シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

栄光学園中学校

2014年06月掲載

栄光学園中学校【算数】

2014年 栄光学園中学校入試問題より

A地点からC地点までの一本道の途中(とちゅう)にB地点があり、A地点からB地点までが下り、B地点からC地点までが上りになっています。
今、太郎と花子の2人が、A地点を同時に出発して、B地点を止まらずに通過してC地点まで向かいます。歩く速さは、太郎、花子ともに、下りよりも上りのほうが遅く、また、太郎、花子ともに、下りの途中、上りの途中で歩く速さを変えることはないものとします。
2人が出発してからの時間とそれまでに2人が進んだ道のりの差(2人の間の距離)の関係を表すグラフを考えます。グラフは2人ともC地点に到着(とうちゃく)するまで描(か)くことにします。
どちらかが先にC地点に到着したら、もう一人が到着するまで止まっているものとします。

(問1)グラフが下のようになるのは、2人の速さの関係がどのような場合か説明しなさい。

問1

(問2)グラフが下のようになるのは、2人がどのように歩いた場合ですか。一例をあげなさい。

問2

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この栄光学園中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例
(問1)

下る速さは同じで、上る速さが異なる場合。

(問2)

まず、太郎がB地点を通過し、その後、花子がB地点を通過すると同時に太郎がC地点に到着し、最後に花子がC地点に到着する場合。

解説
(問1)

グラフの傾きが変化するア、イ、ウの時点に着目して、2人の速さの関係をとらえます。アまでは、2人が進んだ道のりの差がないため、2人ともA地点からB地点まで同じ速さで歩いていたことがわかります。

ア~イでは、2人が進んだ道のりの差が開いていくため、太郎か花子のどちらかが速く歩き、先にC地点に到着したことがわかります。

イ~ウでは、2人が進んだ道のりの差が縮まるため、太郎か花子のどちらか1人だけがC地点まで歩いていたことがわかります。つまり、「下る速さは同じで、上る速さは異なっていたこと」を、グラフから読み取ることができます。

問1 解説

(問2)

(問1)と同じく、グラフの傾きが変化するエ、オ、カの時点に着目して、2人がどのように歩いたのかをとらえます。たとえば、次のようにグラフを読み取ることができます。

エまでは、2人が進んだ道のりの差が急激に開いていくため、エの時点で、太郎が最初にB地点を通過したととらえることができます。

エ~オでは、2人が進んだ道のりの差がゆるやかに開いていくため、オの時点で、花子がB地点を通過し、太郎がC地点に到着したととらえることができます。

そして、オ~カでは、2人が進んだ道のりの差が縮まっているため、花子だけがC地点まで歩いていたととらえることができます。

つまり、「最初に太郎がB地点を通過し、その後、花子がB地点を通過すると同時に太郎がC地点に到着し、最後に花子がC地点に到着した」と、グラフから読み取ることができます。

問2 解説

日能研がこの問題を選んだ理由

具体的な数値情報が示されていない中で、グラフから考えられる状況を推測していきます。グラフの変化する部分と変化しない部分に着目することで、動きのようすを明確にすることができます。着眼点を自分で明確にしていくチカラ、限られた情報から状況を推測していくチカラ、そして、確定する部分と確定しない部分の境界線を明確にするチカラ、このようなチカラは、これからの時代を生きていく子どもたちにぜひ身に付けてほしいチカラであるといえるでしょう。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。