきっかけです。まずは、このことわざの意味を知っているかどうか。知識として頭に入っているだけでなく、実際にそのことわざを活かせるかどうか。そういう力を問いたいと思って、作った問題です。

佐藤先生 以前から、体験記述の問題を出したいという思いがありました。しかし、採点にどれだけ時間がかかるか分からないという不安も抱えていました。「東大Ⅰだけならばなんとかなるだろう」と採用したのが昨年度入試です。すると、採点に携わった教員から「他の入試でもやってみたい」という声が挙がりました。そして本年度の4月頃から、職員室で顔を合わす度に入試問題の話題に触れ、雑談の中で「こんな問題を作ってみたんだけど、どうかな?」という感じでできたのが、本年度の問題でした。

国語科/大塚翔先生

国語科/大塚翔先生

もっとも選ばれたのは『好きこそものの上手なれ』

多くの受験生が使ったことわざはどれでしたか。

大塚先生 『好きこそものの上手なれ』が多かったです。一番書きやすかったのでしょう。「好きで努力した結果、こういう成果を得られた」という内容でまとめられますから。『急がばまわれ』も、多くの子が書いてくれていましたが、このことわざは知識の差が見られました。急いでやるよりも、確実な手段を取ったほうがよい成果を得られるということを書いてほしかったのですが、『急いては事をし損じる』と混同してしまったようで、『車で塾に向かった。遅れそうだったので、近道をしたら、逆に渋滞にはまって遅れてしまった』というような解答が見られました。ことわざの意味が間違っていれば、いくら文章が上手に書けていても満点はあげられません。『怪我の功名』などは書きづらかったのか、選んだ子が少なかったです。

9割以上の受験生が記述

これらのことわざを選んだ理由を教えてください。

大塚先生 まずは子どもたちが知っていると思われることわざ。子どもたちが経験を重ね合わせやすいことわざがいいと思い、この5つになりました。A日程の最初の問題なので、そこでつまずいて、他の問題に影響が出るようなことは避けたいですよね。ことわざの提示をしなくてもいいのでは?という意見も出ましたが、絞ってあげれば書きやすいだろうということで、この5つに落ち着きました。

空欄のままの子もいましたか。

大塚先生 1割弱程度、いました。

それは多かったという印象でしょうか。

大塚先生 出題した場所が最初のほうだったので、飛ばす子は少なかったです。

奥田先生 自由記述型の問題なので、空欄になってしまった子の中には、もしかしたら後に回して、じっくりやろうと思っていたら、時間がなくなってしまったという子もいたと思います。必ずしも、空欄の子が、あきらめたわけではないと思います。

栄東中学校

栄東中学校

想像以上によく書けていた

解答のレベルはいかがでしたか。

大塚先生 私個人の感想としては、思っていたよりもしっかり書けていたと思います。

佐藤先生 個人差はありました。答えを書くという意識の子もいれば、自分の体験を伝えようという意識の子もいます。その差は大きかったです。

感心した解答があれば教えてください。

大塚先生 例えば「怪我の功名」で、『カレーを作っていたらしょうゆが落ちて、カレーの中にしょうゆが入ってしまった。食べてみると和風テイストで意外とおいしかった』というような解答はいいと思いました。

自由記述問題では採点基準が重要

設問の中に、ことわざを使ってはいけないとありますが、中には使っていた子もいたと思います。それは減点対象でしたか。

大塚先生 そうですね。例えば、『・・・こういう体験を、百聞は一見にしかずということができます』などと書いてしまう子もいましたが、体験をきちんと説明できていれば、その部分には点数をあげました。ただ、『一石二鳥』や『早起きは三文の得』など、語群にないことわざを使っている場合は×をつけました。

佐藤先生 採点については、基準を設けるために時間を費やします。そこが曖昧だと、余計に時間がかかってしまうので、事前のすりあわせを綿密に行いました。

大塚先生 満点をつけたのは1、2割だったと思います。

佐藤先生 その子たちは他の問題も概ねできている印象で、全員ではありませんが、平均点を超える子が多かったと思います。中には、体験が素晴らしく、こういう子がクラスにいたら、授業がおもしろくなるだろうなと思わせてくれる子もいて、そういう子のいいところを引き出せる問題を作れないものかと、さっそく頭を悩ませています。

来年以降もこういう問題を出していくということでしょうか。

佐藤先生 そうですね。出していきたいです。

栄東中学校 制服

栄東中学校 制服

受験生全員に読んでほしいという思いで文章を選定

入試問題をつくる上で、国語科が大切にしていることを教えてください。

大塚先生 文章を論理的に読めるかどうかを見たいと思っています。評論文の文章選びについては、テーマも重視しています。2016年のA日程の文章を選ばせてもらいましたが、ちょうどCOP21 パリ協定が採択された時期だったので、科学により環境破壊が進んでいるという話を選びました。

佐藤先生 入試が複数回ありますので、国語科全員(18名)で文章を持ち寄り、整理して、どこにどれを使うかを考えています。文章を選ぶ際には、入試の難易度に関係なく、受験生全員に読んでもらいたいという視点で選んでいます。選んだ意図を話し合いながら、決めていくという感じです。

難しい文章にもしっかり取り組める受験生に感心

入試の難易度はどのように調整しているのですか。

佐藤先生 基本的には、平均点設定で、50〜60%に落ち着くようなイメージで作っています。

記述型の問題が多いのは、表現力を重視している表れでしょうか。

佐藤先生 本当は、すべてを記述型の問題にしたいのですが、採点の問題があります。その制約の中で、できるだけ出題しているという状態です。東大クラスの入試は記述問題がメインですが、A日程、B日程は選択問題、抜き出し問題とバランスをとって出題しています。

記述問題、全体の取り組みについては、どのように感じていますか。

大塚先生 非常によく書いてくれているという印象です。東大Ⅰ・Ⅱなどは文章が長く、記述問題も多い中で、ほとんどの子が最後まで解ききっていました。力をもっている子が受験してくれているのだなと、改めて実感しました。

佐藤先生 本当に想定以上で、受験生の集中力は侮れないですね。入学してきた子たちに対する指導を、もっと頑張らなければいけないと思いました。

栄東中学校 図書館

栄東中学校 図書館

インタビュー1/3

栄東中学校
栄東中学校平成4年に中学校が開校し、中高一貫教育が開始された。時代の変化に先駆けて、アクティブ・ラーニングを取り入れ、「①授業、②校外学習、③キャリア、④部活動」という4つを軸に分けて展開している。授業での工夫という枠を超えて、生徒の学びの場すべてをアクティブ・ラーニング実践の場ととらえ、学校そのものがアクティブ・ラーニングの場である。特定の教員が実践するのではなく、全教員がアクティブ・ラーニングの実践者であることが最大の特徴である。
大学入試結果は教育の成果であり、そこにいたるプロセスと大学卒業後、社会で生きる力の育成に関する学校としての方針をアクティブ・ラーニングという理論に基づいて計画して実践している。授業は常に見学可能であり、教員同士がいつでも授業を見せ合う環境となっている。中1の入学時点では人の前でプレゼンテーションすることが苦手な生徒でも、中3までの間に至極当然のこととなっていくということである。
建学の理念は、『人間はだれもがすばらしい資質を持った、宝の原石であると考え、その原石を磨き上げ、文字通り本当の「宝」として育てること』であり、そのために、「今日のことは今日やり、勉強も仕事も明日に残さない」ことを校訓としている。
広大な敷地には、勉学に専念するための充実した施設があり、先生方も遅くまで生徒たちの学びにつき合うことも多いという。もちろん勉強だけではなく、多くのクラブ活動も盛んであり、それはやはり学校での生活すべてがアクティブ・ラーニングであるということに通じている。