出題校にインタビュー!
麻布中学校
2026年09月掲載
麻布中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.緻密に整理する力を問う問題
インタビュー1/3
まずはこの問題の出題意図を教えてください。
重田先生 この問題は、問題文に示されたルールを正確に把握し、漏れなく数えられるかどうかがポイントです。場合の数がそれほど多くなくても、重複や数え漏れを防ぎながら緻密に数え切ることは決して簡単ではありません。そうした正確さや注意深さを問う設問となっています。
佐藤先生 試験時間内に体系立てるチカラおよび整理するチカラがどれだけあるかを見たいと考えた問題です。本校では、数学科全体であらかじめ一つの出題方針を決めているわけではありません。それぞれの教員が、「この問題には、こういう力を問える良さがある」と考え、その意見を持ち寄ってすり合わせた結果、実際の出題につながっていくというイメージです。
石塚先生 私見ですが、数が少なくても被らずにきっちり数え切ることって中学や高校、大学の数学でも必要な力であり、大事になっていくものだと思います。
樹形図できっちり調べ上げるといった泥臭い方法からフィボナッチを使うといったスマートな方法も考えられますが、問題として受験生がどのような解き方をすると想定されていたのでしょうか?
重田先生 たとえば問題文の例で挙げた5両の場合ですと、私だと(ア)は「5」、(イ)は「2+3」、(ウ)は「3+2」のようにいずれも答えが5になる式として捉えますし、左右を入れ替えただけで完全に対称なケースは同じものとして考えます。しかし、そのような見方を小学生ができるかというと少し難しいとは思います。
佐藤先生 この問題で扱うのは7両や9両とそれほど大きくない数なのですが、それでも全員が正解するわけではないので、この手の問題でも生徒の考える力や理解度を確かめられる部分があるのだと改めて感じました。
数学科/重田 大輔先生
解ける受験生はルールを具体的に捉えられる力がある
これは「場合の数」の問題ですが、説明を聞けば理解できる一方、自力で答えにたどり着くのは簡単ではないように思いました。ただ、受験生の思考力の有無を丁度よい難易度で見極める問題に感じます。このような問題を解ける受験生と解けない受験生では、どのような力の違いが正解できるかどうかの差につながったとお考えですか?
重田先生 この手の問題で漏れなくダブりなく数えるのはすごく難しいことです。しかし、何かしらの順序に従って数え上げるわけですけど、そういった作業は普段から訓練をしていないと、数え切るのは難しいものですので、自分で決めたルールに従って一個一個考える力を問うている問題なのではないか、と個人的には思います。
佐藤先生 この問題は、ルールをただ機械的に読もうとすると複雑で分かりにくく感じます。「X同士しか繋げられない」「Y同士しか繋げられない」「左右ひっくり返して同じものは同一視する」というルールだけで解こうとすると何を言っているのかわからなくなってしまいます。
しかし、この電車の絵を見てパッとイメージさえできて、「こことここをくっつけてはいけないよな」といった感じで問題の意味を読み取れる人は答えられる問題です。そういったことができるかどうかが、この問題の場合には解ける・解けない、あるいは解くのに時間がかかる・かからないに影響する部分だと思います。
麻布中学校 教室
問題によって異なる作問のアプローチ
この問題の素晴らしいところとして、男の子だと大半の子がおもちゃの電車で遊んだことがあると思いますので、自分事として考えられやすいという感じがします。「抽象的なものではなく、具体的にイメージしやすいものに」といった素材選びは、作問の段階でみなさん意識されているのでしょうか?
佐藤先生 そこについては、絶対というものではないです。問題の本質がまずあって、それにどういった設定を乗っけていくかについてですが、当然分かりやすい設定を付けられる時には付けたいと思っています。どういったからくりで問題を出そうか考えた時に、「こういう設定なら分かりやすいではないか?」と思ったりはします。
重田先生 「こういった操作をするものを考えよう」と操作から問題を作ることもありますし、数に関する性質から「こういう操作をすればよいのでは」と考えることもあります。時に現実的ではない数のコップを用意するような問題だと、完全に計算の操作ありきで作られていると思いますし、つまりは問題によりけりということになりますね。
佐藤先生 うまく数えたつもりでも、あとから見直すと左右を反転させただけの同じ形を二重に数えていることがありますので、重複がないかを慎重に確認する必要はあります。この問題を電車で一区間移動する間に頭の中だけで解けるかというとかなり難しいと思います。「解けそうだけれどすぐには分からない。家に帰って紙に書いて考えてみよう」と感じるレベルの問題です。
まれに、高校生くらいでフィボナッチ数列のような規則があることに気づき、短時間で解ける子がいるかもしれません。ただし、小学生が解くことを考えると、考えられる形を実際に書き出し、重複を確認しながら数えないと正解にたどり着くのはとても大変だと思います。
まさに、漏れ・重複なくという「場合の数」の本質的な問題なのですね。
麻布中学校 体育館
算数の魅力を伝え、幅広い力を見極める
今年入学した中1生の中で、出題された問題について何か話している、またはそういった話題が授業の中で出た、といったことはありましたか?
佐藤先生 特に入試問題について生徒が話しているのを見聞きしたことはありませんが、たまたま幾何の授業で図形の問題を解く際、過去の麻布の入試問題に似た問題を見て、「これなんか過去問で見たことあるぞ」と生徒が話していたのはありました。入学前にみんな同じ過去問題を何年分も解いていると思うので、なんとなくでも記憶に残っているんだと思いましたね。
図形問題は、毎年大問1の右側、または大問2あたりに出題されていると思います。図形問題には鮮やかな発想が求められるものがある一方で、相似比や六角形を扱った比較的オーソドックスな問題も出題されています。こうしたさまざまなタイプの図形問題を出題されるのにはどのような意図があるのでしょうか?
重田先生 入試問題を通じて、「算数や数学って楽しいよね」と感じてもらうことは、とても大切だと思っています。なかでも、鮮やかな発想によって解ける問題には、算数や数学ならではの面白さや魅力を伝える力があります。一方で、相似比などの基本的な考え方を用いる問題では、学んできたことを正しく理解して着実に活用できるかを見ることができます。そうした異なるタイプの問題を組み合わせることで、受験生のさまざまな力を見たいという意図があります。
インタビュー1/3
1895年、江原素六によって創立された。明文化された校則もない、自由闊達な校風が伝統。責任のともなう自由が重視され、一人ひとりの多様性や自主性を伸ばす教育が行われている。自発的な研究も盛んで、お互いを高めあう気風がある。OBも、政治家、作家、ジャーナリスト、俳優、経済界など、幅広い分野の第一線で活躍する。