シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

浅野中学校

2026年05月掲載

浅野中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.大学受験同様、できなかったところを大事にしよう。

インタビュー3/3

数学科オリジナルのノートで基礎をつくる

数学の授業の特色を教えてください。

堤先生 最初から「こうやってやると楽だよ」と教えるのではなく、「まず、教科書に載っているやり方だけでやってみて」と言って、「実はこうやったほうが楽でしょう」というパターンで教えることが多いです。自分で気づいた知識やテクニックは身につきやすいからです。

基本的なことをしっかり伝えて、その後は生徒さん自身で気づいていくイメージですか。

堤先生 そうですね。

先生が期待されている生徒さん自身の気づきは、予習、復習の中でということになりますか。

堤先生 そうですね。自分で勉強する中で気づいて、自分のものにしてほしいというところはあります。

中には、期待どおりにいかない生徒さんもいると思いますが、そういう生徒さんにはどのような対応をしていますか。

堤先生 最初は補習、それから追試ですよね。

これはオリジナルの教材ですか。

堤先生 そうです。今年のものは全部揃えきれていないのですが、この教材はオリジナルのノートになります。教えないとノートがとれないと言いますか。黒板の文字を写すだけの子が多いので、書き込みができるノートを作りました。教科書をまとめたものになりますが、要所要所に空欄を作って、授業のときに埋めていくという形で使っています。

6年間、使用するのですか。

堤先生 高三は自分でノートをとらせているので、5年間です。1年間で2冊、3冊になる学年もあります。

中1から高二は、普通のノートは使わないのですか。

堤先生 このノートだけです。

いつ頃からその形式になったのですか。

堤先生 10年ぐらい前になります。いっぺんにはノートを作れないので、みんなで手分けしながら、例えば「中1の代数のノートと幾何のノートをとりあえず作るか」というように徐々に進めて、中1から高二までの授業ノートが揃ったところです。

浅野中学校 数学科オリジナルの授業ノート

浅野中学校 数学科オリジナルの授業ノート

計画立てて勉強することが苦手な生徒が増えている

使い始めてから、どんな効果がありますか。

堤先生 「ありがたい」とは言ってくれています。それまではプリントを作って、その都度、配布していたのですが、なくす生徒がいて、なくすと生徒の頭が白紙になるんですよ。それはなくなりました。

プリントの管理が苦手な子はいますよね。

堤先生 数学ができる子はプリントに穴を開けてルーズリーフにまとめたり、ノートに貼ったりと自分で整理できるのですが、そういうことをしない子は、試験前になると「先生、何番のプリントをなくしました」と言ってくるんですね。そういうこともあって、ノートを作ったんです。

中身は、随時、何かしらの形で更新されているのでしょうか。

堤先生 毎年、次の担当の先生に引き継いでいく中で、これを入れておいたほうがいいんじゃないかとか、これはいらないから削ろうとかということをしてきました。だいぶ固まってきたので、今は課程が変わらない限り、大きく改訂することはないと思います。

高二の数学演習でも、かなり大学入試に近い内容を扱うのですか。

堤先生 そうですね。文科系の生徒は高一で高校の数学を習い終えてしまうので、高二から数学は入試対策が前提の授業になります。先ほどの高三の「大学入学特講」は高三の理系文系共通で使います。数Ⅲの部分は理系しか使いません。高三に関してはノートは自分で用意しますので、高二までの書き込み式のノートしか使えないようでは困ります。

日々、生徒さんと接していて感じる、数学に関連する課題などがあれば教えてください。

堤先生 長期的な目標に向けて、計画を立てて、少しずつやっていくということが苦手な生徒が多くなりましたね。問題集をプリントにして、次の授業までにやってくるよう伝えているのですが、一昔前は「中間試験までに何十ページやってきて」という方式だったんです。こちらは試験勉強のために出しているのですが、中には試験の直前まで溜め込んで、最悪の場合、答えを写して提出するという、作業になってしまっている生徒がいて、これは良くないということで、最近はコツコツと課題を与えるようにしています。頭では、「1ヶ月で30ページか。今日はここまでやっておかないときついな。」と、わかっているのかもしれませんが、なかなか行動に移せない子が多くなっているような気がします。試験の問題を解かせれば優秀かもしれませんが、生活面の成長も大切ですね。

浅野中学校 図書館(清話書林)

浅野中学校 図書館(清話書林)

今できることは今やる力を養おう

数学科の先生として、どんな力をつけて大学や社会に出てほしいですか。

堤先生 与えられたものを、与えられたままにやればいいということではないんですよね。宿題の話もそうですが、仕上げなければいけない日が決まっているなら、今日はどこまでやっておこうと考えて、今できることは今やるという力をつけてほしいですよね。明日でよいや。来月でよいやと先延ばしにする子は通用しないかなと思います。聞くところによると男子は後回しにするそうなんですね。これは私だけがやっていることかもしれませんが、今、高二を受け持っていて、彼らに「長期休みの宿題を出した子と出さなかった子の評価に大きく差をつけた」と言っているんです。きちんと計画できる、実行できる子になってほしいからです。石井先生はこの間、中学生を送り出したばかりだと思うんですけど、林間学校のときに、荷物を親に詰めてもらった子はいなかったですか。

石井先生 一度出した荷物を、バッグの中に自分で詰められない子はたくさんいました。そういう意味での生活レベルは下がっているというか。やってもらっているから、一度出すと、バッグに収まり切らないということが生じます。受験自体、保護者の方のサポートがなければ難しいということは重々承知しているのですが、生活面まで波及している感じはしますね。もちろん全員ではありません。

さらに言うと、身の回りのことを自分でできる子のほうが学力も持っていると感じます。字がきれいであるとか、ロッカーが整理整頓されているとか、机がきれいだとか。そういうことと学力との相関はあると感じています。昔より親と子どもの距離感は近くなっていますし、そういう時代になっているのかなとも思います。手取り足取りというのが主流になってきている気がしますね。それが生きる力なら、もっと頑張れって思います。それをまた浅野の中で育てていけたらいいなとは思っています。生徒には「人の目を気にせず自分のやりたいことをやってほしい」とよく言っています。

入試広報部部長/石井 祐人先生

入試広報部部長/石井 祐人先生

子育ては手取り足取りではなく、見守ることも必要

受験生に向けて、先生方からメッセージをいただけますか。

堤先生 模擬試験を受けた高校生にも同じこと言っているのですが、できなかったところを大事にしてほしいですね。過去問を解いたときに、7割あたりが合格ラインで、8割できたから受かるなみたいなところで終えている人が多いと思いますが、解けた解けないで終わってしまうのはもったいないです。浅野の算数の問題の特徴は、設問だと思っています。ですから、なぜ、この設問がついていたかを振り返って考えてほしいのです。設問の意味を考えるということを、大事にしてもらいたいと思っています。

石井先生 浅野には優秀な子が入ってきます。その反面、先ほどお話した生活面には、まだまだ未熟な面が見られます。もちろん完璧な中学1年生が入ってくることを期待しているわけではないのですが、今後、1人の男子として生きていくために、生活していく下地みたいなものを身につけていってほしいと思っています。そのためには、我々も、保護者の方も、全部が全部、手取り足取りではなく、見守ることも必要だと思います。

校長も合格した子に、「身の回りの片付けをしなさい」と言います。それが日々できる子は学力だけでなく、人としても伸びると思います。そして、人に信頼を置いてもらえます。身の回りの整理を自分で行うところは大事にしてほしいところです。

浅野中学校 浅野總一郎翁銅像

浅野中学校 浅野總一郎翁銅像

インタビュー3/3

浅野中学校
浅野中学校1920(大正9)年、事業家・浅野總一郎によって創立。当初はアメリカのゲイリー・システムという勤労主義を導入し、学内に設けられた工場による科学技術教育と実用的な語学教育を特色とした。戦後間もなく中高一貫体制を確立し、1997(平成9)年に高校からの募集を停止。難関大学合格者が多い進学校として知られているだけでなく、「人間教育のしっかりした男子校」としても高い評価を受けている。「九転十起・愛と和」を校訓とし、自主独立の精神、義務と責任の自覚、高い品位と豊かな情操を具えた、心身ともに健康で、創造的な能力をもつ逞しい人間の育成に努めることを教育方針とする。校章は、浅野の頭文字で「一番・優秀」の象徴である「A」と「勝利の冠」である「月桂樹」から形作られており「若者の前途を祝福する」意味が込められている。
横浜港を見下ろす高台にある約6万平方メートルの広大な敷地の約半分を「銅像山」と呼ばれる自然林が占めている。Wi-Fi環境が整い、中学入学後に購入する個人端末で授業や行事、部活動を展開している。2014(平成26)年には新図書館(清話書林)、新体育館(打越アリーナ)が完成、2016(平成28)年にはグラウンドを全面人工芝とし、施設面が充実している。
中高6年間一貫カリキュラムを通して、大学受験に対応する学力を養成することが目標。授業を基本とした指導が徹底している。中学の英語では週6時間の授業に加えて、毎週ネイティブスピーカーによるオーラルコミュニケーションの授業もある。数学では独自の教材やプリントが使われていて、中身の濃い授業が展開されている。高校2年から文系・理系のクラスに、高校3年では志望校別のクラスに分けてそれぞれの目標に向けた授業を行う。進路選択は本人の希望によるが、理系を選択する生徒の方が多くなる傾向がある。全体的にハイレベルな授業が展開されているが、高度な授業展開の一方で、面倒見のよいことも大きな特徴。授業をしっかり理解させるために、宿題・小テスト・補習・追試・夏期講習などを行い、授業担当者が細かく目を配っている。一歩ずつゆっくりと、しかし、確実に成長させるオーソドックスな指導方針が浅野イズム。
「大切なものをみつけよう」ーこれは学校から受験生へのメッセージ。生徒にとって学校は、一日の内の多くの時間を過ごす場所。勉学に励むことはもちろん、部活動や学校行事にも積極的に参加して、その中で楽しいこと、嬉しいこと、悔しいことや失敗をすることも含めて多くのことを経験してもらいたいと考えている。学校でのそのような経験が、学ぶことの意味、みんなで協力することの大切さと素晴らしさ、生涯、続いていくような友人関係、そして、決して諦めない強い心を育んでいくことになる。浅野中学校、高等学校という場を思う存分活用して、人生において大切なものをたくさん見つけ、成長してほしいとの願いが込められている。
部活動と学習を両立させる伝統があり、運動部の引退は高校3年5~6月の総合体育大会、野球部は甲子園予選までやり通す。中学ではほぼすべての生徒が部活動に参加している。ボクシング、化学、生物、囲碁、将棋、ディベート、演劇が全国レベル。柔道、ハンドボールやサッカーも活躍している。また、5月の体育祭と9月の文化祭を「打越祭」として生徒実行委員が主体となって運営する。これをはじめ、学校行事も盛んで生徒一人ひとりが充実した学園生活を送っている。
「銅像山」は、傾斜がかなりきつく、クロスカントリーコースとして運動部の走り込みに使われるだけでなく、中学生たちの絶好の遊び場所となっている。また、各学年のフロアに職員室を配置してオープンにすることで、生徒と学年担当の先生が日常的に対話を行っている。こうしたメンタルケアにも力を入れている。