シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

広尾学園中学校

2026年05月掲載

広尾学園中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.時事的に関心の高い選挙をテーマとした問題

インタビュー1/3

まずはこの設問の出題意図から教えてください。

町田先生 本校では、過去にも選挙をテーマにした問題はよく出題しています。というのも、中学受験生にとって受験の年にある選挙は時事的にも関心の深いものだと思いますし、選挙というテーマ自体「民主主義とはどのようなものか?」を問う内容としては非常に適切だと考えるためです。

2025年の第2回の入試問題では「政治的公平」をテーマにした問題を出題しています。具体的には、よく選挙直前になると選挙報道がガクッと減ってしまうことがありますが、政治的な公平を気にしすぎるあまり、テレビの報道番組で選挙についてあまり触れることができない。それって問題なのでは?といったものです。

他方、インターネット上でいろいろな記事や書きこみが一方的に流されているような状況ははたしてどうなんだろう?と、当時は兵庫県知事選挙などの問題もあったので、それらの状況を踏まえた問題を出題しました。

そのような問題意識を引き継いで2026年に出題したのが今回の問題です。近年では、迷惑系YouTuberなどが、SNSにおける自身の投稿へのクリック数や閲覧数を稼ぐため、注目を集めている人物や出来事を取り上げて発信するケースが少なくありません。このように、人々の関心や注目そのものが価値を持つ状況を表すものとして、「アテンション・エコノミー」という言葉が現在、注目を集めています。現代の選挙を考える際に、この言葉をもとに考えると面白いのではないかと思い、このような問題を出題しました。

2024年には東京都知事選挙、2025年には参議院議員選挙もありましたので、それを踏まえての出題となったわけですが、2026年2月に衆議院選挙が行われたこともあり、入試と選挙がちょうど重なるタイミングでこの問題を出題できたのはタイムリーだったと感じます。

そのような背景を踏まえ、SNSそのものの持つ問題点と選挙の関わりについて子どもたちにしっかり問いたい、そして問う際には「アテンション・エコノミー」の持つ問題点について、選挙を通じて考えてもらいたいと思って出題に至りました。

問題自体はかなり前に作成していたものの、採点しながら今の状況に当てはまりすぎて正直怖いと感じました。

もう一点出題におけるきっかけがあるとすると、私は現在ディベート部の顧問をしているのですが、去年の中学の部の論題が「小・中学生に対するSNSを禁止すべきである。是か非か?」というものであり、そのテーマで1年間議論していました。事前に生徒がテーマを調べていく流れの中で、SNSの持つ危険性に対し、私自身もかなり意識していたことが出題に至った要因のひとつなのかなと思います。

本科コース統括長・教務部統括部長/町田 貴弘先生

本科コース統括長・教務部統括部長/町田 貴弘先生

持っている知識で答える問いではなくその場の考えさせて解く問題にしたかった

問題がかなり長く作られていますがそこには何か意図があるのですか?

町田先生 子どもたちの中にはSNSを使っていない、知らない子もたくさんいますので、ある程度スタートのところからしっかり説明してあげる必要があると考えました。また、この社会の大問4で出している論述問題の意図としても、もともと持っている知識で何か答えるというよりかは、その場でしっかり文章を読み、答えを導き出してほしいといった想いがありましたので、丁寧に分かりやすい問題文を作成したつもりです。

ただ、今回の問題は説明文の一連の流れを読まないと正解にたどり着かないように作った部分もあるので、少し嫌な問題だったかもしれません。

広尾学園中学校 サイエンスラボ

広尾学園中学校 サイエンスラボ

4割強の生徒が加点対象となる答案を記載

実際の解答にはどのようなものがありましたか?

町田先生 トータルの正答率は28.03%と少し低めでした。もう少し細かく見ていくと、設問は(A)と(B)で分かれていて、4点満点だった生徒は13.06%。AとBのどちらかで点数が取れたという生徒が29.94%。両方とも書けなかった生徒が57.01%でした。ですから、約43%の生徒は加点ができていた問題です。

本来は、(A)と(B)合わせて一問とする予定だったのですが、それだと少し難しすぎるということで2つに分けました。

正答率は先生の予想通りでしたか?

町田先生 予想よりは、ちょっと低かったかなと思いました。その理由として、問題自体の読解的要素が強かったことが要因では?と推測しています。たとえば、(A)の場合「アテンション・エコノミーの特性を踏まえ」といった部分に下線を引っ張っていましたが、このアテンション・エコノミーの特性とは関係のない解答を書いているものは当然✕としましたし、逆にアテンション・エコノミーの特性のみを書いて、引き起こされる問題に触れていないものも✕になります。

(B)に関しても、「そしてその結果として」との記載があるので、(A)で挙げたものを踏まえた結果として、選挙に対してどのような悪影響があるのか、(A)と関連付けてしっかり書けているかがポイントとなります。そのため、(A)で書いた内容と全然関係のないこと、たとえば「投票率」のように単に選挙に対する問題のみを書いているものだと✕にしました。

この問題に限らず全体として入試問題が少し難しかったこともあり、この回の社会の平均正答率は約44%と低めの結果でした。この問いは社会の最後の問題でしたので、時間が足りなくてたどりつけず解答が空欄となったものも多かったと推測されます。

小学生ながら大人顔負けの解答も

何か印象に残った解答はありますか?

町田先生 こちらが想定をしていない解答としてこれはすごいと思ったものでは、(A)の解答のほうで、「現実的な政策が注目されなくなる」といったものがありました。絵空事のような情報だけがどんどん沸いて出てきて、本当は必要だけど注目を浴びないような現実的な政策が話題に上がらなくなっていく、といった内容は、小学生の解答とはいえ、純粋にすごいと感じました。

あと、同じ(A)で「判断能力の低い子どもが影響を受ける」といった解答もありました。ある意味、子どもとして自分を客観的に見ることができているなあ、とその大人びた解答に感心しましたね。

(B)のほうの解答では、「選挙に悪影響が及んでいく」とか「判断ができなくなる」といったものが出てくるんだろうと思っていたら、「行政や政党に対する信頼感が失われていく」といった解答を書いてきた子もいて正直びっくりしました。

この問題を作成するにあたってイメージされた政治家はいましたか?

町田先生 そうですね。そういう政治家だらけという現実もある中、いろいろ思い浮かびましたよね。電話ボックスの上に乗って騒いだ方もいましたが、ただアテンションを得るためだけに何かしているのではないかと感じて強く印象に残りました。

まだ、誰かを支持するために熱烈に意欲が余ってやっているなら気持ちとしてわからなくもないのですが、ある特定の候補者に対し、金銭を得るためだけに中傷したり、逆にある特定の候補者を称賛したりすることは構造として間違っているのではないかと感じます。それで儲かってしまう現実がありますからね。

逆に、間違った解答で印象になったものはありましたか?

町田先生 誤答として印象に残った解答の中には、中学受験対策の勉強の影響が見えるものが結構ありました。具体的には(A)のほうで、「SNSが使えない人やお年寄りが困る」というような解答がちらほら見られました。おそらくデジタルデバイドなどを勉強しているので、SNSやネットワーク、ICT機器が使えない人にも配慮が必要だ、という部分に凝り固まり過ぎてしまった感があったかなと思いましたが、それだとこの問題の意図と違ってしまうので✕にしています。「SNS依存」といったものも趣旨と異なるので✕としました。

あと2022年の本校の入試問題で「フィルターバブル」についての問題がありましたが、それを過去問演習でやっていただいたのでしょう。アテンション・エコノミーの説明ではなく、フィルターバブルの説明をしてしまった解答もありました。

(B)のほうの解答の誤答では、「民主主義が弱まってしまう」といった少し抽象的すぎで具体的に何を指しているのかが分からないものもありました。もちろん時間がない中で答えなければならない大変さはあると思いますが、なるべく分かりやすく丁寧に説明してもらいたかったとは感じました。

広尾学園中学校 掲示物

広尾学園中学校 掲示物

採点のポイントは(A)(B)ともに2つずつ

正解になる条件としてどういったものが必要だったのでしょうか?

町田先生 (A)については2つポイントがあって、1つは「アテンション・エコノミーの特性」について何らかの形で触れている必要があります。「お金を儲ける」「関心を集める」「注目を集める」などでかまいません。そして、その上で「課題や問題」が関連する形で出てくることが2つ目です。具体的には「他者を傷つける」「嘘」「フェイク」といった問題がしっかり指摘されている。この2点を条件として採点しています。

また(B)においては、「その結果として」という部分がありますので、(A)で答えている内容を踏まえているかどうかが1つ。もう1つは「選挙にどのような悪影響があるか」と言っていますから、悪影響については何でもよいものの、それが「どういう意味で選挙に悪影響なのか」を分かりやすく書けているかどうかが採点の基準になりました。

広尾学園中学校 校内

広尾学園中学校 校内

インタビュー1/3

広尾学園中学校
広尾学園中学校1918年、板垣退助(伯爵内務大臣)、夫人絹子たちを中心に大日本婦人慈善会により、順心女学校が創設された。2006年度の特進コース(中学、高校)設置、学習支援センターの始動によって、本格的な進学校への道を歩みだす。2007年度の共学化、それにともなう校名変更、インターナショナルコースの設置と大きな話題を呼んだ。現在は、国公立・難関私大をめざす「本科コース」、国内外の医系・理系大をめざす「医進・サイエンスコース」、トップレベルの国際人をめざす「インターナショナルコース」の3コース制をとっている。
9階建ての校舎は、最新設備を完備し、豊かな教育環境を提供している。エントランスを入ると右手に見えるカフェレストラン。昼食時、休み時間、放課後、生徒たちの明るい笑い声で賑わう。また、晴れの日はけやきの下でオープンカフェも楽しめる。校舎6階に化学、生物、物理、それぞれ3つのサイエンスラボが並んでおり、研究室レベルの最新設備を備えた環境で、中学・高校の授業の枠にとらわれない実験を体験することが出来る。
基礎学力定着の要として、生徒一人ひとりの学習進度に対応して実施される小テストが「P.L.T.」。朝のP.L.T.が終わると答案は学習支援センターに運ばれ、翌日、テスト結果に基づいた不得意分野の解消と学力定着のための課題が作成される。苦手分野を克服し、確実な基礎学力を身につける。週の終わりには1週間の成績表を生徒各自に配布し、週ごとに学習理解度を確認する。
英語では、「聞く・話す(プレゼンテーションする)・対話する・読む・書く」の5技能をバランスよく身につけるため、「英語は実技教科」という意識を持ち、英語を実際使うことを重視している。年に5回行うスピーキング試験、P.L.T.(Practical Listening Test)、授業中の英語発表などの機会を通し、生徒たちは使える英語を身につける。インターナショナルコースでは英語でプレゼンテーションも行う。
勉強だけではなく、部活動も活発だ。広尾学園の教育理念である「自律と共生」の力を身につけるために、部活動に打ち込むことを奨励されている。ダンス部、吹奏楽部、チアリーディング部、ディベート部などは、全国大会・関東大会のレベルだ。