中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

桐蔭学園中学校・中等教育学校

2015年06月掲載

桐蔭学園中学校・中等教育学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.生徒のポテンシャルを最大限に引き出す、それが桐蔭学園。主体的に学ぼう!

インタビュー3/3

自分から数学に取り組む生徒を増やしたい

授業で意識していることはありますか。

袴田先生 算数から数学に変わると、実生活で使わないことも出てきます。三角比などを扱うと「どこで使うの?」と聞かれます。「将来使わないのだから、やらなくてもいい」と考える生徒もいますので、授業を通して数学の楽しさを知ってもらうことを心がけ、主体的に学ぶ生徒を増やしたいと思っています。

今年度から中1、高1では問題を解くだけではなくて、どう考えたか、それをどう伝えるかという体験をさせて、社会に向けてのコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力などを磨くことに力を入れています。これまでは、教員の説明を受けて、黙々と板書を写して考える授業を行ってきましたが、最近は、2人、4人、6人といろいろなグループを作り、ボードを用意して書かせたり、生徒が教壇に立ってみんなに伝えたりすることを授業に取り入れています。そして、自分から学ぶ姿勢を作り、一人ひとりが「今日はこんなことがわかったぞ」というような、手応えを感じて授業を終えられることを目標にしています。

佐藤先生 最近、表現力という言葉をよく耳にしますが、話す前にきちんと読み取る、聞き取る。入試では出題者の意図をきちんとくみとる。そこがコミュニケーションのスタートではないでしょうか。その上で「私はきちんとわかっていますよ、こう考えていますよ」というアピールをする、そういう姿勢が大事だと思っています。

数学科/袴田英康先生

数学科/袴田英康先生

2つの学校、習熟度別授業で個差に対応

先生方は中高男女、中等、どれも教えるのですか。

末包先生 そうです。所属学年が中心になりますが、私は今年、3つの学年の授業を担当しています。少数ですが、男子棟から女子棟へ、橋を渡って移動し、女子の授業を受け持つ教員もいます。中学と中等ではカリキュラムが違いますので、同じ学年を担当しても教える内容が異なります。同じ内容を教えるにしても時期が異なります。

袴田先生 教材も違います。中等では『桐蔭の数学』という桐蔭独自の教科書を使っていますが、中学は数研出版の『体系数学』を使っています。

唐沢先生 習熟度別のクラス編成なので、クラスによっても教え方が変わります。

佐藤先生 12歳である程度の力を身につけている子もいれば、これから身につく子もいます。桐蔭は複数のシステムを持っていますので、違いに対応できるカリキュラムが用意されています。中学も『体系数学』を使っていますので、普通の中高一貫校と同じようなスピードで進んでいきますが、中等はより速いです。

きめ細かい補習で基礎力の定着を図る

佐藤先生 数学科の教員だけで70名。おそらく多くの他校では、全教員数にあたるくらいの人数がいます。教員数のメリットを活かして、いろいろなことをやっています。数学科も、授業、放課後講習、季節の講習など、さまざまな取り組みが一体となって個々の生徒の力を伸ばしています。

唐沢先生 教員数が多いので、季節講習や放課後講習などレベルに合わせていくつも開講できます。数学が苦手なら基礎講座、得意なら応用講座と自分で選んで学べます。

末包先生 遅れ気味の子に声をかけて、放課後に個別で教えたりもしています。

袴田先生 中学は、ホームルームテストの結果で補習を行うことがあります。遅れ気味の子に対して、どこで歯止めをかけるか。その見極めに注意して、底上げを図っています。

佐藤先生 タブレットを導入し、さまざまな場面で活用を始めています。こちらの効果にも期待しています。

桐蔭学園中学校・中等教育学校

桐蔭学園中学校・中等教育学校

中等では6~7割が理系志望

やはり理系に進む生徒が多いですか。

末包先生 中等では、例年6割から6割5分が理系です。今年は多くて7割近くの生徒が理系志望です。

佐藤先生 12歳の選択として、男子は中学、または中等を選べます。中学は基礎力重視。中等には算数を中心としたオールラウンドの成績上位者が集まっています。女子はコース分けをしていて、理数コースと普通コースがあります。理数コースの生徒は、高校でも理数コースに所属しますが、普通コースの生徒の中には、高校から理数コースに進む生徒もいます。理数と名づけていますが、特進のような意味合いで、その中には文系の生徒もいます。今年の高校2年生では、理数コースでは53%が理系、普通コースでは59%が文系を選択しています。

中学の生徒は、高校で外進生と混ざりますか。

袴田先生 現在、ホームルームは混ざっていますが、数学の授業では進度が異なるため混ざりません。

他の教科も同様ですか。

佐藤先生 進度の差によります。英語は現在、入学時から混ざっていますが、古典は一部、差があるので、ある時期までは混ざりません。混ざらない期間がもっとも長いのは数学と理科だと思います。

高3で男女を混ぜるのは社会へのステップ

高3の授業では男女が混ざるのですよね。

佐藤先生 そうです。男女それぞれに学校を運営しながらも、最後に男女が一緒になり、互いの特性を理解し、切磋琢磨して、その先の社会へつなげていくという、本校独自のシステムです。

末包先生 数学では、男子の中に頭の切れる子が多いので、女子は少なからず刺激を受けていると思います。男子の自信は女子にはないものです。一方で、女子の丁寧さを男子は真似できません。許可をもらい、女子のノートをコピーして配ると驚いています。そういう姿を見ると、互いに足りない部分を補い合いながら成長できる場になっていると思います。

男女はすぐに馴染みますか。

末包先生 ゴールデンウイークが明けるまで、授業はやりにくいです。みんな格好をつけていて、「これわかる?」と聞いても答えません。男子だけならすぐ答えるのに、間違えても平気なのに、女子がいると間違えられないと思うのでしょうね。だから最初はやりにくいのです。また、女子は丁寧な授業を好むので、しばらくは女子に合わせて進めていきます。男子から「今年は授業が丁寧だね」と言われます(笑)

数学科/末包義人先生

数学科/末包義人先生

独特の距離感が桐蔭学園の校風に

佐藤先生 生徒が取材を受けた時に言っていましたが、橋を越えたら男子がいる。通学路でも顔を合わせる。常に意識するこの距離感が、桐蔭ならではのもののようです。ホームルームや授業はもちろん、行事やクラブを男子、女子がそれぞれに行いながらも、高3の授業だけは社会へつなげるために一緒に行っています。こういう形態の学校は、おそらく本校だけなのではないでしょうか。他に類を見ない、複雑なことをしている学校なので、説明が難しいのですが、受験生の保護者の皆様に「こういう学校があってもいいのでは?」とお話すると、多くの方が納得してくださいます。

インタビュー3/3

桐蔭学園中学校男子部
桐蔭学園中学校男子部「私学にしかできない、私学だからできる教育の実践」を掲げ、「真のエリートの育成」を目指し、昭和39(1964)年4月、横浜の北郊、緑深い丘陵地帯の一角に、桐蔭学園は誕生した。創立以来、一貫して日本の未来を担(にな)う真の英才を育てる場として、教育内容・施設の整備・拡大を図っており、「知育」「徳育」「体育」という、人が成長する上で最も大切な要素を育てる学園の理念、「桐蔭イズム」は、いまでは多くの人々に広まっている。創立以来掲げてきた「自由・求学・道義・愛国」という4項目の建学の精神に加え、平成26(2014)年創立50周年を機に、「自然を愛し、平和を愛する国際人たれ」という一項が加わった。桐蔭学園の校章は、五三の桐(ごさんのきり)。歴代理事長の母校、旧制東京高等師範学校(現・筑波大学)の校章にちなんでおり、桐には、瑞鳥、鳳凰(ほうおう)が宿るとされている。
中学高校は高校2年までは男子部と女子部に分かれており、高校3年では男子部と女子部が合同で志望コース別授業を受講するといった「男女併学」を採用している。高校男子部は理数科と普通科に分かれている。平成13年(2001年)4月には、男子4クラス約160人の桐蔭学園中等教育学校が誕生した。中等6年時には高等学校・女子部との合同の授業も行われている。クラブ活動もさかんで、硬式野球部をはじめ、サッカー部、ラグビー部、柔道部、剣道部、テニス部などが全国優勝するほか、現在でも各分野で全国レベルの成績を挙げている。