シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

頌栄女子学院中学校

2015年01月掲載

頌栄女子学院中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.知識をきちんと理解していれば、わかっていない人に説明できる

インタビュー1/3

『わかったつもり』になっていないか

小島先生 この問題は、「わかっていない相手に説明する」設定になっています。質問してきた生徒に説明して「わかりました」と言うものの、わかったつもりになっていないか、本当に理解できたかどうかは、他の生徒に説明させるとわかります。「太陽光は平行光線である」という知識は受験生なら知っているだろうと思います。それが、単なる知識に留まっているか、自分のものにして定着しているか、この問題で試しています。
仮に、この図を用いずに「太陽高度が45°のときの上半身とあしの影の長さの比」を聞けば、おそらく多くの受験生は解けるでしょう。しかし、この問題の得点率は予想より低かった。多くの受験生が、一見もっともらしいこの図に引きずられて自分の考えが持てなかったようです。
入試という特殊な状況ですが、持っている知識と照らし合わせて、最後まで自分の考えに従って解き進められれば正解にたどりつけると思います。

理科/小島和夫先生

理科/小島和夫先生

図の間違いは『太陽が近すぎる』こと

小島先生 「太陽光は平行光線である」ということを知らなくて解けなかった受験生はあまりいなかったと思いますが、このことを取り上げなかった受験生は結構いました。「正しくない」と思いつつもこの図に惑わされたのでしょう、「太陽光は平行光線である」ということに結びつけられなかったようです。説明になっていない解答が多かったですね。
図の間違いで第一に指摘してもらいたかったのは、「太陽を近くにかきすぎている」ことです。「太陽は本当はもっと遠くにある」ことを説明していることが満点の条件です。このことに触れずに「太陽光は平行光線である」だけの答案は、知識を活用しようとしている、つまり知識が定着していると判断して中間点をあげました。
中間点を含む得点率は3割弱、満点は1割台でした。この図の間違いをきちんと説明するのは厳しいので、満点を取る受験生は少ないだろうと思っていました。それでも、中間点の付く答案はもっと多いと思っていました。うまく説明できていないというのは、理解するところまで到達していないということでしょう。

問題の流れに惑わされない

小島先生 少数ですが、「作図が正しい」と間違いに同意した答案もありました。この問題で「作図が正しい」という考えでは点数をあげられません。この場合、「正しい」としてしまうと「その通りです」ということしか書けません。「正しい」と答えてしまうということは、問題文を読み取れていないということです。
実は、この問題の直前にこの図と似たような図(太陽光線が1本のみ)があります。太陽光線が1本だけであれば太陽が近すぎても成り立ちますが、この図のように光線を放射状に2本かいてしまうと間違いになります。問題の流れから、この図も正しいと思い込んでしまったかもしれませんが、知識をきちんと理解していれば、光線のかき方が平行光線になっていないことを「おかしい」と気づけるのではないかと思います。

頌栄女子学院中学校

頌栄女子学院中学校

言葉足らずは図をかいて説明してもいい

小島先生 「お父さんになったつもりで説明してください」としていますが、大人のような理路整然とした文章を求めているわけではありません。この問題で「図を用いてもかまいません」としたのは、図に引きずられたか、引きずられなかったかを一番に見極めたかったので、文章でうまく伝えられなければ、表現力不足を図で補ってもらえればと思ったからです。少数でしたが、図をかいて説明した受験生もいました。太陽を遠くにかいたり、平行光線をかいたりして、この図との違いを説明してくれました。

インタビュー1/3

頌栄女子学院中学校
頌栄女子学院中学校岡見清致の信仰に基づく教育事業として、頌栄学校を1884(明治17)年に開校。1947(昭和22)年に中学・高校となり、64年に頌栄女子学院と改称。94(平成6)年から高校募集停止、中学・高校6年間を通した教育をおこなっている。併設校に英国学校法人のウィンチェスター頌栄カレッジ(大学)がある。
プロテスタント系キリスト教主義の学校で、聖書の教えを徳育の基礎におく。女性にふさわしい教養を身につけることが方針で、高雅な品位や豊かな国際感覚を備え、社会に奉仕貢献できる人間形成を志す。校名の「頌栄」は神の栄光をほめたたえるという意味。自慢の制服も同校の教育方針に沿い、国際感覚にマッチするものとした。言動、身だしなみについては日常きめ細かく指導している。帰国生との交流により、多様な価値観をも育んでいる。
区の保護樹林に指定される木々に囲まれた運動場など緑にあふれる校内には有名な建築家ライトの高弟の設計による記念堂をはじめ、礼拝堂と講堂をかねるグローリアホールなど施設も完備。ホワイトハウスと呼ばれる校舎や新体育館も近代的。南志賀高原と軽井沢に山荘をもつ。食堂は高校生から利用可(テイクアウトは中学生も利用可)。パン類の販売あり。
中学では英・数の多くがクラス分割などの少人数制授業。このなかでは高校で学ぶ内容も取り入れられている。英・数は時間数も標準より多い。聖書の授業も週1時間組み込まれている。中3の数学では習熟度別授業を導入。中3では卒業論文を制作、夏休み前から準備し、6000字以上でまとめる。高2からは文科と理科、さらに高3では理科コースが2つに分かれる。進路に応じた選択科目も多数用意されている。中学では主要教科を中心に昼休み・放課後に補習を実施、高校では長期休暇中にも受験講習を行っている。ICU、青学、早慶などに推薦枠があるのも大きな魅力だ。
2期制で、土曜日は休日としている。1日は礼拝で始まり、中学・高校とも週1回の合同礼拝もある。高校では礼法の授業がありしつけにも厳しい。タータンチェックのスカートの制服はあまりにも有名。校内にはイギリスの学校の雰囲気が漂い、生活スタイルも校舎内で革靴を履いたまま過ごす欧米流。クラブ活動ではハンドベルクワイヤーや弓道部が知られている。花の日礼拝、イースター、クリスマスなど礼拝形式の行事が多く、そのほかキャンプ、コ・ラーナーズ・デイ(研究発表会)、頌栄フィールド・デイ(運動会)、カナダとイギリスの語学研修など盛りだくさん。奉仕活動にも力を入れている。