シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

国学院大学久我山中学校

2026年07月掲載

国学院大学久我山中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.身近な食材の消費量をテーマとした問題

インタビュー1/3

まずはこの問題の出題意図を教えてください。

清水先生 本校の中学入試の社会科は大問2問または3問構成ですが、大問1番は地理・歴史・公民といった科目にとらわれない身近な社会問題や社会現象、ちょっとした疑問といったものがテーマおよび設問になっています。この問題は、生活者および消費者の一人としての疑問を自分の考えに置き換えながら想像力を働かせて解くような問題となっています。ふりかけと梅干、乾燥スープの話で展開されていますが、全体のテーマとしてふりかけを中心に話が進んでいきます。

メインをふりかけとしたのは子どものお弁当の定番といったところが大きく、ほかに梅干しと乾燥スープを入れてみました。梅干が好きという子どもは最近ではあまり多くないと思いますが、梅干の効能的な部分で「夏バテにいい」といった情報は家庭でも話題になったりすると思うので加えてみた次第です。乾燥スープは、中学受験生が寒い受験期に手軽に摂れる軽食の一つとして利用しているご家庭や受験生もいるのではと思って選びました。

この問題を解くにあたって意識してほしかったのは「季節性」です。スープは寒い時に飲む、梅干しは夏バテ防止に効果的なので夏に消費が増える、ふりかけは季節を選ばずいつでも使えるから消費は一定なはず。そういったところから類推してもらうのを意図して作った問題となります。

この設問は、会話文を読めば深い知識がなくても解けることを狙った問題になりますか?

清水先生 そうですね。ふりかけについては会話文を読めば消費が一定ということは確定しますし、梅干と乾燥スープは小学生なりの知識で判断してもらいたいと思っていました。

実は前にこれと似たような問題を、花を使って作ったことがあります。その際にはカーネーションとバラと菊の統計からどの花かを答えさせるものでしたが、母の日があるので5月ごろに高い需要があるのがカーネーション、菊は仏に供える花だと知っている子がいればお盆やお彼岸の時期に需要が上がるとわかります。そして、バラは誕生日などお祝い用の花として一定の需要がある、といったものでしたが、それを今回は食品に置き換えたというものですね。菊については小学校でも地理で抑制栽培について学ぶと思いますが、全く知らないことを出しても仕方ないので、習ったことも活かせるような問題を作問していたりします。

社会科/清水 智裕先生

社会科/清水 智裕先生

正答率は思ったよりも低かった

この問題の正答率はいかがでしたか?

清水先生 出来についてはあまりよくはなかったです。35%ぐらいの正答率でした。

6択ありますからね。もう少し出来ると思っていましたか?

清水先生 正直なところ、50%ぐらいは出来てほしかったですね。

吉田先生 細かく見ていくと、男子ではそれほど差はないですが、女子では合否にかなり関係ある問題だったといえます。男子は全体でこの問題の正答率が32.0%でしたが、合格者に限ると35.1%とそんなに差が大きくなかったのですが、女子は全体での正答率が39.3%に対し、合格者では46.2%と高かったです。

間違った解答に何か法則性はありましたか?

清水先生 不正解はかなりばらばらでしたから、法則性は特になかった印象です。

商品選定には少々頭を悩ますことに

間違えた受験生の中には、「梅干っていくらなの?」といった具合にそもそもの値段が安いか高いかわからなかった可能性もありますね。家庭環境によっては高級な梅干を食べている家庭もあるでしょうし。でもしっかりと考えればできる問題だとは思いました。
ちなみに、この食品3つに絞ったプロセスまたは苦労話などあれば教えてください。

清水先生 テーマとしては、まずふりかけを必ず入れようと考えていました。また、ご飯のお供という切り口で考えると梅干しも外せませんでした。一方で、漬物は季節によるイメージが出にくいのではないかと考え、採用を見送りました。

できれば商品をすべてご飯のお供で統一したかったのですが、冬に消費が伸びる商品を見つけるのが難しく、最終的には冬向けの商品として乾燥スープを加えることにしました。

国学院大学久我山中学校 男子部校舎

国学院大学久我山中学校 男子部校舎

他ではあまり見ない大問2題構成(ST入試は3題構成)

全体の入試問題の構成についてお聞きします。2題構成で作問されていますが、他の私学を見ても2題構成は多くないと思います。何か意図があるのでしょうか?

吉田先生 分量的にはちょうどよいのではないかと思っています。大問1は身近なテーマが問題になっていて、大問2では地理・歴史が混ぜ込んであります。地理・歴史に関しては比較的スタンダードな問題+思考力を問う問題で構成されています。なお、公民的な話題を問う場合には大問1に入れ込みますね。

問題はお一人が作られるのですか?

吉田先生 1つの試験の大問は一人で原案を作りますが、入試が全3回あるのでトータルで7~8人が作問に関わっています。

全体通して解答用紙の空欄はあまりなかった印象ですか?

清水先生 今回においてはそうだったと思います。どうしても記述が多いと「空欄が増えるのでは?」とは思ってしまうのですが、問題数からして「これぐらいならギリギリ終わってほしいな」といったイメージを持ちながら作問はしています。

国学院大学久我山中学校 生徒作品

国学院大学久我山中学校 生徒作品

入試の結果とその後の学力に相関関係はある?

ちなみに、入試の結果や得点と入学後の学力には関係があると思われますか?「このくらい点数を取って入学した生徒はやはり力があるな」と感じることは多いでしょうか?

吉田先生 私個人的にですが、10年ぐらい前に中学入試時の点数と学力に相関関係があるかどうかを調べたことがあったのですが、そんなに強い相関関係があるとは思えませんでした。ただ、中1の終わりから中2の始めの頃の学力とその後の大学入試まで含めた成績には強い相関関係があると感じます。

中学校での勉強は、小学校時代との共通点もあるもののかなり違う点もあります。中でも数学は一番大きいと思いますし、中学からは英語も始まります。そこでしっかりスタートが切れると、かなりその後まで学力は伸びていくように思えます。社会だけ切り取ってみてもなかなか見えないですが、関心の高い子はその後も学力の伸びはいいと思いますね。

資料を読む力も知識も必要ですし、表現力も必要。つまりは「総合力」が求められるわけですね。

吉田先生 学校説明会でも「総合力」が大事だと言っています。世間では「知識じゃないんだ。知識なんて教えなくても思考力が大事なんだ」なんて言われていますが、私は知識のないところで思考力は育てられないと思っています。特に社会では基礎知識が絶対大事になってきます。

また、「社会科は暗記科目だ」と言われることがありますが、その考えには強い違和感があります。確かに社会科には覚えなければならない知識がたくさんありますが、ただ知識をたくさん覚えた人が評価される教科ではありませんので、「実際はそうじゃないんだよ」というのを生徒には伝えていきたいと思っています。

もちろん入学してからの中学の社会科の学びによって覚えた知識で「こんなことがわかったよ」とか「自分はこう考えてみた」とか、知的探究的なところに面白みを感じてくれる子を中学の社会科で少しでも育てられればいいなと思っているのですが、現実は難しいところもあります。

国学院大学久我山中学校 女子部校舎

国学院大学久我山中学校 女子部校舎

インタビュー1/3

国学院大学久我山中学校

「自律」が育む確かな一歩。失敗を恐れず挑戦し、自らの手で未来を拓く6年間。

国学院大学久我山中学校

玉川上水の豊かな緑に囲まれた国学院大学久我山中学高等学校。1944年に理科系の前身校として創立された経緯を持ち、現在は国学院大学の系列校として文理問わず高い進学実績と「文武両道」の伝統を誇る同校。創立以来の理数教育のDNAと人文社会への深い学びが融合した環境のもと、時代の変化を見据えた大きな進化を遂げています。

伝統を「自律的な学び」へとアップデートする

久我山が長年大切にしてきた実践目標である「規律・感謝・努力」。同校は今、これらを現代的な意義へと捉え直し、生徒一人ひとりの「自律的な学び」を実現するため、学習や行事、部活動のあり方を見直し、実践に移しています。
ここでの「規律」とは自らを律する「自律」を意味し、「感謝」は互いの「尊重」の上に立つもの、そして「努力」は「自己実現」のために欠かせない原動力として、日々の学校生活における大切な指針となっています。

失敗を恐れずに挑む――受け継がれる「きちんと青春」の精神

生徒たちの間で親しまれている「きちんと青春」という言葉は、ある卒業生の想いから生まれました。
その卒業生は以前のインタビューで、「若さとは、未熟で失敗も多い。でも何事も経験することの大切さ、挑戦する価値がある。そんな想いを『青春』という言葉に込めました。私にとって久我山の6年間は、「失敗できる場所」であり、同時に「挑戦する大切さ」を学ぶ場所でした」と語っています。
この精神は今の生徒たちにも深く根ざしています。異性の目を気にせず、あらゆる役割を自分たちで担う「男女別学」の環境は、失敗を恐れず試行錯誤を繰り返す最高の舞台となり、将来社会へ飛躍するための揺るぎない自立心を育みます。

日常にある豊かな学びが、将来を拓く確かな強みに

男子が6年間必修で取り組む「武道(柔道・剣道)」で鍛えるのは技だけでなく、礼節を守り相手を敬う強い心。女子の華道、茶道、日本舞踊、能楽などの特別講座で磨くのは、豊かな感性と美しい立ち振る舞いです。かたちの背後にある真の教養を育むこの日常の積み重ねが、生徒たちの人間性を育み、将来を切り拓く「大きな力」となっていきます。
こうした伝統を大切にする男女別学の環境は、結果として世界とつながる大きな強みとなっています。海外には、「共学校」はもちろん、伝統ある「男子校」・「女子校」も多く、「日本文化を体験したい」と願う海外生にとって、同性の仲間と気兼ねなく交流できる久我山は非常に親しみやすい環境です。実際に、海外の男子校生徒が来校して久我山生とバディを組み、共に武道を体験する光景も珍しくありません。
また、女子部のCC(Cultural Communication)クラスで毎週実施される「Global Studies」では多様な価値観に触れ、違いを学びの機会として捉え世界の課題と向き合います。ニュージーランドの修学旅行では、高校1年生の時に1年かけて自作した浴衣を携えて現地で文化交流を行うなど、自国の文化を深く理解した上で、多様な人々としなやかに協調する「真のグローバルリーダー」への歩みを着実に進めています。
※修学旅行は男子部は「オーストラリアまたは国内」、女子部は「ニュージーランドまたは国内」の選択制。

夢を形にする、圧倒的な「体験」の数々

同校には、全員で一丸となって取り組むプログラムから、生徒が自らの興味に合わせて選択できるプログラムまで、成長のきっかけとなる体験が数多く用意されています。ここではその代表的な取り組みの一部をご紹介します。

「自然体験教室」(全員参加型)
40年以上の歴史を誇る宿泊行事。信州や尾瀬・白根山での体験を通じて、自然の厳しさと美しさに触れ、仲間と協力する中で「尊重」と「感謝」を学びます。
「地域探訪」(全員参加型)
学校周辺の歴史や文学を紐解き、足元から世界を多角的に捉える視点を養います。
「くがラボ(理科校外学習教室)」(希望参加型)
教科書を超えた実験や観察を通じ、科学的な思考力と探究心を養います。

参加者全員で絆を育みながら視野を広げる体験と、各々の関心や希望に沿って学びの深化に挑戦する体験 ―― こうした多彩な学びを通じて、⽣徒たちは⾃らの興味関⼼を⼒強く掘り下げ、それぞれの夢に向かって歩み始めます。

一人ひとりの「自己実現」の結果としての進学実績

久我山の進学実績は、単なる数字の積み上げではありません。それは、生徒一人ひとりの個性に寄り添い、6年間かけてその背中を押し続けたサポートの結果です。
東京大学や京都大学、東京科学大学(旧、東京工業大学、東京医科歯科大学)、一橋大学などの最難関国公立大学をはじめ、早稲田、慶應義塾、上智、東京理科大学、GMARCH、そして医学部医学科への合格。その一つひとつに、生徒それぞれの「自己実現」のドラマがあります。
「主役である生徒たちの試行錯誤や成長を、教員は温かなサポート役として寄り添い、見守り続ける」 ―― そんな教育スタンスのもと、久我山は生徒一人ひとりの「今」と「将来」を真剣に見つめ、納得のいく進路選択を支え続けています。