中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

カリタス女子中学校

2015年04月掲載

カリタス女子中学校【社会】

2015年 カリタス女子中学校入試問題より

現在の日本の社会は「少子高齢社会」であり、「人口減少社会」であるということができます。現在の日本が「人口減少社会」であっても、今後の「成長」を期 待することのできる産業、そのような産業は、日本にはないのでしょうか。これから日本の人口が減少しても、その悪い影響を大きく受けることなく「成長」す る可能性のある産業とその理由について、最も適切に述べているものを、次のア~エから1つ選び、その記号を答えなさい。

  • (ア)日本の観光業は今後の成長を期待できる。日本の人口が減ったとしても、奈良・京都の仏教寺院や富士山などの観光資源を維持できなくなるとは考えにくく、文化遺産や自然遺産を大切に守りながら、アジアや欧米の国々からの観光客を増やせば、日本の観光業は利益を増やすことができるから。
  • (イ)日本の製造業は今後の成長を期待できる。日本の人口が減ったとしても、所得の低い人たちを低賃金で雇って長時間働いてもらえば、日本国内で今よりも値段の安い製品をつくることができ、それらをベトナムやミャンマーなどのこれから経済成長しそうな東南アジアの国々に輸出すれば、日本の製造業は利益を伸ばすことができるから。
  • (ウ)日本の建設業は今後の成長を期待できる。日本の人口が減ってしまうと、人口の少ない地域は何かと不便なので、人口の少ない地域と人口の多い地域を結ぶ新幹線や高速道路を増やしていけば、日本の建設業は利益を上げることができ、日本の政府も税収を増やすことができて、長い目で見ると一石二鳥の良い効果があるから。
  • (エ)日本の農業は今後の成長を期待できる。日本の人口が減ったとしても、日本の農業は機械化が進んでいて、高齢者でも農作業が容易であり、農業の分野で働く高齢者を増やして米や大豆を増産し、中国やアメリカに輸出すれば、日本の農業は利益を伸ばすことができるから。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、このカリタス女子中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、出題意図についてのインタビューを見てみましょう。

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(ア)

解説

正解は(ア)で、政府も観光庁を設置し、外国人観光客を増やすことに力を入れています。
(イ)は、外国の人たちは低賃金で雇って長時間働いてもらえばいいという仮定自体が考え方としてまちがっているととらえます。(ウ)は、一見正しいように思えますが、新幹線や高速道路がかえって過疎を生むということは、近年指摘されていることでもあります。人口の少ない地域と人口の多い地域が新幹線で結ばれれば、過疎地から大都市に流出する人口が増えてしまうのです。(エ)は、日本の農業は機械化が進んでいるという説明がまちがっています。耕地がせまく、大規模で機械化された農業ができない地域が多いのが日本の農業の特色です。

日能研がこの問題を選んだ理由

選択肢は、中学入試の文章選択肢としてはかなり長い部類に入ります。ア~エのどれもが、2~3つの文からなっており、「○○することができれば」という仮定の上での「期待」が書かれています。ていねいに読んで、論理的な矛盾がないかどうかを確認していく力が求められます。選択肢の問題というと、記述問題などに比べて「すぐに解答が出るもの」「知識の有無だけで解決できるもの」と思われがちですが、この問題は、知識を結びつける力や論理関係を検証する力など、複合的な力が求められる問題だと思いました。

また、問題冒頭の文章は、千葉大学の広井良典先生の、人口減少社会に関する考え方にもとづいた社説を引用しています。一般的にはよくないこととしてとらえられがちな「人口減少社会」を別の見方でとらえるアプローチのもので、受験生にとって発見も多かったのではないでしょうか。このような、角度を変えてものごとをとらえるものの見方は、中学校に入ってからも、また、大学生になってからも必要なことです。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。