シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

東京女学館中学校

2014年08月掲載

東京女学館中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.何事も、自分から一歩を踏み出さなければ始まらない。その力をつけて自分の人生を切り拓こう。

インタビュー3/3

大学受験も団体戦。高2から一気に結束力が強まる

阿部先生 高校では文理選択を行い、それぞれの道へと進んでいきます。高校生の勉強は「自分で」という傾向が強いと思うのですが、私が担当する物理の選択授業を受講する生徒たち(約30人)を見ていると、「皆で一緒に頑張る」という意識がとても強いのに驚かされます。

手始めは文化祭です。高2の段階で「日頃、自分たちが取り組んでいる実験を文化祭で披露しよう」という声があがり、それをやり遂げると、勢いそのままに結束力を強めていきます。授業がないにもかかわらず、高3の3学期も登校し、特別授業に参加したり、図書館を利用したりと最後まで「一緒に志望校合格を目指そう」という雰囲気を作り上げるのです。

結束力は学内の行事にも反映されて、生徒は高3の体育大会(9月)で優勝することにもとてもこだわります。暑い最中に一生懸命練習するエネルギーや、みんなで一つのことをやり遂げる体験が、大学受験の成果につながっていると思います。

理科/阿部先生

理科/阿部先生

学びたい分野で大学を選ぶ傾向

阿部先生 女子だと医療系、薬学系に進む子が多いと思いますが、最近、本校では機械や建築など理工系を志望する生徒も増えてきました。今までは、就職のことなども考えて大学選びをしている感がありましたが、最近は、学びたいことが、本人たちの中で大きなウエイトを占めているように思います。

芸術系から法学、理工など、非常に志向の幅が広いのも本校の特徴です。中高6年間にいろいろなことを体験する中で、いろいろな可能性があることに気づいてチャレンジしていく…。そういうカラーがあるように思います。

理系の生徒さんに限らず、文系の生徒さんにも、理系のものの見方や考え方を身につけさせることもできていて、素晴らしいですね。

阿部先生 校舎が新しくなって10数年経ちますが、今は広い実験室があり、物品も揃ってきて、生徒がフルに実験できる環境が整っています。普通教室に理科用の机を持ち込んで実験をしていた時代と比べたら、雲泥の差です。次はどんなことで生徒の興味を引こうかと、遅くまで残って準備に余念のない教員もいますし、外部の研究会に出かけて、学んだことを生徒に還元している教員も多くいます。

国際学級は文化の化学反応が魅力

国際学級の中から感じることはありますか?

阿部先生 うちの国際学級は帰国子女ばかりではありません。そこに日本で生活をしている生徒が混ざって醸し出している交流文化があります。そのため海外だから、日本だからということは言えませんが、中1から高1まで、通して見てきて感じることは、英語に特化したクラスに入ることを、小学生の段階で決めた生徒たちなので、学ぶモチベーションは英語に限らず、他教科に対しても高い傾向が見られます。

また、中学の段階では言葉の壁があり、一般学級と同じような伝え方では、伝わらないところが出てくるので、くどいくらい丁寧な説明に心がけています。そのため、最初は理解に時間がかかり、成績が振るわない生徒もいますが、コツコツと継続することで優秀な成績を修めるようになる生徒もすくなくありません。一般学級に比べるとやりとりが活発で、思ったことをストレートに口にします。先生が求めているものから逸脱しないか、恥ずかしくないかなどと考える生徒はいません。そういう前向きで、バイタリティがある生徒が多いので、これからが楽しみです。

取り組みとしてはおもしろいですよね。

阿部先生 国際学級なのに、英語がまったく話せない人も入れるという点では画期的ですよね。6年間クラス替えがなく、同じメンバーで過ごすので、文化を吸収し合いながら成長していく化学反応が魅力の学級ではないかと思います。

東京女学館中学校

東京女学館中学校

小学生らしくハツラツとしているお子さんが伸びる学校

最後に、受験生に向けてのメッセージをお願いします。

阿部先生 この学校を知り、ここで学びたいという気持ちを持って入ってきてほしいですね。いろいろな学びを用意していますから、積極的にかかわりをもって、成長してほしいと思います。

理科でも、先ほどお話した「学習講座」をはじめ、感動体験を積ませる工夫をしていますが、社会でも、校内ビオトープの一角で古代米を作り始めたり、週末に「歴史散歩」というイベントを企画し、生徒のみならず、保護者の参加も募って、いろいろなところに出かけたりしています。参加してみると思いもよらないことが起きたり、新しい人との出会いが待っていたりします。自分から楽しみを見つけようとする子には、とても楽しい学校だと思います。何事も参加しなければ始まりません。小学校では「やってみると意外と楽しい」という経験を、たくさんしてきてほしいと思います。

経験を積んで、自分の価値に気づける人になろう

小関先生 心に響くものは経験でしか獲得できないので、どんどん行動してほしいですね。今の子たちは知識をもっているので、ある程度先が読めてしまいます。「これをしたらこうなるとわかっているからやらない」「面倒くさいからやらない」と自分でブレーキをかけてしまうところがありますが、ブレーキをかけるのは大人の役目。止められるまで、どんどん突っ走って、心に響くのは自分の体を動かして得た経験しかないということをわかってほしいと思います。

先輩たちが、電子、工学、芸術など、多方面に進んでいくのは、自分でやりたいことを経験を通してわかっているからです。女の子だから薬学に進む、生物に進むというのは社会の価値観であって、自分の尺度ではないので、自分なりの見方ができて自分なりの価値観に気づける人になってほしいと思っています。

東京女学館中学校

東京女学館中学校

インタビュー3/3

東京女学館中学校・高等学校
東京女学館中学校・高等学校伊藤博文が創立委員長として発足した「女子教育奨励会」が母体となり、1888(明治21)年に設立。建学の精神は「諸外国の人々と対等に交際できる国際性を備えた、知性豊かな気品ある女性の育成」です。インクルーシブ・リーダーシップ(共生し協働する力)を養うために、生徒会、クラブ、さまざまな行事を生徒による実行委員会方式で実施。
「国際学級」は英語に特化したカリキュラムで、実践的な英語力を養成。一般学級でも英語習得を中心とした国際教育を重視。英語や英会話はクラスを2分割します。アメリカ文化研修は、働く女性の職場から家庭まで密着するというユニークな文化交流。さらに、日本の文化にも力を入れ、茶道・華道体験、歌舞伎や能楽の鑑賞、京都・奈良への修学旅行(高2)などを実施。中3の修学旅行は沖縄で、平和や環境問題を学びます。
白のセーラー服に青いリボンの制服は1930(昭和5)年に制定され、「品性を高め、真剣に学ぶ」精神を象徴。中1では60歳以上の卒業生へのインタビューも交えたスクールアイデンティティ学習を実施。体育大会では、17世紀のフランス宮廷ダンス「カドリール」を高3が制服で踊るのが伝統。クラブではオーケストラ、ダンスが人気。茶道部は表千家・裏千家があります。食堂の手作りパン、ソフトクリームは大人気。