出題校にインタビュー!
頌栄女子学院中学校
2015年01月掲載
頌栄女子学院中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.あふれる情報を吟味し、判断できる力を養いたい
インタビュー3/3
身近な自然に触れる機会を与えて興味を持たせる
小島先生 理科に興味を持ってもらえるように、身近な自然現象に触れてもらうこと、そして実物をできるだけ見せるようにしています。例えば、校内には港区の保護樹林がありますので、中1の生物の授業で植物を学ぶ際は、どんな植物があるか調べさせて身近な自然を感じてもらっています。
いろいろな自然現象に触れて、「なぜ?」と思ってもらいたいですね。太陽が毎日、東から昇るのはなぜか?昨日と今日では日の出・日の入りの時刻が違うのはどうしてか?理想は、普段の生活では「当たり前」で済ませてしまわずに疑問を持つこと。それが学びの出発点になります。
理科/小島和夫先生
自分で図をかくことで理解が深まる
小島先生 授業では、黒板に貼り付ける教具を活用して注目させるなど視覚に訴えることも意識しています。文字だけではなかなかイメージするのが難しい現象もあるので、イメージできると理解の助けになります。視覚化したものが正しいかというと、例えば電子模型は厳密には正しいわけではありませんが、視覚化によってイメージしにくい現象も「こんな感じ」とイメージが持てるようになります。
見ているだけ、聞いているだけでは生徒は退屈でしょうから、細胞の構造などをかかせる作業も大事にしています。ミトコンドリアや葉緑体の内部構造のように学校の顕微鏡では詳細な観察が難しいものについては、図説の写真を見ながらスケッチさせています。最近の大学入試ではミトコンドリアの模式図をかく出題もあります。自分でかいてみることで初めて気づくこともありますし、記憶にも残りやすい。理解を深めるためにもスケッチのように自分の手を動かす作業は意味があると思います。
高校の実験は長期休暇でじっくり取り組む
小島先生 高校ではじっくり実験に取り組む余裕がないため、簡単な実験以外、ある程度時間をかける実験については、夏休みや春休みの長期休暇に希望者を集めて実施しています。興味のある生徒が集まるので、“やらされている”様子はなく、みんないきいきと取り組んでくれています。少人数なので、「これをやってみたい」という生徒のリクエストにもその場で応えることもできます。これは希望者対象なので、その分、中学では2時間続きの授業を組んで高校の内容も含め実験を行っています。
頌栄女子学院中学校 教室
理科の“ゼネラリスト”になって生徒目線で教える
小島先生 医師にスペシャリスト(専門医)とゼネラリスト(総合医)がいますが、私は複数科目を教える理科の“ゼネラリスト”でありたいと思っています。中学に関してはどの教員もすべての分野を教えていますが、高校は教員の専門分野だけを教えるケースが多い。しかし生徒は複数の科目を履修します。複数科目をかけ持ちして教えることで生徒と同じような立場になれば、生徒目線でよりよい教え方ができるのではないかと考えています。
生物と化学では同じことを違う用語で教えることもあります。例えば、化学の「アミド結合」と生物の「ペプチド結合」はどちらも構造は同じですが、ペプチド結合はアミノ酸同士のアミド結合のことなので、アミド結合の方がやや意味は広い。両方の科目で教えていると「化学のアミド結合は、生物のペプチド結合とほぼ同じ」と教えることができます。
「生物の用語」「化学の用語」という分け方があるわけではないのですが、中には同じことが別々の用語で表現されていると混乱する生徒もいますから、そこでアドバイスできれば解決できればと思います。複数科目を教えるのは教員全員ができることではありませんから、自分が各分野の教員を結びつける調整役になれればと思っています。
情報を鵜呑みにせず疑問を持ってもらいたい
小島先生 見聞きする情報を鵜呑みにするのではなく、自分の知識と照らし合わせて本当に正確な情報かどうかを考える力、もしくは考える習慣を中高6年間で身につけさせたいと思っています。与えられた情報を自分なりに咀嚼する力、すなわち「科学的リテラシー」ということになります。
例えば小論文の指導で、「インターネットに載っている情報を、出所を吟味せずにそのまま引用してはいけない」と注意しますが、新聞やテレビの情報はすべて信用していいのかというとそういうわけではありません。さも科学的に語って正しいかのように報じていても、正しくないことが少なくありません。そうした報道と関連する内容を授業でちょうど扱っているときは、生徒そのことを投げかけることがあります。
疑問を持たずにそのまま受け取ってばかりいると間違いに気づかないばかりか、判断力など「自分で考える力」が低下してしまいます。厳しい要求ではありますが、当たり前と思われている事柄に目を向けて、ニュース等についても「本当にそうだろうか?」と考えてみてもらいたいですね。
年齢が低い方が「なぜ?」の疑問を持ちやすいと思いますから、幼い頃に自然と浮かぶ「なぜ?」の習慣を大切にしてもらいたいですね。そこで親御さんが面倒くさがらずに、一緒に調べてみるなど丁寧に対応してくださると、「疑問力」が育つと思います。
入試問題も、身近な現象に疑問を持つ習慣が身についていれば解けるような出題を心がけているつもりですし、そうした問題を解く力のあるお子さんに入学していただきたいですね。クラスにそうした生徒がいると、「こんなふうに考えるといいよ」と紹介できます。疑問力を持つ生徒から“伝播”して、他の生徒も疑問が持てるようになれば、授業も活性化するだろうと思います。
頌栄女子学院中学校
インタビュー3/3