出題校にインタビュー!
浅野中学校
2014年05月掲載
浅野中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.平等とはなにかを考え、こんな視点もあったんだと気づいてくれたら嬉しい。
インタビュー1/3
平等とはなにかを考えるきっかけにしてほしかった
この問題の出題意図から教えてください。
麻生先生 平等というと、教科書では「平等権はどのように保障されるか」というところで終わってしまうのですが、一歩踏み込んで考えてみました。
私たちは「平等」「不平等」という言葉を日常的に使いますが、正しく使わないと誤解を生むことがあります。「平等」とはなにか。「不平等」とはなにか。それは意外と根深い問題で、哲学的な問題でもあると考え、教科書の内容は踏まえながらも、違う視点から出題してみようということで、このような問題を考えました。
公民分野の問題は、小学校の内容の範囲で考えると、穴埋めや選択肢から選ぶような、典型的な問題が多いと思います。ですから、受験生も、ハッとさせられたのではないでしょうか。
麻生先生 10年前、20年前の「平等」と、今の「平等」では違うかもしれないですし、社会の変化が激しい今、社会科としては変化する社会にどう対応するかということを、日々、考えてほしいと思って授業をしています。それは本校の生徒だけでなく、受験を考えているお子さんの、決まりきった「平等」に対する考え方ではなくて、本当に正しい「平等」のとらえ方を考えるきっかけにしてほしいと思って出題しました。
社会科/麻生 徹先生
出来はよかった
結果はいかがでしたか。
麻生先生 非常によくできていたと思います。選択肢から選ぶ問題でしたし、選択肢自体もそれほどひねってはいませんでしたので、当然かもしれません。我々の意図としては、先ほどおっしゃっていたように、ハッとしてほしかったということがありますので、そういう意味では出した甲斐があったと思います。
ひっかけではなく「こういう視点で考えてみよう」というメッセージを込めた問題だったということですよね。
麻生先生 そうです。選択肢の問題でも、単に知っているかどうかを聞くような問題ではなくて、それをもとに考えてもらえる問題になるよう心がけていますが、この問題は特に、我々からのメッセージ性が強い問題だったと思います。
選択肢の問題でも、新鮮味のある問題を出したいと思った
どういうことをきっかけに、この問題を発想されたのですか。
麻生先生 今年は憲法など、ベーシックなところを出題してみようというテーマで作問したので、下手をすると典型的な問題になる可能性がありました。
また、最後の大問(大問4)は、受験生諸君が苦労する問題だと思いましたので、時間的な余裕を作る意味でも、大問1~3の中で選択肢が増えるという傾向はありました。だからといって、典型的な問題ばかりではおもしろくないですし、新鮮味もないので、どうしようと考えました。その結果、検討を重ねていく中で、こんな問題はどうだろうと出て来たのがこの問題でした。もちろん、原案はありますが、問題文も選択肢も原案通りではありません。みんなで話し合いながら、こういう形になっていきました。
浅野中学校
基本的なことをしっかり覚えるのは重要なこと
選択肢の場合、2つに絞り込んでいて、外れてしまったというケースは多く見受けられますか。
麻生先生 それもあります。年によっては、最後の2択を難しくする場合もありますが、今年の問題はあまり多くなかったと思います。
でも、確かに採点をしていて、それを感じる答案はありましたね。この子、惜しいな。だけど×だなという答案はありました。
大問4と、この大問3の関係ですが、大問4に大きな記述が来てから、大問3がオーソドックスな問題になっているような気がするのですが、やはりそこはバランスをとっているのでしょうか。
麻生先生 それはありますね。大問4はどんなことを聞いても公民が絡むので、大問3の公民はメリハリをつける意味でも、オーソドックスな問題でもいいと考えています。基本的なことをしっかり覚えるのは重要なこと。頑張った子が点数を取れる問題であるべきだともと思っています。
記述問題で問いたかったのは、大量の情報をいかにまとめるかという力
大問4が大きな記述になってから4年になると思いますが、毎年出るようになって、受験生は準備してきていて、書けるようになっているという印象はありますか。
麻生先生 正直なところ「書けるのかな」と思っていたので、最初はいい意味で驚かされました。こちらが求めていることが、きちんと書かれていたからです。ですから2年目、3年目は、ハードルが上がったのではないでしょうか。
今年の問題はまとめる情報量が多かったんですね。去年までの問題と比べても圧倒的に多かったので、字数120字でまとめきれるかなと思っていました。採点している時には、まとめるのに苦労している受験生が多かったように思いました。ただ、満点に近い点数を取れる子がそれなりにいたのには驚きました。ですから、苦労しつつも力はあるなと思いました。
今年はAとB、各グループの政策により政府の支出がどのようになるのか。さらに、各グループの特徴を「政策」と「資料」を参考にして、3つずつ書かなければならなかったので、私も書いてみたら字数が足りなくなりました。字数を増やすということは考えなかったのでしょうか。
麻生先生 何人かの教員で模範解答を書いてみて思ったのが、コンパクトに書いてほしいということでした。誰が書いても120字では無理ということなら仕方がないのですが、そうではなかったので120字で出題しました。
社会科/麻生 徹先生
平均6~7割。8~9割書けていた子は少なかった
どちらの支出が多くなるかは、文章を読み取ることができれば書けたと思いますが、特徴を3つずつ挙げるところで、文字数が足りない、まとめきれないという子がいたのではありませんか。
麻生先生 そうですね。6~7割書けていればいいほうだと思います。8~9割書けていた子は少なかったです。
ただ、3つの要素を拾っていた子は結構いたような気がします。うまいなと思ったのは、最初にAのグループはこうと説明した上で、3つの特徴をコンパクトに書き、次にBのグループは……と、同じようにコンパクトに書いている子です。その子にはいい点がつきました。
それはすごいですね。
麻生先生 ただ、そういう受験生は少なかったです。
考えの途中を見るということは意識されていますか。
麻生先生 記述問題では、そういうところも見たいという意図を持って出題しています。記述問題で満点を取れる子はほとんどいません。逆にまったく点数を取れない子もほとんどいません。白紙で出されてしまうとどうしようもないですが、何かしら書いてくれていれば部分点が入りますので、あきらめないで取り組んでほしいですね。
経済は、小学生にとって実は身近な分野
大問4のテーマで、先ほど必ず公民分野がかかわるというお話がありましたが、毎年の問題を見ていると、経済や政府のお金の使い方を問うことが多いように思います。そこに意図はありますか。
麻生先生 公民分野のベーシックな問題の中に経済の問題は少ないですよね。だから聞いてみたいと思いました。
中3の公民を担当していて思うことは、経済のほうが生徒のノリがいいのです。経済は身近なんですね。小学生の教科書に経済分野の話題はあまり載っていませんが、コンビニでおにぎりを買うことも経済活動なので、なんらかの形で経済的事象について問えないかなということが、問題を考える出発点の一つになりました。
小学校でも(経済を)もっと扱ってもいいですよね。
麻生先生 扱っていないわけではないと思うんですよ。経済ととらえてはいないかもしれないですけど……。例えば地理などで扱っているはずです。
算数でも、物の売り買いなどの問題がありますよね。
麻生先生 そうですよね。他の教科でも、近いことはやっているはずです。
お金の流れは、子どもたちにとって見えないものでもありますよね。最近は現金が動かなくても、いろいろなところでお金が動くので、それがすごくわかりにくいようです。株や為替については、中学校に入ってから学んでくれればいいなと思っているのですが……。
麻生先生 それは中学生でもなかなかわかりづらい分野だと思いますね。
浅野中学校 校舎
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