シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

広尾学園中学校

2026年05月掲載

 広尾学園中学校【社会】

2026年 広尾学園中学校入試問題より

みなさんはSNSをつかったことがありますか。SNSの中でもみなさんの世代に人気が高いのはInstagramやTikTokなどで、小学校高学年での利用率は2~3割程度、中学校での利用率は5割程度と言われています。画像や動画を投稿したり、共有したりすることで、交友関係を広げることのできる便利なツールです。最近では政治や選拳の世界でも多く使われており、自分の政党や立候補者の考え方を若者の有権者向けにアピールするためによく用いられるようになりました。

このようなSNSが広く普及した世の中において、「アテンション・エコノミー」(日本語に訳すと「関心経済」)という言葉が注目を集めています。インターネットの普及によって、私たちは膨大な量の情報に常にアクセスできるようになりました。しかし、私たちの1日の時間や集中力には限りがあります。そのため、動画などのコンテンツを制作するクリエイターや企業は、その限られた「関心」や「注目」を獲得するために激しい競争を繰り広げています。この競争を勝ち抜くために、SNSや動画配信サービスでは、利用者が思わず見てしまうような、興味を引くコンテンツを提供しています。見られる回数が多くなると、広告が表示される機会が増え、投稿者の広告収入が拡大します。つまり、「関心」や「注目」を多く集めれば集めるほど、利益が大きくなる、これがSNSや動画コンテンツサービスの特徴であり、これが「アテンション・エコノミー」なのです。しかし、「注目を集めること」が最大の価値となるため、その問題点も指摘されています。

(問)選挙の際にSNSが用いられる場合、本文中にある「アテンション・エコノミ一」という仕組みが、どのような問題を引き起こす可能性があるでしょうか。アテンション・エコノミーの特性を踏まえ、具体的にどのような問題が引き起こされるか(A)、そしてその結果として、選挙にどのような悪影響があるか(B)、をそれぞれ説明しなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この 広尾学園中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

(A)事実との食いちがいがあっても、利用者が思わず見てしまうような刺激的な表現や、誤った情報を用いて注目を集めようとする候補者があらわれる。

(B)有権者が誤った情報に基づいた判断をしたり、公約の内容ではなく注目度によって政党や候補者を選んだりするようになる。

解説

まずは、設問で下線が引かれている「アテンション・エコノミーの特性」を考えてみます。現在のSNSや動画コンテンツサービスでは、関心や注目を多く集めるほど、商品やサービスを購入してもらえることもあれば、直接的に売り上げにつながらなくても、人々の話題にのぼるなどして知名度が向上することで、間接的に利益につながっていくこともあります。しかし、より多くの「関心」や「注目」を集めることが、あたかも最大の価値であるかのように考えられる昨今、言葉や映像、画像などを、刺激的な表現や、大げさに強調した表現にすることによって、人々の「関心」や「注目」を引き、利用者に強く印象づけようとする手法が増えてきています。このとき、内容が事実であるか、誰かを傷つける内容ではないかといったことが蔑ろにされることもあり、結果として誤った情報が拡散されたり、事件につながったりした例もあります。

こうした、「アテンション・エコノミーの特性」が引き起こす問題が、選挙にどのような影響をおよぼすのかを考えてみましょう。まず、SNSを利用している有権者が、誰に投票するのかについて強く影響を受けることが考えられます。多くの人の「関心」や「注目」を集めた情報ばかりがSNSなどにあらわれたり、利用者のほうも、その政党や候補者がどれほど注目されているかが価値であるかのように感じたりすることもあるでしょう。また、特定の政党や候補者について事実ではない情報が広がっていき、SNSの利用者以外の有権者の選択に影響することもあります。動画が1本投稿されただけでも、情報が拡散され、事実がねじ曲げられるなどしながら、より多くの人の行動に影響していく恐れがあるのです。

日能研がこの問題を選んだ理由

インターネット上での選挙運動は、2013年に解禁されました。当時は今ほどにSNSや動画配信サービスが一般的ではありませんでしたが、それから10年以上が経ったいま、時間さえあればSNSを見ずにはいられない人や、家ではいつでも動画が流れている状態にある人など、SNSや動画配信サービスの利用が生活の一部となっている人もいるでしょう。大河の水が流れていくように、膨大な量の情報が現れては消えていく状況で、いかに多くの人に関心を向けさせるのかが、消費につながり、利益を生むという「アテンション・エコノミー(関心経済)」は、私たちの生活が便利になるとともにあらわれた、必然的な社会現象とも言えるでしょう。

しかし、時には「これって、事実なのかな」「こんなこと言っているけど、大丈夫なのかな」「これを見た人が、悲しい気持ちにならないかな」……というような心配や疑問が生まれることがあるかもしれません。私たち一人ひとりが誰に投票するべきかを考え、選ぶはずの選挙が、「アテンション・エコノミー」に取りこまれていったとき、何が起こるのでしょうか。

多くの受験生は、日本の政治のあり方や選挙のしくみについて、インターネットの問題点などを、知識として学んだ状態でこの問題に出あうことでしょう。こうした知識を、いま現在起こっている「アテンション・エコノミー」という社会現象と結びつけているこの問題は、まさに世の中について考える「社会」という科目をあらわしていると考え、日能研はこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』に選ぶことにいたしました。