出題校にインタビュー!
東京女学館中学校
2014年08月掲載
東京女学館中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.「なるほどね」「おもしろい」そんな気づきを大事に、理科への興味を広げていく。
インタビュー2/3
理系、文系に限らず、理科や数学の力は必要
阿部先生 先日、教育実習生の授業(中1)を見に行くと、顕微鏡で細胞を見ることができた生徒がワァーッという声をあげていました。細胞がどういうものかという知識はある、あるいは写真では見たことがあるけれど、本物は見たことがなかったのでしょうね。
小関先生 中1は実験の心構えや道具の基本操作などを学ぶ時間が多くなりがちなのですが、こうした観察や、実験、解剖などに対する反応はいいですね。
阿部先生 素直にリアクションしますよね。これから何を見せてくれるのかなと、期待を持ったのではないでしょうか。こうした感動や期待感を大事に、実験・観察などをふんだんに取り入れて積み重ねていくところが、女学館の理科の特徴だと思います。
高2で文理に分かれますが(理系は2クラス分程度)、文系の生徒にも実験をしっかりやらせています。それは、何事も感覚で判断するのではなく、科学的な根拠を集めて精査し、考え、自分なりの尺度を持つことが大切だと思っているからです。情報があふれている時代だからこそ、鵜呑みにせずに、根拠をもって自分で判断できるよう、文系の生徒にも日々の授業の積み重ねの中で、理科や数学の力を身につけてほしいと思っています。
理科/小関先生
中学理科の総決算は“絵本”づくり
阿部先生 中学生の理科の締めくくりとして、中3に、中学時代で習ったことを絵本にする課題を与えています。テキストなどにあるものを丸写しするのではなく、生徒一人ひとりがテーマを選び、オリジナルのストーリーをつくって、A4の用紙8枚にまとめます。
小さい子供に電流、磁界など、理科の「ある現象や事柄」を伝えるとしたら、どう伝えるか。それを考えさせると、私たちが入試問題をつくる時にかみくだく作業をするように、彼女たちもいろいろとアイデアを絞り、考え、オリジナルの作品を提出してくれます。
テーマは自由なのですか?
阿部先生 そうです。3年間を振り返って各自が好きなテーマを選びます。比較的絵が描き易い生物・地学分野の作品が多くなりますが、力のある生徒には物理・化学分野で描くことを勧めています。原子や分子など目に見えないもので作品をつくるのは難しく、チャレンジすることで実力アップにつながるからです。
長く続いている取り組みなのですか。
阿部先生 30年以上前から行っています。2学期の最初の授業で全員の作品を回覧すると「こんなアイデアがあったんだ」と感心したり、「同じ話を聞いていたのに○○ちゃんはこんなふうに、この現象を理解していたんだ」と気づかされたり。生徒同士でおかしいところを指摘し合い、「私の解釈は違っていた」と気づくこともあります。
絵本にすることで理解が深まる
抽象的な概念を、自分の理解とは違う形で表現するまでに、生徒さんは相当、確認作業をしているでしょうね。
阿部先生 まずは割り付けをして、ここではこういうことを説明したい。そのために有効な表現は?というように考えていますね。それほど難しい現象を扱うわけではないのですが、しっかり理解していないと、プロセスを踏んで説明することができません。それも狙いの一つです。このような課題を出すと、生徒が頭の中で考えていることをつかむことができるのでおもしろいです。
中2は動物がテーマです。ストーリーをつくるのは難しいので、動物園や水族館に行き、体のつくりなど、授業で学んだことを視点に集中的に観察し、まとめるという課題を出しています。はじめ夏休みの課題として出したのですが、夏は暑さで動物の動きが鈍いので、ゴールデンウィークから夏休みの間と、ある程度の期間を設けて実施しています。
毎年、受け持つ教員は異なりますが、中2の動物観察と、総合学習での環境の調べ学習、中3の絵本づくりは時間をかけて取り組ませています。
東京女学館中学校
優秀作品は文化祭で発表
評価はどのようにされているのですか?
阿部先生 評価をしないと、どういうものが求められているのかわからないので、優秀作品を文化祭で展示発表しています。中3はストーリーを重視しています。こうした観点を伝えても、絵本なので、生徒は絵が上手で、見栄えのいいものが評価されると思っているところがあります。マンガ研究部の子などはスクリーントーンを貼って、市販できるようなレベルで仕上げてきます。多彩な人物を登場させるなど、凝る生徒もいますが、私たちが求めているものはそうではありません。字が少なくても、絵がおぼつかなくてもいい。わかりやすくストーリー化して現象を説明できている作品を求めています。そのことを示すためにも、優秀作品の選出を行い、文化祭で展示発表しているのです。
中3の生徒さんは今頃、取り組んでいるのでしょうね。
阿部先生 そうですね。どんなものが出てくるのか楽しみです。生徒の印象に残っているものがテーマとして扱われることが多いので、今年は第1分野ばかり、第2分野が少ないとか、このテーマが多いなとか、学年により特徴が出ます。生徒の興味を把握する機会としても、大変有効な方法です。
毎年、理科が苦手でも絵本づくりで頭角を現す生徒がいる
作品の出来栄えと理科の成績はリンクしていますか?
阿部先生 これがおもしろくて、必ずしも成績とは一致しないんですよね。(理科の)成績のいい生徒は、私たちが求めていることを理解しますし、知識も豊富なので、あの切り口でいこう、この切り口でいこうと、いろいろな方法を考えてきます。しかし、普段はまったく目立たず、理科は苦手で…という生徒が、絵本づくりで頭角を現すことが毎年あります。「絵を描くのなら」と、実力以上のものを発揮してくれた生徒たちが、この課題をきっかけに理科への興味を広げてくれたらうれしいですね。
東京女学館中学校 絵本
生徒のための、気づきの機会が盛りだくさん
阿部先生 実は今日、この時間にカエルの解剖をやっています。授業でもやりますが、更に発展的な内容を希望する生徒のために「学習講座」という形で理科とつきあえる場を設けているのです。
「学習講座」は自由参加。これまで解剖やモデルロケットの製作、石けんづくりなど色々なものを開講してきました。理科の授業ではそれほど興味を示さない生徒が「このテーマなら」と参加することも珍しくありません。「絵本づくり」も、卒業生が「印象に残っている」とよく言ってくれる取り組みですが、6年間授業を持ったことのない生徒から「ロケット製作はよく覚えている」と言われると、やりがいを感じます。
このように、生徒たちにいろいろなところで刺激を与えていきます。それが女学館の理科の特徴で、受験問題に接した時にも、ハッと気づいたり、おもしろいなと思ってもらえたりすることを盛り込むことが大切だと思っています。
インタビュー2/3