中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

浅野中学校

2014年05月掲載

浅野中学校【社会】

2014年 浅野中学校入試問題より

1946年11月3日、日本国憲法が公布されました。それから60年以上の年月がたち、近年では日本国憲法の改正について議論が多くなされるようになってきました。政党や新聞社が独自の憲法草案を作成し公表するといったこともおこなわれています。

(中略)

「人権」の内容は平等権、参政権、請求(せいきゅう)権などさまざまです。また、その中心となる権利は歴史的に見て大きく変化してきました。

「平等権」について、「平等」という考え方は、さらに細かく分類することができます。ひとりひとりの違(ちが)いを考えず一律に同じようにあつかう意味での「平等」と、ひとりひとりの違いを考えて結果としての格差を改善するためにあえて異なるあつかいをする意味での「平等」とがあります。前者を「平等A」、後者を「平等B」とした場合、「平等B」に当てはまるものを次の(あ)~(え)の中から1つ選び、その記号で答えなさい。

  • (あ)公平な裁判所による裁判を受ける権利を、国民に対して等しく認める。
  • (い)一定の年齢(ねんれい)に達した国民に、国会議員等の選挙に立候補する資格を認める。
  • (う)市民マラソン応募(おうぼ)者の出場抽選(ちゅうせん)会において、志願者の性別を考慮(こうりょ)しない。
  • (え)経済的事情によっては、授業料を免除(めんじょ)したり奨学金(しょうがくきん)を支給したりする。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この浅野中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、出題意図についてのインタビューを見てみましょう。

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(え)

解説

設問では「ひとりひとりの違いを考えずに一律に同じようにあつかう意味での平等」を平等A、「ひとりひとりの違いを考えて結果としての格差を改善するためにあえて異なるあつかいをする意味での平等」を平等Bと定義しています。選択肢を読んでみると(え)だけが「人によってあつかいが異なる」とわかります。(え)の例では、平等Bは経済的に苦しい家庭にとって非常にありがたいことですが、結果としての格差がなくなることがよいこととはかぎらない場面もあります。それはどんな場面なのかも考えてみるといいのではないでしょうか。

日能研がこの問題を選んだ理由

子どもたちは6年生になると、「法の下の平等」「両性の平等」「平等選挙」などの言葉とともに「平等」という概念と出会います。そして、「消費税が一律8%なのは、果たして平等といえるのだろうか」という事例などから、平等という言葉の持つ二面性に気づいていきます。この話はやがて、中学・高校で学ぶであろう絶対的平等と相対的平等という考え方、または形式的平等と実質的平等という考え方へと発展していきます。

浅野中のこの問題では、その入口となる考え方を「平等A」「平等B」ということばを使って整理しています。絶対的・相対的もしくは形式的・実質的という言葉を知らなくても、説明を読むことで考えすすめることができるのです。平等権についてこのようなアプローチで問いかける問題は中学入試ではめずらしく、子どもたちは知識の有無にかかわらず2つの平等について一生懸命考え、新たな視点を得ることができたのではないでしょうか。

また、この問題をきっかけに「平等とは何か」「平等であるというのはどういう状態をいうのか」という問いの世界に足を踏み出した子どもたちもいると思います。

入試のその場で新たな視点を得られることや、知識を直接問わなくとも、その問いが高等教育へとつながっていることに、この問題の魅力がひそんでいるといえます。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。