出題校にインタビュー!
カリタス女子中学校
2015年04月掲載
カリタス女子中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.自分たちの課題として人口減少問題と向き合う
インタビュー1/3
人口減少はマイナス効果だけなのか
大瀧先生 この問題を含む大問Ⅲのリード文は、人口問題を取り上げた朝日新聞の社説から抜粋しました。一般には「人口減少=悪」ととらえられていますが、エネルギーや食糧の問題から世界の人口増加が問題視されています。私は常々、「果たして日本は人口を増やさなければいけないのか」という問題意識を持っていました。
作問に当たっては、私の問題意識と、普段授業で取り上げている内容が土台にありました。大問IIIの問1で聞いた江戸時代の人口に関する問題は高校の授業でも取り上げています。
資料を見ると、この100年間で急増していることがわかります。現在の1億2000万人という人口が適正かというと、先進諸国と比較しても疑問があります。人口減少に歯止めをかけるのは難しいと思いますが、どうすれば人口減少によるダメージを極力抑えられるか、これからを担う子どもたちは常にこの課題と向き合っていかなければなりません。人口減少を前向きにとらえることができないか、生徒に話をすることがあります。
カリタス女子中学校 校舎
知識と照らし合わせて消去法で正解にたどり着く
大瀧先生 リード文の内容から、現在や今後の問題についての問いを設けたいと思い、時事問題の一種としてこの問題を作成しました。
アは観光業についてです(正解)。日本は多様な文化遺産や美しい自然、おいしい日本食、細やかな行き届いたサービスといった魅力がたくさんありますから、観光立国を目指すことは理解できると思います。日本を訪れた外国人旅行者が増加していることや、春節期間中(2月)に中国人観光客が多数訪れるニュースは最近よく報道されていますから、ニュースを見聞きしていれば、正解ではないかとアタリをつけられるのではないでしょうか。
イの製造業は、「所得の低い人たちを低賃金で雇って長時間働いてもらう」という考え方が明らかに間違いです。「低賃金・長時間労働はよくない」とは習っていなくても、これはおかしいと気づいてもらいたい。
ウの建設業は、いかにも高度経済成長期と同じことをやろうとしています。子どもは「昔に成功したのだから通用する」と考えるかもしれませんが、成熟期の今の日本では当時のような経済効果は期待できません。
エの農業は、機械化はまだ一般には進んでいません。働き手として高齢者に頼るような記述も、後継者不足の現状と合いません。また、「米や大豆を中国やアメリカに輸出する」とありますが、大豆はブランド米のように、高付加価値を付けられるような農産物ではありませんし、現段階で大部分を輸入に頼っている日本が、世界第1位の大豆輸出国であるアメリカに輸出する戦略は考えにくい。これは地理の知識があれば正誤を判断できると思います。
正答率は50%で、予想よりもよい出来具合でした。ウの判断に迷うのではないかと思いましたが、ウの誤答が多かったわけではなく、誤答の選択はほぼ同率でした。
江戸時代は『平和』なイメージを持てなかった
大瀧先生 大問IIIの問1は、江戸時代の後半に人口が増えなかった理由を具体的に2つ挙げる記述問題ですが、2つとも書けた受験生はいませんでした。江戸時代の飢饉は勉強しているはずですが、飢饉について書けた受験生は少なかったです。
飢饉は天保の改革などの幕政改革とはつながっても、人口とはつながらなかったのだと思います。
大瀧先生 「戦争があって人がたくさん死んだ」という答えがとても多かったのは、江戸時代が「戦がほとんどない=平和が続いた時代」というイメージを持っていないということでしょう。授業で「江戸時代は平和だった」と取り上げなくても、「そういえば、戦についてあまり勉強しなかったな」と思い出してほしかったですね。
リード文に、「明治維新以降、まるで爆発が起きたかのように、急勾配で上昇を始める」とあります。このことから、江戸時代と明治維新以降で何が違うのか考えを進めて、「医療技術の進歩」にたどりついてほしかったですね。明治・大正時代に、日本人が世界的な医学業績を上げたことは勉強したと思います。「人口が横ばい→死亡者が多い→医療が不十分」というように考えられると思ったのですが、この答えもごく少数でした。
カリタス女子中学校
歴史の事実を正しく知る
大瀧先生 大問IIIの問4で「日本が敗れた戦争で日本が戦った相手の国」を選択する問題を出していますが、アメリカだけでなく、イギリス、オランダ、オーストラリアを選ぶ問題はめずらしいと思います。これは知らないと答えられません。歴史の事実を正しく知っておいてほしいと思って出題しました。
オーストラリアの人は日本から攻められたことをよく覚えていますが、日本人はあまり覚えていないのではないでしょうか。「知らない」「忘れた」というのは相手にマイナスの印象を与える原因になります。話題に上がったときに、「そういうこともありましたね」と言えるようでありたいですね。
本校は、周りの人々との関係を大切にし、さらに民族や文化の違いを超えて互いに愛し合おうとする「交わる心」を育てています。そのうえでも、相手を知ることは大切なことだと考えています。異文化交流にしても、ある程度の知識がないと話になりません。
インタビュー1/3