出題校にインタビュー!
渋谷教育学園渋谷中学校
2015年09月掲載
渋谷教育学園渋谷中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.リード文を読むことで、生物のおもしろさを実感してほしい。
インタビュー1/3
自分の体験をもとに出題
問題の出題意図を教えてください。
大谷先生 私は目黒区の自然教育園が好きで、息子と散歩に行きます。生徒にも勧めていますが、入試を通して受験生の皆さんにも、自然教育園のように人が手を加えていない森が身近にあることを知ってもらい、足を運んでほしいと思ったので、常々問題にならないかと考えていました。
自然教育園にはカラスがたくさんいます。寝ぐらにしているのです。それはなぜかということも知っていました。カラスにも、自分の経験からおもしろい習性があることを知っていたからです。自宅マンションのベランダに生卵が落ちていることがありました。朝食で食べているロールパンも、なぜかベランダのプランターにあり、妻に「あなたが置いたの?」と疑いをかけられたこともありました。誰かの嫌がらせかとも思いましたが、犯人はカラスでした。
ゴミを荒らすので、東京では害のある鳥と言われていますが、カラスの立場になれば何らかの原因があってしていることではないかと、非常に興味をもちました。そこでカラスについて調べると、いろいろな習性があることがわかりました。その中の「貯食をする」という習性が、妻の疑いを晴らすことになりました。どこからか持ってきた食べ物を隠しておき、隠し場所を覚えておいて、後で取りに行くカラスの「貯食をする」という習性と、生態系をかけ合わせたらおもしろい問題ができるのではないかと思いました。自然教育園は繁華街が近いので、容易にエサを調達できます。その一つがロールパンだったのではないかと思いながら、問いを考えました。
理科/大谷昌央先生
受験生と共感したかった
大谷先生 受験生の皆さんには、比較的自由な発想で書いてほしいと思いました。ただ、すべてが自由な発想だと収集がつかなくなるので、しっかりとしたリード文により情報を与えて、そこから読み取った情報をいかに表現できるかを問いたいと思いました。
また、自分が興味のあることを入試問題という形で表現するからには、受験生と共感できる部分を持ちたいと思いながら作りました。私も、それほどカラスに詳しいわけではないのですが、ハシブトカラスはジャングルクロウと言われるように、もともとはジャングルの中で動物の遺体をエサにしていました。緑が少なくなり、都会に出て来て、適応するためにさまざまな工夫をしています。巣を作るにしても材料がないので、針金ハンガーを運んできます。電車のレールの上に石を置く事件が起きますが、それもカラスの仕業です。石の下にエサを隠し、エサを取り出すために石をどかした先がたまたまレールの上で、電車を止めてしまうのです。人間にとっては迷惑な話ですが、この問題を解いた受験生がカラスの立場になって、ゴミを散らかしている目的を考えてくれたら非常に嬉しいです。
私たちのまわりに、ハシボソカラスはそれほどいないのですか。
大谷先生 そうですね。東京で目にするのは99.9%ハシブトガラスです。
解答の内容も表現の仕方も良かった
受験生の解答はいかがでしたか。
大谷先生 よく(リード文を)読んでくれたなぁという印象でした。採点で気をつけていたのは、相手に伝わるように書けているかというところです。解答の内容も良かったですが、表現の仕方も良かったと思います。
誤答でも、目のつけどころに感心するような解答はありましたか。
大谷先生 この問題では、そこまで外れた答えを書いている受験生はいませんでした。ただ、以前に恐竜の足跡の化石から何がわかるかという出題で自由に意見を書かせたところ、「子ども同士が遊んでいた」「捕食関係で食うか食われるかの状況だった」など、いろいろな答えが出て来ました。その時は、いいなと思った解答には躊躇なく○をつけました。
渋谷教育学園渋谷中学校
正答率は高かった
今回の問題には、視点が2つあると思います。一つは住処。一つはエサです。そのどちらかだけでも○はもらえたのでしょうか。
大谷先生 たしか△をつけたように思います。東京に住んでいない子にはハンデがあったかもしれませんが、明治神宮などいろいろなところに緑があります。寝ぐらだけではなく、近くに銀座、渋谷、新宿などの繁華街があり、エサの調達にも困りません。そういうイメージを大切にしたいと思ったので、2つのポイントが書かれているかどうかも採点基準の一つでした。
住処だけ、ゴミだけの場合は部分点ということですね。
大谷先生 そうです。
正答率はいかがでしたか。
大谷先生 この問題は大問2の最後の問題でした。その前の問題「自然教育園にシュロの木が増えたのは、この40年の間に都市の気候の変化があったからであると考えられます。その変化とシュロへの影響について正しいものを選びなさい」はあまりできていませんでしたが、もう一つ前の問題「陰樹の光の強さと光合成速度との関係は陰生植物と同じような形をとると仮定すると、矛盾が生じます。それはどのような矛盾ですか」の論述も、しっかり書いている受験生が多くてびっくりしました。この問題もよくできていて、おそらく8割程度はできていたと思います。
インタビュー1/3