中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

桐蔭学園中学校・中等教育学校

2015年06月掲載

桐蔭学園中学校・中等教育学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.頭の中で考えたことを相手に伝える力をつけよう!

インタビュー1/3

考え方を問う問題の一つ

この問題の出題意図からお話いただけますか。

降幡先生 円の中に入るもっとも大きな正方形の一辺(整数)を問う問題です。答えだけでなく、考え方を問う問題の一つとして出題しました。この(ポスターに掲載された)問題を最初に思いつきましたが、1問だけではどこから手をつけていいのかわからない受験生もいると思い、その前に3つの小問を用意して誘導しました。まずは円の面積を聞きました。次に、半径10cmの円の面積にもっとも近い正方形の面積の1辺の長さを聞きました。この答えが1辺の長さの上限となります。そして、1辺の長さが10cmの正方形の対角線を1辺とする正方形の面積を聞きました[200cm2]。数学を学んでいると中学で習うルートが浮かびますが、ひし形の面積の公式「対角線の長さ×対角線の長さ÷2」を使えばルートを使わなくても計算できます。以上の情報をもとに、200以下で200にもっとも近い平方数(整数)を考えればいい問題なので、そんなに苦労はなかったと思います。

数学科/降幡正一先生

数学科/降幡正一先生

答えが出た受験生は考え方も書けていた

記述の部分はできていましたか。

降幡先生 答えが出た受験生はだいたい書けていました。

袴田先生 記述の問題を取り入れて2年目になります。前年は配点の1割程度の出題でしたが、それでは少ないということで、今年から3割程度出題しています。記述といっても、小学6年生に論理的な文章を書かせるのは厳しいので、表現方法は問いません。

末包先生 文章でも計算式でも図でもいい。考えていることが表現できていれば点数になります。採点するのは数学科の教員なので、一つひとつ読み取って評価しています。

降幡先生 この問題は、正方形が円の内側に入らなければいけないので、200を越えないということが明確でなければいけません。15だと越えてしまうから14が最大である、ということが伝わるように書くということですね。

袴田先生 記述問題は0か満点かではありません。部分点もあり、考え方は合っているという解答も評価できますので、どの程度理解しているかを重点的に見ています。

入試では基礎力を見られる問題を出題

昔はものすごく問題が難しかったですよね。

袴田先生 基礎力を問うテスト1、応用力を問うテスト2と、算数のテストを2つに分けて行っている時代もありました。当時は桐蔭のオリジナリティを出すことにこだわり、どこにも出題されていないような問題を一生懸命考えていましたが、どのような入試がふさわしいのか検討を重ねるうちに、必然的に少しずつ解きやすい問題になっていきました。女子部は、より基礎に重点をおいています。

唐沢先生 基礎力があれば、入学してからいくらでも伸びるので、入試では基礎力の定着を見られるような出題をしています。

桐蔭学園中学校・中等教育学校

桐蔭学園中学校・中等教育学校

記述問題が増えたのは、学校からのメッセージ

昨年から記述問題を増やした理由を教えてください。

佐藤先生 これは学校の方針です。今年の中1が受験を迎える時から大学入試が変わるということもあり、「考える力」「それを表現する力」がより重要になってきます。授業をはじめ、さまざまな場面でそういう力が身につくよう桐蔭の教育そのものが変わろうとしているのに、中学入試だけが従来のままではおかしいですよね。アドミッションポリシーを入試に反映し、しっかり考え、表現できる資質をもった小学生に入学していただき、先ほど唐沢が申したように、6年間でその力を伸ばして、大学や社会につなげていくという一連の流れの中で、記述問題を増やすことになりました。今年の入試から全教科3割を目処にしています。教育内容が変われば入試問題も変わる。問題に込められた思いを、学校からのメッセージと受け取っていただけるとありがたいです。

答案から一生懸命解こうという気持ちが伝わってきて嬉しい

袴田先生 これまではいかに答えを出せるかでしたが、これからはいかに考えていることを伝えられるかを見ていくことになります。

そうなると採点が大変ですね。

袴田先生 そうですね。ただ、教員数が多いので、丁寧に採点しています。

唐沢先生 ○や△などの記号を使って書くなど、小学生ならではの解答があるので、複数の教員で話し合い、確認しながら採点を行っています。時間はかかりますが、採点していると彼らの考えていることがわかっておもしろいです。

袴田先生 中には「いい考え方だよね」と感心させられることもあります。また、答えは違っていても、気持ち的に得点をあげたいなという解答と出会ったり、説明が実に丁寧だったり。一生懸命に解こうという気持ちが伝わって来るので気持ちがいいです。

今後、ますます記述問題が増えるということはありますか。

袴田先生 それは学校の方針によります。次の入試は今年と同様、配点の3割程度です。

桐蔭学園中学校・中等教育学校

桐蔭学園中学校・中等教育学校

解きながらおもしろいと思ってもらえる問題を出したい

普段、数学を教えている先生方が、算数の問題を作る時に大事にしていることを教えてください。

唐沢先生 やはり方程式など、数学の知識を使っていろいろなことをしてしまうので、算数の問題として適切かどうか、小学生にとって取り組みやすい問題かどうかということは気にしています。

袴田先生 この問題も、中学で習うルートで考えるところを、小学生ならどうするのかな、誘導がないと手がつかないのでは?そう考えて誘導することで、小学生が考えながら取り組めるおもしろい問題になりました。中1の中にも『数の悪魔』など本を読んでルートの存在を知っている子はいますが、きちんと習っていないと表現することは難しいのではないかと思います。

唐沢先生 最近は「解いていておもしろいと思える問題を1題は出したいね」と話していて、将棋、オセロなどゲームやパズルの要素を取り入れた問題も出しています。

袴田先生 今回、魔方陣の問題を出しました。数字を埋めていくのですが、これも小学生が解けるように工夫して出題しました。次年度の受験生が、過去問を解いた時に「おもしろい」と思ってくれる、そういうことも意図して問題を考えています。来年は入試の日程が変わります。2月5日が4日になりますが、どこかでパズル的な要素を絡めた問題を出したいです。

インタビュー1/3

桐蔭学園中学校男子部
桐蔭学園中学校男子部「私学にしかできない、私学だからできる教育の実践」を掲げ、「真のエリートの育成」を目指し、昭和39(1964)年4月、横浜の北郊、緑深い丘陵地帯の一角に、桐蔭学園は誕生した。創立以来、一貫して日本の未来を担(にな)う真の英才を育てる場として、教育内容・施設の整備・拡大を図っており、「知育」「徳育」「体育」という、人が成長する上で最も大切な要素を育てる学園の理念、「桐蔭イズム」は、いまでは多くの人々に広まっている。創立以来掲げてきた「自由・求学・道義・愛国」という4項目の建学の精神に加え、平成26(2014)年創立50周年を機に、「自然を愛し、平和を愛する国際人たれ」という一項が加わった。桐蔭学園の校章は、五三の桐(ごさんのきり)。歴代理事長の母校、旧制東京高等師範学校(現・筑波大学)の校章にちなんでおり、桐には、瑞鳥、鳳凰(ほうおう)が宿るとされている。
中学高校は高校2年までは男子部と女子部に分かれており、高校3年では男子部と女子部が合同で志望コース別授業を受講するといった「男女併学」を採用している。高校男子部は理数科と普通科に分かれている。平成13年(2001年)4月には、男子4クラス約160人の桐蔭学園中等教育学校が誕生した。中等6年時には高等学校・女子部との合同の授業も行われている。クラブ活動もさかんで、硬式野球部をはじめ、サッカー部、ラグビー部、柔道部、剣道部、テニス部などが全国優勝するほか、現在でも各分野で全国レベルの成績を挙げている。