中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

浅野中学校

2014年05月掲載

浅野中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.グローバル社会で役立つ「ものの見方」や「考え方」を授業の中で学んでほしい。

インタビュー2/3

他教科と情報を共有して学びを深める

記述のスタイルを身につける上で、主導を握るのは国語科であることが多いのですか。

麻生先生 国語科が担当することが多いですが、内容によっては国語科だけに限りません。例えば、本校では高1の現代社会で生命倫理について学びます。安楽死の問題、尊厳死の問題、脳死の問題などですね。これはまだ試験的に取り組んでいるにすぎないのですが、中学生の教材としてそういうテーマを扱った場合、「何を教わったのか」を尋ねて、それをもとに高校の授業を展開することがあります。

入試で出した問題を、入学後にさらに発展させるということはしていますか。

麻生先生 意識することはあります。高1の現代社会の授業でこの問題を使い、形式的平等と実質的平等の話をしました。

社会科/麻生 徹先生

社会科/麻生 徹先生

覚えるべき事柄はしっかり覚えてほしい

受験生にどんな力をもって入ってきてほしいと考えていますか。

麻生先生 覚えるべきことは覚えてきてほしいと思っています。最近中高生を見ていて思うのは、基本をないがしろにしている子が少なからずいて、「自分の考えを言ってごらん」と言うと積極的に話すのですが、テストで書かせると、意外と基本的なことがわかっていません。

それがまずいと思うのは、本校は大学進学を目指す子がほとんどなので、基本的なことが頭に入っていないと東大の歴史の問題などはどうしようもないのです。それも社会科の力だと思うので、普段から「気をつけてほしい」と生徒に言っています。本校の入試問題でいえば、今年の歴史の問題などは、きちんとできてほしいですね。

基本的なことをないがしろにしているという傾向は小学生にも見られます。ちょっと頑張れば覚えられることを、覚えない風潮はどこから来ているのかと、私たちの間でもよく話題になります。

麻生先生 これは私見ですが、学校説明会などで受験生のご父母と話をすると「どうすれば点数を取れるのか」という質問をたくさんいただきます。それに対して私は、「社会科の力には、社会科的な知識や概念を使って考えることも含まれるので、基本的なところを押さえてください。それができて初めて応用があり、発展があり、新聞を読むということも活かされてくるんじゃないかと思うんですよ」と申し上げます。おそらくお父さん、お母さんは「浅野の社会は難しいから、新聞を読みなさい」というアドバイスになってしまい、もう少し大切なところに目が行かなくなってしまうということがあるような気がします。あるいは、社会科が苦手な子のお母さんは焦ってしまい、そういう質問をされるのかなと考えることもあります。

基本的なところは押さえているという前提で進める授業もある

入学後、ある程度基本的なことは知っているという前提で授業は行われているのですか。

麻生先生 そういう場合もありますね。日本地理や日本史などは、基本的なところは押さえているという前提で進める場合があります。例えば、地理で、ある地方のことを最初からやりましょうというのではなくて、小学校では教わらなかったような視点で教えていると、地理の教員から聞いたことがあります。歴史も史実を追うだけでなく、その背後にある考え方をも含めて話をするようにしているはずです。そうしないと、授業を聞いていておもしろくないからです。この入試問題をくぐり抜けた多くの生徒は、基本的なことを理解していて、同じことを繰り返すことになりますからね。

浅野中学校

浅野中学校

社会科的なものの見方や考え方に興味を持ってほしい

社会科を学ぶ時に、興味がふくらむ勉強法はありますか。

麻生先生 教科書の内容をきちんと押さえることは必要だと思いますが、それと同時に見方や考え方に興味を持ってもらうといいと思います。

世の中が変化する中で、どんな見方をすればいいのでしょうか。

麻生先生 分野によって、アドバイスの仕方は違ってくると思いますね。例えば歴史は、過去に起きた事実を扱っているわけですから、失敗事例や成功事例を今の政治に重ね合わせながら論じると、強い方向性が出てくると思います。

公民はダイレクトに政治システムを扱ったり、背後にある考え方を扱ったりします。先ほどお話した安楽死や尊厳死など、ナーバスな問題を扱うこともあるので、私は、私の考えを強力にプッシュしないように気をつけています。ただ、レポートで「尊厳死は賛成」と書いてきた生徒に、あえて逆の意見を書くこともあります。

両方の視点でものを見て、自分で判断しなさいというメッセージですね。

麻生先生 そうです。例えば、「尊厳死は認めるべきだ」「法制化すべきだ」という強い意見に対しては、「法制化にはこういう問題もあるよね」と投げかけます。

生徒がどう判断するかは別として、物事は自分の意見だけでは成り立ちません。反対者の意見をよりフォーカスするような形で、明証的にまとめる力がなければ説得力がないと思います。特に本校では難関大学に進んで、将来、社会のリーダー的立場になっていく子が多いと思っていますから、そういう判断力は養ってほしいと思っています。

高1では難しくても、大学生になって理解してくれれば成功

麻生先生 よく考えて、自分なりの答えをきちんと見出す力を養ってほしいので、中3、高1あたりでそういう機会を持たせたいと思っています。尊厳死、安楽死、脳死などの問題を深く考えることは、まだ難しい年齢だと思いますが、あえてそういう機会を作り、考えてほしいという気持ちは非常に強いです。

そういうような意図をもって接することで、生徒に変化は見られますか。

麻生先生 テーマそのものに興味をもつ子もいますし、私が非常に嬉しいと思うのは、大学生になった子と話をした時に「あの時にやったことはとても大切でしたね」と言ってくれることです。そう言ってもらえたら成功かなと思います。

高1の時に、なぜ、こんなことをするのか、疑問に思ってもいいと思うのです。すべてのテーマに興味を持てなくてもいいと思うのですが、授業で学んだ考え方を生かして、いろいろなことを考えてくれればいいと思っています。

例えば歴史にも、歴史観があります。中学から高校へ、学年が上がるにつれ、「こういうことで歴史は成立するのか」と、段々気づいてくれる子もいますが、公民の授業をとおして、そういうところに気がついてくれてもいいと思っています。

浅野中学校 校舎

浅野中学校 校舎

興味のある生徒を募って社会科見学を実施することもある

今、何かと理科系に注目が集まりますが、社会科で興味を深める、思考を磨くという点で工夫されていることはありますか。

麻生先生 これは検討している最中なのですが、教員間で「興味のある子を集めて、発展的なことをやる会があってもいいよね」ということは話しています。

また、これはすでにやっていることですが、実際に見に行くということをしています。本校では6月に国立劇場に歌舞伎を見に行きます。近くに国会議事堂や最高裁判所があるので、以前は最高裁判所の見学を実施しました。50名程度で見学の申し込みをしていたら、100名集まってしまったので、急きょ「倍の人数になってしまった」と連絡し、お願いして、見学させてもらいました。

それから何年か前に、地理の担当の教員が中学生を工場見学に連れて行ったこともあります。その時は1クラス弱くらいの人数でした。

社会科がグローバル化に対して無頓着であってはいけない

スーパーグローバルハイスクールという新しい事業も始まりました。グローバルな視点、グローバルな人材を育てる上で、必要なのは、自分を知ること。その根っこにあるのは歴史だと思うのですが……。先生はどんなふうにお考えですか。

麻生先生 グローバルというと英語を思い浮かべますが、英語はツールなんですよね。問題はそれを使ってどうするか、だと思っています。つまり社会科としては「何を発信するか」という部分を育てなければいけないわけです。

今、おっしゃいましたが、歴史であれば、日本的なもの、日本の伝統、とよく言いますが、それは何か。そういうことを考える機会を、日本史の授業に散りばめて、触れたり、掘り下げたりしています。

地理では、学習内容を通して日本や世界の文化を扱うので、そういうところで話をするでしょうし、公民ではある国で起きていることよりも、いろいろなところで起きていることを取り上げています。例えば、高1で生命倫理という話をしましたが、クローン問題等の科学技術の提示する問題を扱うこともあります。現代社会において科学技術の問題はキーワードになると思います。理科、数学で教えるのは中身ですよね。ただ、それは社会的に見るとどういう位置づけか、などというのは社会科の領分だと私は思っています。理想をいえば理科とタイアップしてやるのがいいのでしょうが、時間的に厳しいので、理科の先生に「こんな話をしますよ」と断って話をしています。そういう知識をもとに考えていくというのが、地球市民として生きるということではないかと思います。当然のことですが社会科がグローバル化に対して、無頓着であるわけにはいかないし、逆に各分野独自のアプローチでグローバル人材の育成に貢献できると考えています。

社会科/麻生 徹先生

社会科/麻生 徹先生

倫理では、美術史からアプローチすることも

タイアップという言葉が出ましたが。公民分野は特に複合的な部分が多いですよね。歴史的背景や地理的条件を知らなければいけないなど、他の分野と絡む部分があると思いますが、歴史や地理の先生と相談し合うということは、ありますか。

麻生先生 それは結構ありますよ。いろいろな知識の分野をまとめて知見を出すというのも、我々の仕事だと思っています。

社会科は、いろいろな分野をつなぐネットワークのようなもの。そんなふうに大学時代の恩師に言われたことを思い出しました。社会科の先生がいろいろな教科をつなぐ役割をもっているような気がします。

麻生先生 そこに目を向けると、いろいろなところに関係していますよ。例えば高校の倫理でただ思想史を話してもおもしろくないじゃないですか。そこで私は、自分が興味のある絵を持ち出して、美術史からアプローチすることもあります。いろいろな教科の教員に質問をしに行くので、変な奴だと思われていたかもしれませんね(笑)。いったい授業で何をやっているのかと思われているかもしれません。

倫理や政経の授業だと思って話を聞いていたら、絵画が出てきて、その中に表現されている宗教的な思想や考え方に出会えたら、すごく楽しいですね。

麻生先生 美術史は中3でやるんですよ。高1は直前に聞いているので、取り入れやすいんですよね。

別なものだと思っていたものがつながったら、新鮮なんじゃないですか。

麻生先生 そう思ってもらえたらいいですね。

先生のご専門は?

麻生先生 倫理です。

何を研究されていたのですか。

麻生先生 芸術は一つの規範性だと思うんですよ。その時代の価値観が表れていると思うのです。19世紀はロマン主義、その前が古典主義などと言われていますが、その境界は曖昧で、大学では関係性をとらえることをやっていました。倫理の教科書に載っている思想家ではなく、すき間的なところを学んでいたので、そこから言えることもあるのではないかと思っています。

インタビュー2/3

浅野中学校
浅野中学校1920(大正9)年、事業家・浅野總一郎によって創立。当初はアメリカのゲイリー・システムという勤労主義を導入し、学内に設けられた工場による科学技術教育と実用的な語学教育を特色とした。戦後間もなく中高一貫体制を確立し、1997(平成9)年に高校募集を停止。難関大学合格者が多い進学校として知られているだけでなく、「人間教育のしっかりした男子校」としても高い評価を受けている。
「愛と和、九転十起」を校訓とし、自主独立の精神、義務と責任の自覚、高い品位と豊かな情操を具えた、心身ともに健康で、創造的な能力をもつ逞しい人間の育成に努めることを教育方針とする。校章は、浅野の頭文字で「一番・優秀」の象徴である「A」と、「栄誉・勝利」「幸運・誇り」の象徴である「月桂樹」から形作られており、「常に誇り高き勝利者たれ」という願いが込められている。
ベイブリッジを見下ろす高台にある約6万㎡の広大な敷地の半分は、「銅像山」と呼ばれる自然林で占められている。地下2階・地上5階建ての高校棟には、PC教室、120インチのビデオプロジェクターを備えた語学演習室などがある。2014(平成26)年には新体育館、新図書館が完成、2016(平成28)年にはグラウンドを全面人工芝化。
中高6年間一貫カリキュラムをとおして、大学受験に通用する学力を養成することが目標。授業を基本とした指導が徹底している。英語・数学・理科は中学2年までに中学校の学習範囲を修了。英語は週1時間の外国人教師によるオーラルコミュニケーションがある。数学では独自の教材やプリントが使われていて、中身の濃い授業が展開されている。中学3年・高校1年では「英数クラス」を各1クラス設置。高校2年からは進路志望別のクラスに分けて授業を行う。伝統的に理系志向が強く、理数系ではハイレベルな授業が展開されている。高度な授業展開の一方で、面倒見のよいことも大きな特徴。授業をしっかり理解させるために、補習・追試・夏期講習など行う。
「本校は『各駅停車』の学校です。大学受験行きの特急ではありません。」― これは学校からの受験生へのメッセージ。一歩ずつゆっくりと、しかし、確実に成長させるオーソドックスな指導方針が浅野イズム。
クラブ活動と学習を両立させる伝統があり、中学は98%の生徒がクラブに参加している。ボクシング、化学、囲碁、将棋、ディベートが全国レベル。ハンドボールやサッカーも活躍している。また、毎年9月に「打越祭」の名で、文化祭・体育祭が行われるなど、学校行事も盛んで、生徒一人ひとりが充実した学園生活を送っている。「銅像山」は、傾斜がかなりきつく、クロスカントリーや運動部の走り込みに使われるだけでなく、中学生たちの絶好の遊び場所となっている。職員室や各学年の担任控室をオープンにし、生徒との対話を重視するなど、メンタルケアにも力を入れている。