シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

サレジオ学院中学校

2015年06月掲載

サレジオ学院中学校【社会】

2015年 サレジオ学院中学校入試問題より

サレジオ学院では、中学生は毎年文化祭でクラスごとに出し物をします。生徒が46人いる中学1年生のAさんのクラスでも、学級委員の生徒が中心となって、クラスの出し物を何にするか、話し合いを行いました。クラスの生徒から意見を聞いたところ、「劇」、「学校紹介」、「手品ステージ」の3つの案が出ました。学級委員が「他に案が出ないので、この3つの中から多数決で決めます。いいと思ったものにみなさん手をあげてください。」と言いました。Aさんは席が近い友達と「3つの中にいいものがないね。」と話し、迷った結果、どれにも手をあげませんでした。周りにも手をあげていない生徒が多くいました。その結果、手をあげた人数は以下のようになりました。

5人
学校紹介 2人
手品ステージ 1人

学級委員は、「多数決の結果、劇の意見が最も多かったので、このクラスの出し物は劇に決まりました。」と言いました。これを聞いて、Aさんは、「この決まり方はなんだかおかしい。」と感じました。これに関連して、あとの問いに答えなさい。

①生徒の意見を聞き、多数決をとって決めたにも関わらず、Aさんが「おかしい」と感じたのはなぜでしょうか。理由を説明しなさい。

②①のようにならないために、Aさんはクラスでの話し合いの中でどのようなことをすれば良かったのでしょうか。答えなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、このサレジオ学院中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

  • クラスの46人中、20%にも満たない8人だけの挙手で出し物を決定しているから。
  • クラスの46人中、5人だけが賛成する案を出し物として決定しているから。
  • 多数決という方法をとりながら、クラスの過半数の賛成を得ていないから。

  • あげられている出し物の目的や意義などについてのくわしい説明を求める。
  • 過去や他校の例などより多くの情報を集めた上で再度案を出し合うよう提案する。
解説

民主政治における物事の決定にあたっては、それを構成するメンバーの主体的な参加が前提条件となります。クラスの文化祭の出し物の決定にあたってAさんが感じた「おかしさ」とは、その基本的な条件が実現できていないことにあったと考えられます。ですから、Aさんがとるべき行動としては、クラスのより多くのメンバーがこの決定に主体的に参加できるような手段を提案することとなりますが、その方向性としては二つあります。一つは既存の案についてより詳しい説明を求めることです。その目的や意図がわかれば決定に参加するメンバーも増えると予想されます。もう一つはさらに新規の案を募ることです。その際、過去の例や他校の例などより多くの情報があれば、考える材料を得ることでより多くのメンバーの主体的な参加につながると予想されます。いずれの考え方でも、クラスのより多くのメンバーがこの決定に主体的に参加できるような方法であれば正解になります。

日能研がこの問題を選んだ理由

最近の国政選挙や地方選挙では投票率が低下の傾向にあることがいわれ、とくに年齢層が若いほどその数値が低くなっていることが問題とされています。一方で、憲法改正のための国民投票の資格年齢は18歳以上にまで引き下げられ、選挙権も2016年の参議院選挙から資格年齢が18歳以上にまで引き下げられることになりました。

この問題では、こうした最近の政治における状況や課題をふまえ、それを受験生にとっても身近に感じられる学校のクラスに置き換え、そこでの物事の決定にあたって、どうすればより多くの構成メンバーの意思を反映させることができるのかを考えさせています。

この問題は、以下にあげるような通常の社会科の入試問題にはない特色をもっています。第一に、先のような最近の政治における課題を、一般的な知識として問うのではなく、身近な場に置き換えて、受験生に民主政治についての基本的な考え方を問いかけている点です。また第二に、民主政治の基本についての一般的な知識を問うのではなく、与えられた情報から受験生が自ら課題を発見し、そのポイントを整理した上で自分自身ができる解決策を考えさせている点です。

「現状の問題点を把握し、解決するにはどうしたらよいのかを自分なりに考える」という力をはかることができる問題だと思いました。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。