中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

東洋英和女学院中学部

2015年11月掲載

東洋英和女学院中学部の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.他者のために何ができるかを考え、行動できる人を育てる

インタビュー3/3

奉仕を実践する「ディアコニア」に見る中1の成長

神藤先生 中1のクラス礼拝で取り上げられることが多いのが、「ディアコニア(ギリシア語で『人に仕える』の意味)という奉仕活動についてです。施設に訪問してお年寄りと接したことで、「自分たちができることを続けたい」「小さな積み重ねが大事」などと話しています。車いす体験によって、どのように押してあげると利用者が安心するかなど、自分本位ではなく、相手の立場に立って考えられるようになっています。

寺内先生 私はふだん高等部で教えているのですが、久しぶりに中1と施設に行って改めて生徒の順応性に感心しました。最初は接し方がわからなくて、おじいさんやおばあさんを遠巻きに見ている生徒でも、少し後押ししてあげると、あとはこちらが指示しなくても隣に座って同じ目線でやさしく話をするようになります。入学当初と比べても少しずつ成長していることが感じられて、うれしく思いました。

教頭/楠山眞里子先生

教頭/楠山眞里子先生

東洋英和の卒業生が「世話好き」な理由

神藤先生 ディアコニアについては、「寄り添う」とは「側にいる」だけでなく、「いたわる」「思いやる」など、心を通わせるためにいろいろな意味があることを、生徒と一緒に考えました。言葉で他者を励ますことができますが、傷つけることもあります。「友達との関係でも言葉を大切にしましょう」と言っています。

寺内先生 奉仕活動を経験して、寄り添うとはどういうことか、6年かけて徐々に染み込んでいきます。生徒は「してあげる」のではなく、逆に励まされたり、勇気をもらったり、大きなものを与えられる経験をしています。本校の卒業生がよく「おせっかい」と言われるのは、自分がしてもらったことを他の人に返してあげたい、人の役に立ちたいという気持ちが育まれているからでしょう。

生徒との密なやり取りが教員のやりがい

神藤先生 ディアコニアの活動は毎回レポートにまとめて、機会毎に発表しています。ある生徒が、レポートを「書けません」と言ってきました。話を聞くと、「最後におばあさんが手を握り、涙を流しながら『ありがとう』と言ってくれたことに感動しました」ということだったので、その感動はどのようなものなのかを生徒と一緒に考えました。どのように感じたか、気持ちを表す言葉が少しずつ出てきたので、それを自分で書いてみるように促しました。このように、生徒の心に触れながら密にやり取りできることをとてもうれしく思います。

東洋英和女学院中学部

東洋英和女学院中学部

グループワークで友達の助けを借りて読解力をつける

寺内先生 高等部では作品論や作家論を課します。グループワークと組み合わせることもあります。例えば今年度は高1で芥川龍之介の『羅生門』を読んで、どのような視点で読み解くか4人程度のグループで意見を出し合ったあとで、自分でまとめました。グループで話し合うので、文章読解が苦手な生徒も友達の助けを借りて作品論を書くことができます。

次のステップは、自分で作品を選び、グループワークで取り組んだことを活かして自力で読み解き、作品論を書きます。

神藤先生 高校生の作品論や作家論、中学生の読書感想文や俳句など優秀な作品を、毎年『道(ことば)』という冊子にまとめています。中2の短歌は全員載せています。中1は高3の作品を読んで、「私も高3になったら、こんな文章が書けるようになりたい」とあこがれ、励みになっています。

自分の中に軸を据えて自分の立ち位置を定める

SGHアソシエイト校に認定されていますが、貴校のグローバル活動について教えてください。

楠山先生 本校は、日本で女子のための教育環境が整っていなかった時期に、カナダのメソジスト教会から派遣された宣教師と教会の支援で設立された学校です。「今度は私たちが支援する側に立ちたい」「私たちが誰かのために始めよう」という思いが広がり、生徒会による自発的な支援が始まりました。

「バングラデシュ寺子屋活動支援」は、貧困のために学校に行くことが難しい子供たちを支援する活動です。また、東洋英和女学院大学の活動「TEAM(Toyo Eiwa Activities for Myanmar)」では、ミャンマーについて、移民と難民、教育と子供といった6つのテーマを生徒たちが主体的に調査し、自分たちができることについて考えています。こうした活動を通じて、世界中で起きている諸問題に目を向けて、「他者のために」何ができるかを考え、行動できる人になってもらいたいと思います。

神藤先生 国語科は言葉にこだわる教科として、言葉を大切にすることで「他者への思いやり」や、思考力を育んでいきたいと考えています。

楠山先生 他者との関係性の中でアイデンティティーを自覚することで、自分の立ち位置や役割が見えてきます。ぶれない軸を持つこと、それが世界で通用するための第一歩になると思います。

東洋英和女学院中学部

東洋英和女学院中学部

インタビュー3/3

東洋英和女学院中学部
東洋英和女学院中学部1884(明治17)年にカナダ・メソジスト派の宣教師カートメル女史によって設立された。第二次大戦中には校名を東洋永和女学校と改称したが、宗教を棄てろという圧力には断固抵抗した。その後校名を復し、1989(平成1)年に大学、93年に大学院が開学。96年に高校募集を再開したが、2003年には再停止。
「敬神・奉仕(神への敬い・隣人への愛)」を基本精神として、キリスト教の精神に基づいた豊かな人間形成を目指し、一人ひとりを大切にした教育を行う。130年前の創立以来、自由な学風とのびのびとした雰囲気を今なお継承しているが、その長い歴史に最新鋭の設備を誇るハイテク校舎が加わり、英和生一人ひとりの成長とともに、21世紀にふさわしい校風がさらに刻まれている。
六本木に隣接しながらも、学校周辺は閑静な一帯。校舎は、創立当時のスパニッシュ・ミッション・スタイルの面影を残している。チャペル、記念講堂、コンピュータ教室2室、メディア教室、体育館、図書室など充実。校外施設として軽井沢追分寮、野尻キャンプサイトがある。学院全体が使う「総合校舎」が誕生、大学の教授が中高生の教育に参加する計画も。
中学では偏りのない学習プログラムで基礎学力の習得に力を入れ、高校では個性に合った進路選択ができるような指導が特色。英語の指導には定評があり、中学では1クラスを2分割、中3から習熟度別授業を行っている。もちろんネイティブによる英会話の授業もあり、「使える英語」を養成。数学は中2・中3で1クラスを2分割、高1・高2は3段階の習熟度別。高2からは多様な科目選択制を導入し、生徒のニーズに応えている。音楽・宗教教育にも力を入れる。他大学合格実績の躍進。高い現役進学率を誇り、東大、早慶上智大など難関大学への合格者も多い。進学先が社会科学系、理工系、医学系、芸術系など幅広いのも特徴。
東洋英和の朝は20分間の礼拝から始まる。クラブ活動は全員参加で、文化系22、体育系8が中高合同で活動。卓球、バスケットボール部が強い。中1では全員が車椅子、点字など、奉仕活動のための基本を学習(ギリシャ語で隣人に仕えるという意味のディアコニア学習活動)する。一方、有志によるYWCA活動は、手話・点字を習ったり、年に数回、養護施設や老人ホームを訪問し、子供たちやお年寄りとの交流をもつ。ピアノ科、オルガン科、器楽科、英会話、日本舞踊、華道などの課外教室も行われている。球技会、文化祭、野尻キャンプ、クリスマス礼拝、夏休みのカナダ語学研修旅行(中3・高1・高2)など行事も多種多彩。