シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

日本大学中学校

2026年10月掲載

日本大学中学校【国語】

2026年 日本大学中学校入試問題より

(問)次の太郎と花子の会話文を読み、太郎が食べたものの値段を、下の❶から❹の中から一つ選び、その番号で答えなさい。

太郎 いやー、美味(おい)しいお店を紹介(しょうかい)してくれてありがとう。花子さんの言う通り、本当に「安い・早い・ 美味(うま)い」お店だったね。

花子 気に入ってもらえてよかった!太郎さんの好みのお店だと、前々から思っていたんだ。

太郎 けど、花子さんの話では「千円弱」で食べられるってことじゃなかったっけ?

花子 え?実際に「千円弱」だったじゃない。

太郎 いや、あの値段は「千円強」だよ。

花子 太郎さん、何を言っているの?「千円弱」でしょ。

太郎 花子さんこそ、何を言ってるの?「千円強」だよ。

花子 「~弱」と「~強」という言葉の解釈(かいしゃく)が違(ちが)うようね…。

太郎 解釈の違いなのかな?調べてみるよ。

―太郎がスマートフォンをいじる―

花子 どうだった?

太郎 辞書を調べてみたところ、「~弱」が「その数よりも少し少ないこと」を表し、「~強が「その数よりも少し多いこと」を表すようだね。

  • ❶ 900円
  • ❷ 980円
  • ❸ 1000円
  • ❹ 1080円

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この日本大学中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

❹

解説

「~弱」は「その数よりもやや少ないこと」を表します。たとえば、「目的地には1時間弱で到着する」といった場合は、55分など1時間より少し短い時間で到着するということです。「5kg弱」といったら4.8kgなど5kgより少し軽く、「200人弱」といったら190人など200人よりわずかに少ない人数を表します。それに対して「~強」は「その数よりもやや多いこと」を表すので、「1時間強」といったら1時間5分など1時間を少し超過した時間を表します。

「~弱」「~強」という言葉のように、認識のずれが生じやすい言葉は他にもあります。たとえば、「8時10分前」は、7時50分を指します。しかし、近年は8時9分などと解釈されることもあるようです。8時の10分前なのか8時10分の直前なのかで、「8時10分前」が指す時間にはだいぶ差がありますね。

言葉の意味を確認せずに自分の感覚で使ってしまうと、思わぬすれ違いが生じてしまいます。ですから、言葉の本当の意味を確認することは大切ですし、一語の意味にこだわろうとする姿勢が国語の学びにつながります。

日能研がこの問題を選んだ理由

「~弱」「~強」を含め、誤解したまま自分の感覚で使ってしまうことで、他者とのコミュニケーションにおいて思わぬすれ違いを生む言葉は他にもありそうです。問題に出てきた「千円弱」「千円強」を、なんとなく千円くらいだととらえるのではなく、千円を基準として、どうであるから「弱」「強」という言葉が付くのかということを、子どもたちには知っていてほしいところです。また、「千円強」はいくらかという認識がずれることはあまりなさそうで、ほとんどの人は「千円を超える」と認識しているでしょう。つまり、間違いが起こりにくい「~強」に加えて、間違えやすい「~弱」にも目を向けて考えていくところが、この問題のおもしろさではないでしょうか。そして、小学生にとってもイメージしやすい場面と金額を例に出したことで、「千円弱」とはどのくらいなのだろうと考えやすくなっています。ただ単に知識の有無を問うのではなく、言葉が使われる文脈の中で本当の意味に立ち戻る大切さも示唆してくれていると感じました。また、なぜ「~弱」は間違えやすいのか。これは、「弱」を「不足」ではなく「少しのプラス」だと無意識に思い込んでしまうからかもしれません。すると、この問題には「思い込みに切り込む」というおもしろさもありそうです。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。