シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

国学院大学久我山中学校

2026年07月掲載

国学院大学久我山中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.答えのない社会を生き抜く力を育む教育

インタビュー3/3

今後生徒さんにはどんな力をつけて大学に進学してもらいたい、そして社会に出てほしいという想いはありますか?

吉田先生 先ほどもお伝えしたように「健全な市民」になってほしいという想いは強いですね。社会って世の中をどういう方向に導いたらいいのかについての答えはないわけです。答えがない中でもがきながらも暫定的な答えでもいいから出していってもらいたいですね。

あとは「多様なものの見方」を身に付けてほしいです。同じ現象でもいろんな見方がありますが、特にネット社会では一つの見方に凝り固まってしまいがちです。たとえば、ネットのレコメンド機能なんて自分の気に入ったものだけしか出てきません。そういった思考にならないためにも、批判的な思考や多面的な思考を持つことも大切だと考えます。

だからこそ社会科で地理・歴史・公民といった複数科目があることは大事であって、それぞれで見方が異なるわけです。それらがクロスオーバーしてくれるところも面白いですから。授業も我々教員それぞれ専門はありますし、私自身は地理担当ですが、中学だと全科目を教えますので、それもいいのではないかと思っています。

国学院大学久我山中学校 学習センター

国学院大学久我山中学校 学習センター

生成AI全盛時代でも「頭で考えることが大事」と言い続ける

良くも悪くもAIとかに頼り始める人たちが多くなり、表立ってやっている子もいればやってない子もいると思うのですが、生成AIとの向き合い方についてはどのようにお考えですか?

吉田先生 生成AIは今まさに本校でも課題となっています。社会ではありませんが、読書感想文なんてコンクール自体が成り立つのかどうかと、全国的にも岐路に立っているようですし、きちんと本を読んで自分の頭で考えるのが大事だとは思いますが本当に難しい時代です。

どう考えていいかまったく分からないといった時には生成AIに相談してみるのはよいと思うのですが、教員としては「自分の頭で考えるのが大事だよ」と古臭く言い続けるしかないわけです。

清水先生 生成AIは隠れて使うものでもないので、生徒たちには早い段階で適切な生成AIの使い方を教えてあげなければと思っています。「ここでは生成AIを使ってもいいよ。でもここからは自分で考えてみよう、書いてみよう」とできるだけ早い時期に教えたいです。それが喫緊の課題です。

社会の調べ学習でも、使い方によって生成AIは十分使えるツールです。世の中でどういう風にこの問題が言われているのかを知るきっかけとして使う分によいと思っていますが、生成AIはものすごく便利なので、それが「全部ダメ」「最初から自分で考えるだけ」となってしまうのももったいないですよね。ですから、生成AIの上手な使い方や付き合い方をどの学年のどの段階で教えるべきなのか、ここ1、2年かなり悩んでいます。

吉田先生 コンピューターやAIは、あくまでも道具ですから、たとえば「日本をどのような国にすべきか?」といった問いに対して正解を示してくれるわけではありません。そのような答えは最終的に私たち人間が考え、決めていかなければならないものであるわけです。

また、AIとは別にデジタル活用そのものにも課題はあります。デジタルは便利な面がある一方で、学習内容の定着率という点で紙媒体に劣る部分も多分にあると感じています。ただし、だからといってデジタルが不要というわけではなく、我々も授業で動画を活用することはあります。映像による学習は紙の資料だけでは実現できないものであって、デジタルだからこそ可能な表現や学びもあり、その特性を理解したうえで適切に活用していくことが大切だと考えています。

やはり中高で生成AIの利用方法について教育していくのは大事ですよね。

国学院大学久我山中学校 理科会館内

国学院大学久我山中学校 理科会館内

基礎知識の先にある社会への関心と想像力を

最後に今後の入試に向けた受験生へのメッセージをお願いします。

吉田先生 入試説明会でもお話ししていますが、「基礎知識」これを馬鹿にしないでしっかり勉強してほしいです。歴史でも鎌倉時代と室町時代どっちが先かといったことは、きちんと覚えていないと正しい歴史観は培われません。その上で社会に関心を持ち、いろいろな情報を知識として入れていってください。また、グラフに関しても棒グラフ、折れ線グラフなどいろいろなグラフを意図的に設問に入れていますので、読み取り能力をしっかりと磨いてほしいです。

本校の入試では、あまり細かい人名や用語は出さないようにしています。相当細かい人名を出す中学もあると聞いていますが、本校ではそういったことはありません。逆に基本的な人名や用語は正解の漢字も含めて絶対に覚えてほしいものです。

清水先生 入試において基礎知識はもちろん必要ですが、最終的には社会に関心を向けてもらいたいと思っています。最近はSNSが発達していることもあり、自分の関心事や同世代の子たちとのコミュニケーションはそつなくこなせるのですが、自分とは境遇の違う他者、つまり大人やお年寄りとあまり会話ができない子が増えた、というのが肌感覚としてあります。

そんな時代であっても、他者がいることに想像力を働かせられるような子になってもらいたいですね。「自分とは境遇が違うけれどいろいろな人がいる」ということを常に頭の中にもっていてほしいです。

そのような想像力があると解けるような問題を、今後も一生懸命考えて入試には出題していきたいと考えているので、ぜひ楽しみにしていてほしいと思います。

国学院大学久我山中学校・高等学校 制服

国学院大学久我山中学校・高等学校 制服

インタビュー3/3

国学院大学久我山中学校

「自律」が育む確かな一歩。失敗を恐れず挑戦し、自らの手で未来を拓く6年間。

国学院大学久我山中学校

玉川上水の豊かな緑に囲まれた国学院大学久我山中学高等学校。1944年に理科系の前身校として創立された経緯を持ち、現在は国学院大学の系列校として文理問わず高い進学実績と「文武両道」の伝統を誇る同校。創立以来の理数教育のDNAと人文社会への深い学びが融合した環境のもと、時代の変化を見据えた大きな進化を遂げています。

伝統を「自律的な学び」へとアップデートする

久我山が長年大切にしてきた実践目標である「規律・感謝・努力」。同校は今、これらを現代的な意義へと捉え直し、生徒一人ひとりの「自律的な学び」を実現するため、学習や行事、部活動のあり方を見直し、実践に移しています。
ここでの「規律」とは自らを律する「自律」を意味し、「感謝」は互いの「尊重」の上に立つもの、そして「努力」は「自己実現」のために欠かせない原動力として、日々の学校生活における大切な指針となっています。

失敗を恐れずに挑む――受け継がれる「きちんと青春」の精神

生徒たちの間で親しまれている「きちんと青春」という言葉は、ある卒業生の想いから生まれました。
その卒業生は以前のインタビューで、「若さとは、未熟で失敗も多い。でも何事も経験することの大切さ、挑戦する価値がある。そんな想いを『青春』という言葉に込めました。私にとって久我山の6年間は、「失敗できる場所」であり、同時に「挑戦する大切さ」を学ぶ場所でした」と語っています。
この精神は今の生徒たちにも深く根ざしています。異性の目を気にせず、あらゆる役割を自分たちで担う「男女別学」の環境は、失敗を恐れず試行錯誤を繰り返す最高の舞台となり、将来社会へ飛躍するための揺るぎない自立心を育みます。

日常にある豊かな学びが、将来を拓く確かな強みに

男子が6年間必修で取り組む「武道(柔道・剣道)」で鍛えるのは技だけでなく、礼節を守り相手を敬う強い心。女子の華道、茶道、日本舞踊、能楽などの特別講座で磨くのは、豊かな感性と美しい立ち振る舞いです。かたちの背後にある真の教養を育むこの日常の積み重ねが、生徒たちの人間性を育み、将来を切り拓く「大きな力」となっていきます。
こうした伝統を大切にする男女別学の環境は、結果として世界とつながる大きな強みとなっています。海外には、「共学校」はもちろん、伝統ある「男子校」・「女子校」も多く、「日本文化を体験したい」と願う海外生にとって、同性の仲間と気兼ねなく交流できる久我山は非常に親しみやすい環境です。実際に、海外の男子校生徒が来校して久我山生とバディを組み、共に武道を体験する光景も珍しくありません。
また、女子部のCC(Cultural Communication)クラスで毎週実施される「Global Studies」では多様な価値観に触れ、違いを学びの機会として捉え世界の課題と向き合います。ニュージーランドの修学旅行では、高校1年生の時に1年かけて自作した浴衣を携えて現地で文化交流を行うなど、自国の文化を深く理解した上で、多様な人々としなやかに協調する「真のグローバルリーダー」への歩みを着実に進めています。
※修学旅行は男子部は「オーストラリアまたは国内」、女子部は「ニュージーランドまたは国内」の選択制。

夢を形にする、圧倒的な「体験」の数々

同校には、全員で一丸となって取り組むプログラムから、生徒が自らの興味に合わせて選択できるプログラムまで、成長のきっかけとなる体験が数多く用意されています。ここではその代表的な取り組みの一部をご紹介します。

「自然体験教室」(全員参加型)
40年以上の歴史を誇る宿泊行事。信州や尾瀬・白根山での体験を通じて、自然の厳しさと美しさに触れ、仲間と協力する中で「尊重」と「感謝」を学びます。
「地域探訪」(全員参加型)
学校周辺の歴史や文学を紐解き、足元から世界を多角的に捉える視点を養います。
「くがラボ(理科校外学習教室)」(希望参加型)
教科書を超えた実験や観察を通じ、科学的な思考力と探究心を養います。

参加者全員で絆を育みながら視野を広げる体験と、各々の関心や希望に沿って学びの深化に挑戦する体験 ―― こうした多彩な学びを通じて、⽣徒たちは⾃らの興味関⼼を⼒強く掘り下げ、それぞれの夢に向かって歩み始めます。

一人ひとりの「自己実現」の結果としての進学実績

久我山の進学実績は、単なる数字の積み上げではありません。それは、生徒一人ひとりの個性に寄り添い、6年間かけてその背中を押し続けたサポートの結果です。
東京大学や京都大学、東京科学大学(旧、東京工業大学、東京医科歯科大学)、一橋大学などの最難関国公立大学をはじめ、早稲田、慶應義塾、上智、東京理科大学、GMARCH、そして医学部医学科への合格。その一つひとつに、生徒それぞれの「自己実現」のドラマがあります。
「主役である生徒たちの試行錯誤や成長を、教員は温かなサポート役として寄り添い、見守り続ける」 ―― そんな教育スタンスのもと、久我山は生徒一人ひとりの「今」と「将来」を真剣に見つめ、納得のいく進路選択を支え続けています。