出題校にインタビュー!
逗子開成中学校
2026年07月掲載
逗子開成中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.努力が報われるような出題を心がけている!
インタビュー1/3
円の問題を出したかった
まず、この質問の出題意図からお話いただけますか。
大岩先生 算数の入試問題では幅広く、どの分野も出そうというのがコンセプトとしてある中で、円の問題を出したいと思っていました。円の問題は高校生も苦手としています。円だけではつまらないだろうと思いまして、円の中に、30度、45度、60度。三角定規をうまく発見できるようにできないかなと思ったことがきっかけで、このような問題を考えました。回転している中で、三角定規が2つ現れるので、たぶん受験生にとっては難しい問題だったと思います。ちなみに正答率は7.7%でした。338人のうち、正解者は26人でした。
白紙も多かったのでは?
大岩先生 白紙は117ですから、かなり多いですね。3分の1以上は白紙でした。
その正答率は、先生の意図通りなんですか。
大岩先生 大問2番の(6)は例年正答率が15%ぐらいを目標に作っているんです。しかし、今回はそれ以上に難しい問題になってしまいました。
目立った誤答があれば教えてください。
大岩先生 たぶん回転角が60度だろうと予想して計算していた受験生が多かったです。
数学科主任/大岩 洋也先生
最初は時計の針がモチーフだった
かなり深い問題ですよね。円板が回って、さらに1つ、2つ、状況をつかまなければいけません。図2から一足飛びに答えが出ないので、かなり苦戦したのではないかと思います。最初はこの問題を大設問にする予定だったのですか。
大岩先生 そうしようとも思っておりました。
30度、60度、90度を見抜くには、自分で書いて発見しなければいけないというところで、高い力を見ているなと思いました。
大岩先生 その問題を議論した時に、あらかじめ回転してある図を提示するという意見も出たのですが、受験生が自分で図を書くことが1つの意図なので、今回のような形で出題しました。
まさに今おっしゃった通り、図を書いて状況をつかまないことには何もできないのです。こういう図を書くことをめんどうくさがる子ではたぶん発見にたどり着かないですよね。この問題を作るにあたり、モチーフのようなものはあったのですか。
大岩先生 モチーフはあります。北極星のイメージですね。回転は逆ですけれど。
ポスターに掲載する問題を選ぶ時に、「星座の早見盤のような感じだね」という話が上がりました。「動きは逆だね」みたいな。北極星のイメージだったのですね。
大岩先生 最初は時計の針の形を変えたらどうか、から考え始めました。時計の針という設定でした。でも、文章にすると分かりづらくなるので、円盤を回すことにしました。
逗子開成中学校 徳間記念ホール
合格者は大問2番で6割、7割正答
大岩先生 こうした問題は、あまり入試問題で見ませんか。
これがもし時計の針だとしたら、数年に1回、難関校と言われるような学校の問題で稀に見ますね。直近で言うと、たぶん駒場東邦で、短針と長針がギザギザしたものが出たような記憶があります。数年前です。ただ、水平軸を作って、位置が関係するというのは見たことなかったです。PQの水平軸と、円板が回転しての位置関係には、目新しさがありました。とても面白い問題でした。この大問2の最後の問題は、例年難問なんですか。
大岩先生 難問ではなく、やや難しい問題にしています。大問2番で、合格する子は6割、7割ぐらい取っていると思います。そして大問5番・6番あたりで数学が得意な子がさらに点を取ってくれれば、という意図で出題しています。僕の中では意外に難しいだろうと思って出題した問題も、蓋を開けてみたら、こういう問題は小学生は強いんだということもあります。コンセプトをもって作問しても、結果を見るとそのコンセプト通りの解答状況や正答率にならない時もあるのですが、大問は、優しい順から並べてはいるつもりです。
大問2番で大体3つ、4つ正解できると合格に近づくわけですね。
大岩先生 そうです。たぶん合格者の大部分は、前半の問題は必ず正解していると思います。努力が報われるような出題を心がけています。難しい問題や、奇をてらった問題は、選別するという意味の試験には向いていないんです。こちらの自己満足的な感じになってしまって。
逗子開成中学校 グラウンド
手を動かして解く問題
この問題は、算数、数学が好きな子がハマる場合もあります。
大岩先生 逗子開成に来てほしい生徒像という意味では、自分で考える力や、手を動かす力のある子どもたちなんですが、今の子どもたちは作業を嫌がるというか、めんどうがるのです。例えば、場合の数など、書き出すことが必要な問題を苦手とする生徒が、近年、多くなった気がします。ところが、多くの難関大学で考える力、手を動かす力が問われています。
便利な世の中になっていることが理由の一つにありますよね。私たちも感じることがあります。
大岩先生 高校生を見ても、効率的なもの、尚かつ結果が出るものを好みます。それが近年の特徴かなと思っています。
「結果」とは?
大岩先生 簡単に言えば、点数に現れるなど、結果が出るとわかっていればやるという感じですね。タイムパフォーマンスと結果を結びつけて考えるというのでしょうか。数学とは全く逆です。そういう生徒は昔からいたと思いますが、近年、特に気になりますね。他の学校の先生方に聞いても、同じようなことをおっしゃるので、そうなんだろうと思っています。
だから難関大学の入試問題を大事にしているのでしょうか。
大岩先生 難関大では、型にはまってないものから、どうやって自分で手を動かして見つけていくかというところが、問われていると思います。
完全な正解に行きつかなくてもいいんです。そこを生徒は勘違いしています。自分の頭で考え、考えたことを表現する力が大切です。
完全に正解していなくても、途中のプロセスが点数になるということですね。
大岩先生 そうみたいです。東京大学の採点はとても大変だと、聞いたことがあります。
同じことを東工大(東京科学大学)でも聞いたことがあります。たぶん一緒なんでしょうね。難関大は、解ききることに重きを置くというより、プロセスを見ている気がします。
大岩先生 私たちも、理想を言えは、答えだけではなくて、途中式も書いてもらいたいという思いがありますが、採点時間に制約があるので。
入試が終わった後に、できなかった生徒が、帰りの電車や家に帰った後などに、解き直す生徒は素敵な生徒ということでいいですか。
大岩先生 そのような生徒は相当、数学が大好きな生徒だと思います。素敵ですよね、そのような生徒がいたら。
逗子開成中学校 校門
インタビュー1/3
1903(明治36)年創立の神奈川県下最古参の男子私立中学校。東京の開成中の分校「第二開成中」として設立されたが、ほどなく独立。中学募集は一時中断したが、86(昭和61)年再開。近年の目覚ましい学校改革の試みは、バランスのとれた学校像の確立を目指すものとして注目されている。2003年(平成15)年に創立100周年を迎えた。