出題校にインタビュー!
浅野中学校
2015年08月掲載
浅野中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.覚えた知識と統計から読み取った情報を組み合わせる力を試す問題
インタビュー1/3
大阪への移動は航空機より新幹線が多い
麻生先生 この問題は、大都市間の移動にどんな公共交通機関が利用されているか、提示された統計資料から類推する力を試しています。その際、東京都と北海道・大阪府・石川県の位置関係や日本の交通網といった地理の基礎知識と組み合わせて考えます。
東京からの移動手段のほとんどが航空機のAは、3都市の中で東京から最も遠い「北海道」だとわかります。青函トンネルは鉄道専用なので、割合が「0.0」のQが自動車で、Pが鉄道となります。Cは航空機(割合26.1)よりも鉄道(割合71.8)を多く利用していることから、東海道新幹線を思い浮かべればCは大阪府だとわかるのではないでしょうか。
中には、北陸新幹線が開通(2015年3月14日)するニュースに引きずられて間違えた受験生がいたかもしれませんが、受験日は開通する前でしたから開通前の交通事情で考えます。石川県の場合、東京−石川(金沢)間を直通運転する鉄道はありませんでしたから、トータルで移動時間が短い航空機で移動する人が多かったのでしょう。
社会科/麻生 徹先生
組み合わせは6通り。正解率は5割弱だった
麻生先生 この問題の正答率は5割弱でした。もう少しできるかなと思っていましたが、予想より低かったですね。
誤答として多かったのは大阪府と石川県を間違えたパターンではないでしょうか。
麻生先生 おそらくそうだろうと思います。この問題は3つの道府県と2つの公共交通機関の組み合わせをすべてわからないと正解できません。
受験生が石川県の空港(小松空港、能登空港)をイメージするのは難しいでしょうから、ここはPが鉄道だとわかったうえで、71.8という高い割合で利用されている鉄道が新幹線だということに気づいてほしいですね。
利用者はトータルの利便性で交通手段を選んでいる
麻生先生 東京-大阪間の移動は航空機を利用する人もいますから、普段お父さんが大阪への出張に航空機を利用しているなど受験生の場合は、「大阪へは航空機利用が多い」と思い込んでいたかもしれません。
しかし、交通の利便性は単に時刻表だけでは判断できません。東京−大阪間で比較すると、乗っている時間だけなら航空機は約1時間、新幹線は約2時間30分です。それでも新幹線の利用割合が航空機を大きく上回るのは、乗車(搭乗)の手間や便数の多さ、新幹線(航空機)を降りてから目的地への移動時間といった利便性に差があるからでしょう。利用者はトータルの利便性で交通手段を選んでいることをわかっていないと、間違えてしまうでしょうね。
そうしたことを大人は経験的にわかっていますが、子どもは「飛行機は早いから」と早合点しそうです。
麻生先生 2015年の入試問題は問題数と難易度から、スピーディーに解くことが求められました。この問題は後半に入っているので、この時点で「ちょっと急がないと間に合わない」と思って焦って解いた受験生がいたかもしれません。時間的な余裕があれば、もう少し正答率は上がったのではないかと思います。
浅野中学校 校舎
統計の数値の背後にある理由を見つける習慣をつけよう
麻生先生 地理の問題には統計資料がよく出ます。受験生には、普段から「何が読み取れるか」ということはもちろん、「なぜこのようになるのか」ということも意識して統計資料にあたってほしいと思います。
本校でも定期試験の勉強で統計表の数値をまるごと覚えようとする生徒がいますが、それはムダな努力です。統計表の数値そのものを覚えても意味がないのは、数値そのものは固定ではなく動いてしまうからです。統計は、他に比べて数値が大きい、小さいなどの傾向をつかんだら、なぜそうなるのか、数値の背後にある理由を考えることを習慣にしましょう。「なぜ?」を考えるという点で、統計の読み取りは科学的思考力が求められると言えます。
理由を見つけるにはいろいろな角度から考えてみることです。そのとき学習した基礎知識が役に立ちます。理由を見つける力がつけば、初見の資料にも対応できるようになると思います。
インタビュー1/3