シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

浅野中学校

2026年05月掲載

浅野中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.いろいろなことに対して、どうしてなんだろうと思えることが大事

インタビュー1/3

多少合否の差がつく問題になった

まずはこの問題の出題意図からお話いただけますか。

堤先生 マス目で最短経路を作図する問題は珍しいのかなと思っていました。正答率はお答えできないのですが、我々の想定よりは少し悪かったです。合否の差が大きかった問題から順に並べていくと、大体真ん中ぐらいに来る問題なんですね。入試問題としてはよかったのではないかと感じています。

どんな解答がありましたか。

堤先生 誤答として1番多かったのは、交差点の角まで来て、直角、直角と渡るパターンです。あとは地点Aから真横に地点Bの上まで進み、真下に地点Bに進む解答です。それは最短経路ではありません。要するに、その受験生の方はマス目を斜めに行ってはいけないと思ったんでしょうね。垂直に渡らなければいけないのは車道だけ。それを誤解されたくないから、例を入れたんですけどね。

白紙はありましたか。

堤先生 書こうと思えば書けるので、ほとんどいなかったと思います。

数学科/堤 敬哉先生

数学科/堤 敬哉先生

大問1の(5)は計算をしない問題になりやすい

毎年、この位置(大問1の最後の問題)には論理に特化した問題を載せていらっしゃいますが、今年はその論理を図形で試すということだったのでしょうか。

堤先生 まさにそうなんです。理由を書かせる問題を、何年か前に出題しました。「円周率が3より大きいことを証明しなさい」という問題でしたが、採点に時間がかかってしまったんですね。4教科の中で採点にかかる時間を比べると、理科と算数は比較的早いほうなのですが、その問題のときは珍しく時間がかかってしまい、遅いほうになったので、記述問題を出すにしても、なるべく解答のブレがないようにしたいという思いがあります。

記述ではなく作図だったら、書いた線そのものが自分の論理を示したものになるわけですからね。毎年、この大問1の(5)は、どんな問題が出るのか、楽しみにしているのですが、意図して創意工夫を凝らした問題を出しているのですか。

堤先生 そういう設定をしているわけではないのですが、ここ数年の流れで、誰かしらがいわゆる計算をしない算数の問題。例えば、理由を書かせたり、作図をさせたりする問題を作ってきます。大問1の(5)はそういう問題を1題で出せるので、なんとなく毎年、そういう問題になりやすい傾向があります。

浅野中学校 グラウンド

浅野中学校 グラウンド

当たり前のことができるところから解こう

入試問題全体の構成に関して、数学科で共有していることがあれば教えてください。

堤先生 大問の数はルールとして決めているわけではないのですが、大問1が小問集合で、それ以降は大問が4つ、我々としては難易度が低い問題から並べているつもりです。もちろん、我々が簡単に解けるだろうと思って作った問題が、意外とそうでもなかったり、その逆もあったりするので、学校説明会のブースでご相談を受けたときには、今、お話したことを、そのままお伝えしています。人によっても、受け取り方が違うので、「当たり前のことができるところから解いてください」ということですね。また、(1)から誘導する形にするなど、設問は親切に作っているつもりです。

小問のつなげ方がきれいで、無駄がないという印象です。最後の問題は難しいですが、(1)(2)から出題者がどんなことを問うているのかという目で見て、きちんと考えれば、難問でも解けるように作られているのかなと思っています。

堤先生 1番問いたいのは、当然のことですがそれぞれの大問の最後の設問なんですよね。ただ、残り時間が少なくなってきた場合は大問の最後の設問は解けなくても、その前の設問で確実に正答することが合格に結びつくことがあるかもしれません。

浅野中学校 鉄道研究部(部室)

浅野中学校 鉄道研究部(部室)

入試では粘り強さを問いたい

問題を作る上で、数学科で共有されていることがあれば教えてください。

堤先生 難しい問題を、きれいに解かなくてもよいんです。泥臭くても、格好悪くても答えを出せる、その粘り強さを問いたいと思っています。

先生がおっしゃっていた泥臭さは、校訓の「九転十起」につながるのかなと思ったのですが。

堤先生 大げさかもしれませんが、そうなんですよ。この問題も、中にはパッと見てわかった子もいると思うのですが、例えば、先ほどお話したように、直角、直角で進んできたときに、これって本当に1番短いのかなって思ってほしいんですよね。なぜ、例が出ているのかとか、なぜ、斜めに突っ切っているのかとか。我々には、答案でしかわからないので、この答えを1発で思いついてほしいという期待はしていないんです。こうやったほうが短くなりそうだなと気づいて、道路のところだけ潰しておこうという……、そういう試行錯誤ができる子であってほしいと思っています。

泥臭く、あきらめずに考えられる子に来てほしいところもあるということですね。

堤先生 私も1回見てびっくりしたことがあるのですが、入試での順位と、浅野に入ってからの順位は相関がないんですよね。「浅野が第1志望でした」と思ってくれている子のほうが、入ってきてから伸びます。私が以前、担任した学年では、特待生を取った子が繰り上がり合格だったんですよ。

インタビュー1/3

浅野中学校
浅野中学校1920(大正9)年、事業家・浅野總一郎によって創立。当初はアメリカのゲイリー・システムという勤労主義を導入し、学内に設けられた工場による科学技術教育と実用的な語学教育を特色とした。戦後間もなく中高一貫体制を確立し、1997(平成9)年に高校からの募集を停止。難関大学合格者が多い進学校として知られているだけでなく、「人間教育のしっかりした男子校」としても高い評価を受けている。「九転十起・愛と和」を校訓とし、自主独立の精神、義務と責任の自覚、高い品位と豊かな情操を具えた、心身ともに健康で、創造的な能力をもつ逞しい人間の育成に努めることを教育方針とする。校章は、浅野の頭文字で「一番・優秀」の象徴である「A」と「勝利の冠」である「月桂樹」から形作られており「若者の前途を祝福する」意味が込められている。
横浜港を見下ろす高台にある約6万平方メートルの広大な敷地の約半分を「銅像山」と呼ばれる自然林が占めている。Wi-Fi環境が整い、中学入学後に購入する個人端末で授業や行事、部活動を展開している。2014(平成26)年には新図書館(清話書林)、新体育館(打越アリーナ)が完成、2016(平成28)年にはグラウンドを全面人工芝とし、施設面が充実している。
中高6年間一貫カリキュラムを通して、大学受験に対応する学力を養成することが目標。授業を基本とした指導が徹底している。中学の英語では週6時間の授業に加えて、毎週ネイティブスピーカーによるオーラルコミュニケーションの授業もある。数学では独自の教材やプリントが使われていて、中身の濃い授業が展開されている。高校2年から文系・理系のクラスに、高校3年では志望校別のクラスに分けてそれぞれの目標に向けた授業を行う。進路選択は本人の希望によるが、理系を選択する生徒の方が多くなる傾向がある。全体的にハイレベルな授業が展開されているが、高度な授業展開の一方で、面倒見のよいことも大きな特徴。授業をしっかり理解させるために、宿題・小テスト・補習・追試・夏期講習などを行い、授業担当者が細かく目を配っている。一歩ずつゆっくりと、しかし、確実に成長させるオーソドックスな指導方針が浅野イズム。
「大切なものをみつけよう」ーこれは学校から受験生へのメッセージ。生徒にとって学校は、一日の内の多くの時間を過ごす場所。勉学に励むことはもちろん、部活動や学校行事にも積極的に参加して、その中で楽しいこと、嬉しいこと、悔しいことや失敗をすることも含めて多くのことを経験してもらいたいと考えている。学校でのそのような経験が、学ぶことの意味、みんなで協力することの大切さと素晴らしさ、生涯、続いていくような友人関係、そして、決して諦めない強い心を育んでいくことになる。浅野中学校、高等学校という場を思う存分活用して、人生において大切なものをたくさん見つけ、成長してほしいとの願いが込められている。
部活動と学習を両立させる伝統があり、運動部の引退は高校3年5~6月の総合体育大会、野球部は甲子園予選までやり通す。中学ではほぼすべての生徒が部活動に参加している。ボクシング、化学、生物、囲碁、将棋、ディベート、演劇が全国レベル。柔道、ハンドボールやサッカーも活躍している。また、5月の体育祭と9月の文化祭を「打越祭」として生徒実行委員が主体となって運営する。これをはじめ、学校行事も盛んで生徒一人ひとりが充実した学園生活を送っている。
「銅像山」は、傾斜がかなりきつく、クロスカントリーコースとして運動部の走り込みに使われるだけでなく、中学生たちの絶好の遊び場所となっている。また、各学年のフロアに職員室を配置してオープンにすることで、生徒と学年担当の先生が日常的に対話を行っている。こうしたメンタルケアにも力を入れている。