シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

法政大学第二中学校

2026年06月掲載

法政大学第二中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.勉強だけでなく、たくさんの実体験を積み重ねよう

インタビュー3/3

成長段階に応じて読み書きを深める

授業についてお話いただけますか。

野村先生 読解では例えば、主人公が何かに没頭しているというような題材の小説であれば、自分はどんなことが好きなのか。その没頭していることに対して自分はどのような気持ちをもっているのかというところから、作品の登場人物の気持ちを考えてもらいます。例えば、その主人公が何か失敗をしてしまった主人公であれば、自分が落ち込んだり、申し訳ないという気持ちになったりした過去の経験などから考えていきます。俳句などの単元では、自分の生活の中から言葉を選んでみたり、自分の体験から作ったりしています。

先ほど、「正解は一つではない」とおっしゃっていましたが、授業でも人によって考え方やとらえ方が違うという前提なんですね。

野村先生 生徒はどうしても答えを求めがちですが、授業では「ここは答えは1つじゃないよ」「いろんな考え方があるんだよ」「想像力を働かせようね」と、生徒たちに語りかけながら、いろんなものの見方ができるように進めています。

自分で考えられることはしれていますので、先ほど申し上げたグループワークなども取り入れながら考えさせています。特に中1の段階では書けない生徒が多く、要約は特に苦手なので、「こういうふうにするといいよ」と観点を示したり、「こういう意見を書いた人がいるよ」と例を示したりしながら、ものの見方が一つではないことを伝えながら、自分の体験とつなげて考えさせるようにしています。

中2になると、いろんな種類の文章を読みます。論説文や客観的な文章のほか、古典も読みます。中1にも少しだけ古典を導入していますが、中2では、もう少しいろんな種類の古典を読んで、自分の世界を広げていきます。そして、新聞社の投書を活用して、自分の考えを書いたり、短歌に挑戦したりしています。中には作品が掲載される生徒もいます。

中3は自我が目覚めて、いろいろ悩んだり迷ったりする時期でもあるので、自分のことだけではなく、社会に目を向けるということがテーマになります。自分と他者との関係から、自分には何ができるのか、自分はどうしたいのかということを考えていきます。その段階を経て、途中から「自分も社会の中の一員である」という意識づけができてくると、1つの作品をじっくり読むということにシフトしていきます。

例えば、江戸時代であれば身分制度など、いろんな枠組みがあって、自分の自由にはならないですよね。今の自分たちとは全然違います。それを「知らない世界」ではなくて、自分がそこにいたらどんな感じ方をするのか。主人公の気持ちにそって考えてみるということをして、自分も社会の一員であるということを考えていきます。

本当に一例ですが、いろいろな作品の中で、時代に翻弄される登場人物の生き方に触れることで、自分も社会の中の一員だということを意識させ、最後に自分はその社会の中でどうやって生きていけばいいのかということを考えさせることもあります。

また、中3では自分の意見文を書きます。場合によっては作品論などを書くこともあります。総合学習の時間に、疑問を持ったことにテーマを絞って課題をつくり、その課題に対して、自分たちで調べ、考えて結論を出して、発表するということを、グループで行います。それともリンクさせながら、自分はこの社会の中でどうやって生きていくのかということを考えさせます。高校には外から入ってくる生徒もいますが、中高一貫生たちが核になりながら高校につなげています。

法政大学第二中学校 ピロティ

法政大学第二中学校 ピロティ

中高一貫生は「書く」ことに長けている

美濃部先生 高校生は様々な経路で入学して来ますので、そういう意味では、二中出身の生徒が培った力もそうですし、外部から入学した生徒と一緒に切磋しながら、読みを深めていきます。

本校では高2から「文学国語」と「古典探究」を学び、高3は生徒主体で授業を進めていきます。高1、高2では、どういうふうに読んでいくかということもそうですし、自分の読みがどうなのかという部分は、先ほど磯部や野村が話したように、他の生徒と交流したりして、視野を広げながら読みを深めていくという取り組みを継続的に行っております。国語には答えのないことがかなり多いので、そういう意味では、1つの答えをただ覚えるよりも、1つの物事をじっくり考えることを大事にしながら、6年間、変わらずに継続していくことが重要だと思っています。

一貫生の特徴はどういったところでしょうか。

美濃部先生 中学時代から「書く」ということを重視していますので、そこは優れていると思います。グループワークは他校でも取り入れていると思うのですが、日常的に展開されているので、そういう意味では、誰かがリーダーシップを取って話し合いができます。6人ぐらいのグループになると、話しづらさを感じる生徒もいると思うのですが、それを察して引き出してくれるのは、二中出身の生徒に多い気がします。

法政大学第二中学校 時計塔本館

法政大学第二中学校 時計塔本館

書くことは学習を総合化してまとめていく機会

定期試験でも書く問題を出しているのですか?

野村先生 必ずではありませんが、自分で考えてきたことをまとめる力は大切にしているので、普段の定期試験でも記述問題を比較的入れています。生徒は試験に集中するからか、授業中にそんなにいいことを言ってなかった人が試験ではびっくりするくらいいいことを書いてくれます。こんなことを考えていたのか、と驚かされることが時々あります。それがとても楽しみなんです。

磯部先生 試験で記述問題を出すことは、学習を総合化する機会を作っていることになります。もちろん学力を測るということは大事なことですが、生徒側に立てば、定期試験が学習を総合化してまとめていく機会になります。その意味でも記述問題を出題することは、ものすごく大切であると考えています。

美濃部先生 生徒は「国語が嫌いです」「文法が嫌いです」などと言うのですが、本当によく書いてくれます。「自分の意見が人に伝わらないと困るよね」「自分で考えることは大切だよね」とその意義を考えさせて学習をすすめていくので、書く意味が明確になり国語嫌いの子も書くことが嫌いになる生徒は少ないと思います。

書くことは国語科の生命線だ

書くことまで行う授業は、何かきっかけがあってそういう授業になっていったのですか。

美濃部先生 創立時から自分で物事を考えたり、文章を書いたりする「表現」という授業があったので、書くことを大事にするとか、自分で考えて総合化するということは、相当意識されていたと思います。私は創立時にいたわけではないのですが、先輩方から話を聞いたり、残された資料を見たりすると、理念は変わっていません。基本的な文法や言葉の表現など、基礎を身につけることはもちろんですが、それだけではなく、自分で考えて形にする、そして最後は文章化するということが、3本柱のように創立当時の文章にもしっかり残っています。

磯部先生 よく「書くことは国語科の生命線だ」と先輩の先生が言っていました。

野村先生 もちろん題材や使い方には時代の変化もありますので、できるだけ時事的なものも入れながら変えてきていますが、おそらく根底にある理念は変わっていないと思います。

受験生には勉強だけでなく、心を育ててほしい

最後に、受験生や保護者の方へメッセージをいただけますか。

須賀先生 本校では考える主体は人間であるというところは核と考えていますので、ただ覚えるだけではなく、どう考えていくのか、いかに想像・創造できるか。そういうことを大切に学習してほしいと思います。iPadを活用した授業もしていますが、読み書きを基本とする語彙の習得を、引き続き丁寧に積み重ねてほしいと思います。

磯部先生 例えば、社会の担い手として主体的に考えていくとか、他者との対話や交流の中で作り上げていくとか、それを表現していくとか、他者の前で伝えていくとか……。それは国語科だけでなく、全体で大切にして取り組んでいることです。法政二中の「総合」の授業では、あらゆる教科の核となる力を身につけます。この大きな図書館の使い方も、その一つです。自分の欲しい情報や資料を探していく。取り出した情報を、グループで話し合いながら整理して、考察して、まとめて、表現していきます。こうした力を各教科の学習にも応用し、探究的な取り組みを通して教科理念を実現することを目指しています。今回は国語としての角度からお話しましたが、どの教科も同じように教育理念の実現を目指しながら取り組んでいます。

須賀先生 「総合」では、自ら問いも立てていくということもしています。

美濃部先生 生活の中では、勉強以外のこともすごく大事だと思います。もちろん勉強は勉強ですごく頑張ってほしいのですが、その勉強だけで国語力が伸びるかというと、そういうわけではないと思います。例えば会話や遊びを通じて友だちのことをもっと知るなど、いろんな経験の中で自分自身の考えや意味が深まっていくことがあると思うので、勉強だけでなく、それ以外のこともぜひ頑張っていただきたいです。

法政大学第二中学校 グラウンド

法政大学第二中学校 グラウンド

野村先生 子どもたちにはいろんなことに興味をもって楽しんでもらいたいですね。いろんなことにワクワクドキドキしてほしいですし、想像力は人を育てます。人との関係もそうです。ですから、私は授業中に「人には想像力があるんだよ」「想像して」「想像して」といつも言っています。人の気持ちを考えるには、いろんな経験をしたり、いろんな思いをしたりすることが大切だと思うので、できるだけいろんな体験をしてもらいたいです。そして心を育ててもらいたいなと思っています。

磯部先生 実体験に基づいて考える経験をたくさんしているお子さんに来ていただきたいです。外側にある情報はいくらでも調べられますし、答えを作ってわかった気になってしまうこともよくあります。しかし、それは自分で導いた答えではありません。自分の内側を通して考えて、導き出した結論は自分のものです。実体験を数多く積み、実体験に基づいて考えられるお子さんに来ていただきたいです。

須賀先生 子どもの頃からうがった目で見るのではなく、純粋な目で見るようにしてほしいということです。食べ物にしても、友だちにしても、より好みしないで、いろんなものとしっかり関わってきてほしいと思います。五感を使った経験は、心や頭に記憶として残っていくものだと思いますので、受験勉強で大変だとは思うのですが、そういう深い体験をしてほしいです。

また、保護者の方にはお子さんと話をしたり、お子さんの話に耳を傾けたりする時間を大切にしてほしいと思います。お子さんが「今日こういうことあったんだ」と話せると、そこでコミュニケーションが生まれて、自分の思いや考えをどういうふうに伝えればいいかを学ぶことにもなると思います。

法政大学第二中学校 図書館

法政大学第二中学校 図書館

インタビュー3/3

法政大学第二中学校
法政大学第二中学校法政大学第二中・高等学校は、1939年に旧制法政大学第二中学校(高校の前身)として設立された。1986年に中学が開校し、2016年に共学校となった。85年を超える歴史の中で、世界や地域、あるいは様々な分野におけるそれぞれの課題に取り組みながら、人としての成長を重ね合わせる人材を育成している。
英語・数学の分割授業、週1回の理科実験、「定着試験」などで、学力の定着を図っている。高2までは共通科目、高3では文系と理系に分かれる。高3では選択授業として、「理工系進学者のための数学特講」や「政治学・法学入門」など多様なニーズに応えられるような形で多くの講座が開講され、高い学力と幅広い教養の獲得を目指している。高3の進路決定後は、進学する学部に合わせて課題学習を行い、大学の学びに備える。
1・2年生において集団的に学んだ成果の集大成となるのが、中学3年「総合」の取り組み。クラスごとに学習班の単位でテーマを設定し、年間を通して、調べ学習を行う。研修旅行での現地の体験をはじめ、図書館を利用した調査・探究を横断的に行い、中間発表を経て、年度末には学習の成果をプレゼン形式で発表する。特に優れた発表については、年度末にクラス代表として研究の成果を全校生徒の前で披露する。
中学の部活動は、週3~5日活動を行っている。入部は任意だが、ほとんどの生徒が部活動に参加している。勝利や成績だけを目的とした部活動ではなく、友人と共に自主的に研究・制作や練習方法を築き上げていけるようになる過程を大切にしている。高校部活動の文化連盟は、個性豊かなテーマ、研究・発表・パフォーマンス、旺盛な行動力と集中力で活動している。体育連盟は、科学的なトレーニングと民主的クラブ運営で、高校生アスリートとしての最高の舞台を目指している。